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不信

通路を進んでいくと、再びネストが見えてきた。

「確かあと四つあるんだよな?」

『そうだよ!多分四つめはボスのいるネストだと思うよ。なんか広いし』

「ボス……やはりいるのか」

「高難易度指定はボスがいることが多いね」

「ボスを倒すために来たんですから! むしろアタリですよ!」

それはそうだが……いけるかなぁ。

「オレたちならやれますよ!」

俺の不安を見透かしたようにフィーナが力強く言う。

「頼りにしてるぜフィーナ」

「もちろんです!」

そうこうしているうちにネストはすぐそこだ。

「今回はなんだろな……」

ネストには泥の上に大きな円形の葉が複数浮かんでいる。

「またこういう……」

今回なんかパッと見わかんないの多くね?

「湿原だからねぇ」

「湿原だと多いの?」

「詐欺師のネグラみたいな」

「んんん〜なんかその比喩はやめた方がいい」

「どうして?」

「なんか知ってる感じがしたから……」

「こっちにもあるのかな」

「え?」

「んーん、なんでもない」

マイマイは話を打ち切ってしまった。

「とにかく、湿原には擬態がうまい生物が多いみたい」

「くそー、丁度そのスペシャリストと別れたばっかなんだよなぁ……」

『そんな時のために私がいるよ!』

「頼むよユーリ。ばんばん言ってくれていいから」

『はいサーチ結果! この葉っぱは〜……』

……数秒焦らす必要もないし。

『デイレンです』

「……はい」

それだけ?

『……』

それだけらしいです。

「ねぇー!デイレンってなんだよ!」

『あぁー! はい! 植物ですよ!』

「危険なの? 危険じゃないの?」

『危険は無い! きっと! たぶん!』

だ……大丈夫かこいつ……。

「……あのね、実はユーリィ、まだ新米さんなの」

マイマイが少し口ごもりながら言い出した。

「あっ、そうなの?」

『ちょっとマイマイちゃん……!』

「言っといた方がいいよ。マークさん、流石に信用できなくなってきてるから」

『う……ごめんなさい』

「そうかぁ……そういうことなら仕方ないよ。うん。俺もなんか悪かったな」

『お客さんにそんな気を遣わせたらだめなんだって……』

「助けてもらってるんだ。お互い様だろ」

『……ありがとね』

「大丈夫。マイマイもしっかりサポートするから。ふたりとも、ね」

「マイマイさんも頼もしいなぁ」

「にへへ」

「オ、オオ、オレだって!」

「そこは張り合わなくていいから……」

とにかくこのネストに危険はないらしい。

思わせぶりなデイレンがあったのみだ。

「よーし、じゃあ次いこ次!」

何も無いならそれ以上何か起こらないうちに進んでしまおう。


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