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おべんきょうするところ

やくにたってる!?

目が覚めて居間に行くと、ララはもう朝食を用意してくれていた。

「おはよう!」

「おう、おはよう。えらいなお前は」

「えへへぇ」

相変わらず早起きのお利口さんだ。

転生の仕事も覚えちゃえばしっかりこなせるんだろうなぁ。

そうなると俺はお払い箱になって……いかん。朝から少し悲しいキブンになってきてしまう。

……ん? でももともとはそれは目標だったわけだよな? 調子狂うぜ。

「どうかした?」

「いやなんも」

今は目の前のことだよな。支度をしたらメリアさんのところへ行こう。



「あら、はやいわね」

局長室を訪れると、メリアさんが出迎えてくれた。

「今日は終わったらそのまま帰っていいから早く来たのは正解だったかもしれないわね」

「えっ、きょうはおわったらかえっていいの!?」

「えぇ、しっかり帰れるかもね」

なんか嫌な予感がするな……。

「午前中もいいわよ!」

絶対無理だろうなこれ……。

「遠慮することないわ。昨日大変だった分休みなさい……」

言葉通りに受け取ったララは嬉しそうにしているがメリアさんの顔を見るに明らかにそれを見て楽しんでいるような気がする……。

「じゃあただ今より評価レポートの作成を開始します!」

「評価レポート?」

「まぁそう構えることはないわよ。たかしくんの転生について、与えたスキルの詳細から彼の過ごした異世界での冒険にどのような影響を与えたのか、彼がジュダストロに貢献した内容、周囲の人間たちとの関係構成図、成長の推移と訪れたダンジョンと出会った魔法生物たちのリスト……」

「ちょちょちょちょ……ちょっと待ってください。そんな盛りだくさん……ララを見てください」

「……ほぁ?」

「ご覧の通り、アホになっております」

「それはまぁもとからだものねぇ……」

「あぁ、そうでした」

「なに!」

「なんでもないよ」

しかしこの内容……ララにはできそうにない。となるとまさか……。

「がんばっておにいちゃん」

「お前はララ!?」

「あたしララ。応援するよ」

「メ、メリアさんっ! こんなことが許されていいのですか!?」

「まぁ仕方ないわよね。今回はララに示すと思ってやってみるといいわ」

「そ、そんなあぁ〜!」

拷問を受けるのは俺の方でしたァーッ!



と、少し嫌々な気持ちが強い状態で始めたレポートだったわけだが……これがなかなか捗っている。

全く興味のない題材を扱うのとは進捗が大きく異なるな。

何より主観に近い状態で体感したことだ。思い出すことで状況を振り返りやすいし、ララもそれに関して意外にも憶えていることを意見として提案してくれる。

「だからぁ、あのときマークくんがのーまらいぜーしょん? をつかったのがぁ……」

「なるほど……ララ。助かるぞ。この調子なら今日中にしっかり終わらせられるかもしれない」

「ほんと!? あたし、やくにたってる!?」

「めちゃくちゃ立ってる! お前の成長が末恐ろしいぜ! 天才ララちゃん! 頼りになる!」

「にぇへへへへへ」

賞賛の言葉をスポンジのように吸い込んでいき、口許を緩ませた。

「さて、じゃあ次の項目は……」

「あーそれねそれね! あたしがしってる!」

その後もララは積極的にレポートの作成に参加してくれた。

メリアさんもその様子を意外そうな顔をして眺めていた。



「よっしゃあ! かなり早く終わったんじゃないか!?」

昼食を挟むことにはなったが、なんとか夕方になる前に終わらせることが出来た!

「あらあらあら、本当にやりきってしまうとは……少し予想外だったわね」

「あたしがんばったもん!」

「そうね。あなたがここまで理解して参加できるとは思っていなかったから……期待した以上だったわね」

「ほんとです! ララの活躍が大きくレポートの進捗に関わったんです!」

「そんなに?」

「ああ! よくやったぞララ!」

「じゃあこれは提出ということで、読ませてもらうわね。はい、おつかれさま。今日はもう帰って大丈夫よ」

「ありがとうございます!」

「それと……明日からはもうここに来ることもないから、エトンの通知があるまでは自主学習を続けなさい」

「はい!」

帰ろうとしてメリアさんに背を向ける。

「……あぁ、そうだ。もし、あなたが望むというのなら、学習に関する支援を行ってもいいわよ?」

「え?」

メリアさんの言葉を受けて帰ろうとした身を翻す。

「学習支援って……具体的にどんなものなんですか?」

「単純な話よ。ねぇシエルくん。学校に通わない?」

「学校……?」

図書館のあった第5天使アカデミーのことだろうか?

「え、いいんですか!?」

「もちろん。心配することはないわよ。あなたの身体は年齢的には丁度学校に通う程度だし」

「それもそうなんですが……ララはどうしますか?」

「一緒に通ったらどうかしら?」

「いやいや! それこそ年齢的におかしくないですか!?」

「そこは融通を効かせてあげる。ララも学校行きたくない?」

「いきたあい!」

「大丈夫か……?」

「おべんきょうできるんでしょ!?」

「それはそうだけど……」

「向上心があるうちが学び時よ。あなたも今はその意思が高まっているんじゃないかしら?」

メリアさんには何でも見透かされているような気がするな……。

「わかりました! お願いしてもいいですか?」

「決まりね。じゃあ明日から通えるように手配しておくから」

「明日からですか!?」

「あら、早い方がいいでしょ?」

「そうですけど……そんなに早く用意できるんですか?」

「私をなめてもらっては困るわね。簡単なことよ」

「じゃあお願いします。何から何までありがとうございます」

「いいのよ。必ず今後の糧になるから」

まさか学校の手配までしてくれるなんて……緊張と興奮が入り交じってきた。

うまく馴染めるといいが……。

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