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トクベツなご褒美

アミィに飛ばされた俺たちはひとつの洞窟の前に落ちてきた。

「痛……くはなかったな」

アミィはそこらへんは気を使っているらしい。

「もしかしてこれがご褒美の洞窟でしょうか!?」

フィーナが少し興奮気味に洞窟に近寄る。

「おいおい、あまり近づくなよ……」

「もういいんじゃないですか? アミィさんもあんなふうに言ってましたし」

「ガレフを作ってるのがあいつかもしれないのによくそんな……」

「だからこそ、です! ルールを設けている以上、それを破ることはないんじゃないですか?」

「それは……そうだ」

どうやらビビってるのは俺だけらしいな。

「よし! いいよ、入ろう! 入ってやろうぜ!」

半ばやけのようにも感じてきたが、怖くなんてない。

何が待つかはわからないが洞窟の中へと足を踏み入れた。



封印の音がして入口が封鎖される。

道はまっすぐに伸び、両脇に松明が並ぶ。

「ダンジョン……だよな?」

「ご褒美は……」

いや、まだわからない。この先に部屋があってそのままご褒美かもしれないだろ!

「行くぞフィーナ!」

「あ、はい!」

松明の間を通り抜けて洞窟の奥を目指す。



……何組の松明を通り抜けただろう。

洞窟はまだ奥へと続き、暗い道の坂にはぼんわりと松明の灯りが浮かんでいた。

「ちょ……ちょっと、長すぎね?」

「なにかヒミツがあるのではないでしょうか……」

すぐにでもご褒美のある部屋にたどり着けると思っていた俺はペースも考えずに走っていた。当然ながら息が上がってしまう。

「ふうっ……ふう……」

俺の吐息が松明の火に触れた瞬間、その松明の灯りが不自然に消えた。

「えっ! なになに!」

「まさかこれは……何かのギミックなのではないでしょうか」

「ここに来てめんどくさいものを……」

アミィがケラケラと笑っている様が目に見えるようだった。

「どうすれば進めるんだ……」

おそらく無闇矢鱈に火を消したところでなにも起こりはしないだろう。

「あ、見てくださいこれ!」

フィーナが示したのは先程消したはずの松明だったが……火がついている。

「え、なんで?」

「もう一回息を吹きかけたらつきました!」

じゃあこれつけたり消したりして何らかの法則に当てはめなきゃならないってことか。

「ん〜……でもヒントなんてなぁ……」

そう思い松明の脚許をみていると、そのタイルが場所ごとに違うことに気がついた。

「……なんか、ここのタイルの色濃くない?」

「あ、確かにそうですね!」

松明の下には床の色とは異なる濃い色と薄い色の二種類のタイルが敷かれている。

「火をつけるのと消すのを示唆しているんじゃないか?」

「そ……それです! 天才ですか!」

「よせやい。それじゃあいくぞ!」

タイルの色に従って火をつけたり消したりして進んでいった。

すると、奥の方に扉が見えてきた!

「おー!! ついに!」

俺たちはその扉を開く。

そこは、ひとつの箱の置かれた部屋だった。

「殺風景だな……」

とりあえずその箱に手をかけて開けてみる。

鍵はかかっておらず、簡単にそれは開いた。

「わくわく……」

後ろでソワソワしてるフィーナとは逆に、俺はその中身を見て固まった。

「ん? どうかしたんですか?」

フィーナもそれを覗き込んで固まった。

「……な、なんですか、これ?」

そこにあったのは金銀財宝でも極上のホネでもなく、一枚のカードだった。

「じゃんじゃじゃ〜ん! おっめでと〜う! キミはいま! タセフィ区踏破へのだいいっぽをふみだした!」

背後にアミィが現れて拍手する。

「なんだよいきなり……」

「なんだよはないでしょ〜? ボクが来るのわかってたクセに〜」

まぁそれはそうなんだけど。

「で? これは一体なんだよ」

「訊く前に自分で確認したら〜?」

「く……」

俺は渋々そのカードを手に取り確認する。

「……スカイライ区入場許可証……?」

「……でもぉ、これはまだつかえないよ」

「はァ?」

「じゃあノーフ出して」

「……はい」

抵抗しても仕方が無いので俺はノーフを出す。

「これを……はい」

アミィがカードをノーフにかざすと軽快な音が鳴り響く。

「これでもうこのカードは用済みさ☆」

そう言うとアミィはカードをぽいと投げ捨てる。

そのカードは地面につく前に消えた。

「え、今なにした?」

「ノーフのクエスト画面見て」

「クエスト画面……?」

「え?」

聞き覚えのない言葉だ……。

「ちょっと待ってよ! キミもしかしてクエストやってないの?」

「知らないよそんなものは」

「はぁ〜。とりあえず色々触ってみようとか思わないのかなぁ……そういうのほんと信じられない」

勝手に呆れるなよ。

「わざわざおっきいびっくりマークつけてお知らせしてあるでしょ?」

確かにそれぞれの機能のアイコンにはびっくりマークみたいなものがついてるものもあったが……別にいいかと思ってた。

「もっとこまめに見てよ!」

「じゃあちゃんと説明してくれよな」

「開き直ってもだめ! じゃあ今から説明したげるから!」

そう言うとアミィはどこからかメガネを取り出してすちゃりと装着する。

「え〜、まずこのクエストアイコンでは様々な依頼やら実績やらを用意してありますので〜、それをこなすとボクから直接! 報酬が送られます!」

「あ、待ってそれ。多分ルルーさん言ってたかも」

「じゃあキミが悪いね!!」

「く……」

「……これは確かにご主人様が悪いですよ」

こそりとフィーナが言ってくるが……わかってるよ。

「キミ、達成されてるのに報酬受け取ってないから踏破がうまくできないんじゃないかな」

「そもそもその報酬ってなに?」

「二ーディだったり、キミが強くなるためのものだったり、色々さ」

「ちゃんと確認しておくべきだったか……」

「これからは気をつけてね」

やれやれと言わんばかりに首を振りながらアミィがくすりと笑う。

しょうがないだろいきなりだったんだから……。

「で、クエスト画面に〜、表示されたんだよ! さっきのカードのやつが!」

アミィの言う通り、そのクエストのひとつに、スカイライ区入場許可証の完成が追加されている。

「ここ、星があるでしょ?」

その欄には星がふたつ表示されているがどれも黒色だ。

「この星はこの後ボスダンジョンを踏破すると埋まるから、あと二回踏破すればキミはスカイライ区に行けるんだよ!」

「あ、わかんないわかんない……そのスカイライ区ってのがもうわかんないもん。なに、ファミレス?」

「こらー! それは禁句指定だぞ!」

なにがだよ……。

「ま、簡単に言えばタセフィ区より下の層だよね。つまり、眠る秘宝もさらに良いものに……?」

「俺の求めるものもそこにあるのか!?」

「さ〜てね。ま、頑張って下層を目指してね〜!」

そう言うとアミィはまた消えてしまった。

「……あと二回踏破かぁ」

ちょっと自信ないけど……それでより秘宝に近づけるのなら……。

「オレたちならいけますよ! やってやりましょうよ!」

フィーナが腕を叩きながら鼓舞する。

「なんかご褒美って言う割には表紙抜けたものだったが……むしろその先こそご褒美だよな」

「ご主人様の言ってたナビ? の方も協力してくれるかもしれませんし、きっとなんとかなりますよ!」

そうか。それもあった。

報酬とユーリの協力、これまでになかった要素を合わせればきっともっと踏破がうまくいくはず!

「よし! 早速戻って確認してみようぜ!」

俺たちは転移魔法を使ってギルドへ戻った。

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