「……それが、キミの答えかい?」
改めてアミィが俺に問う。
「あぁ。俺はニンゲンに戻るぞ、アミィ」
「それじゃあ……いくよ」
アミィは手のひらを俺の胸に押し当てた。
その周辺に暖かさが満ち、柔らかい光が漏れ出す。
「じっとしててね?」
アミィが優しく囁くと、その光と熱は強さを増していく。眩く、熱い程に。
「あ、熱っ……!」
「我慢して。すぐに終わるからサ……」
光で見えないがアミィがあてている手は徐々に俺の方へ入っている気がする……。
「なんか、腕くらいまで入っちゃってない!?」
「……」
淡々と何かを探し当てようとしているような、そんな集中した表情のまま腕を動かしている。
確実に何かをされているのに眩さと熱以外に何も感じないのが不思議だった。
熱と光は尚も勢いを増し続け……そして部屋の中は目も開けられないほどの光が満ち、風呂にでも入っているかのような熱さに身が晒される。ぼんやりと皮膚がふやけていく程の心地良さに包まれ、まるで浮遊しているかのようだ。
……いや、これは実際に浮遊している。
身体の重さから解き放たれて、魂だけになっている。
この感覚には覚えがある……。あの天界での記憶がぼんやりと蘇ってきた。
しかしそれも束の間、重たい鎧を纏ったような怠さを感じ、それと同時に身体の感覚が戻ってきた。
急な感覚の落差でその場にどしゃりと崩れ落ちてしまう。
「大丈夫?」
アミィが差し出した手を取る。
「今のキミは、幻なんかじゃない。本当の肉体を手にしたんだよ」
その言葉が事実なのであることは、なぜか不思議な程よくわかった。魂がぴったりと当てはまるというか……。
「戻った……戻ったんだ!!」
身体を見回してみると勝手に涙が出てくる。
「じゃあ、これで本当にキミは村でゆっくりできるってわけだ」
「ありがとう……アミィ」
「お礼を言われることでもないさ。キミから資格を剥奪したみたいなもんだし」
「この世界が俺の故郷だ。それ以外はいらない」
「はは、それはよかった」
「あっ、あの……アミィさん。ご主人様はまたガレフに来られるんですか?」
「あぁ。アミィテレポートは使えるよ。だからキミもここで暮らすといいね」
心配そうなフィーナにアミィはにこりと笑いかける。
「また来なさいよね。フィーナと一緒に待ってるから」
「……子ども、見せたげるから」
……え、できんの?
「じゃあどうする? なんならボクが村に送ってあげるけど」
「……いや、いいや。フィーナと一緒に帰るよ」
「そう? じゃまた困ったことがあったら呼んでね〜」
大きなことをしたくせにあっさりとアミィは消えた。
「……じゃあ、行くか」
「……はい」
もうお互いにわかっている。だから俺もアミィの送迎を断った。
フィーナとの最後の旅だ。
「じゃあ、行ってきますね」
姉妹と別れて俺たちはギルドを後にした。