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せいふく、にあう?

早速翌日、荘厳な西洋風の校舎を望む大きく煌びやかな校門の前に、俺は立っていた。

「どう? せいふく、にあう?」

メリアさんに用意してもらった制服をふたり揃って着ているわけだが……流石にサイズがなかったのかララのものはかなりブカブカだ。袖なんて半分以上足りてないんじゃないか?

「お前それ気をつけろよ」

「かわいい?」

「まぁ……かわいいけど引っ掛けたら危ないだろ」

「かわいいんだ。えへへ」

「だからそっちじゃなくて……」

本題を伝えられずにララはもう学校の敷地へと入っていってしまった。

「まったく……」

それに続くしかない俺は、周囲に溢れる登校生徒の中にララを見失わないようにララを追いかけ校内へと歩いていった。



「はい、きいておりますよ」

とりあえず校長室にきた。もし話が通っていなかったら勝手に制服着てきた不審者になるからな。

「あ、俺、シエルです。よろしくお願いします!」

「あたしララ。よろしくおねがいしますっ!」

「女神様とそのお付き人様でしょう? この学園がおふたりのお仕事のお役に立てばよいのですが」

丁寧な話し方でにこにこと話をする。校長と言う割には威厳よりも好感を持ちやすい印象が強い。

「おっと、私が名乗っていませんでしたな。校長のバウリィです」

「バウリィせんせー!」

「そうですぞララ様」

「じゃあ俺たちはこれからここに通うことになるんですよね」

「そうです。しかしまぁ……そんなに身構えることはありませんよ。ここには時間の概念があまりないですから」

「あ、それ気になってました。別の世界のやつに次の日会ったらもう十何年経ってたみたいな……」

「ここは少し特殊な次元なんですよ。それ故にある歴史に転生者を送り込む、ということが可能になっているわけですな」

「歴史に転生者を送り込む?」

「おや、ご存知ないのですか?」

「いやその……大まかにしか……」

「それらも含めてここで学んでいくといいでしょう。ここではクラスに所属してもらうことになりますが、それもまた揺らぎの多いものです。今は学習サイクルの区切りでいえば中間より前のあたりですから、転入生として迎え入れてもらえばみな色々と教えてくれるでしょう」

「それは助かるな!」

「それでは早速風紀委員に案内させましょう」

風紀委員……? イヤな予感がするな……。

「転入生だときいていたからワクワクしていたのに……」

入口の方から、震えるような声が聞こえる。

「また会ったな貴様ァァァ!」

一足飛びで入口から俺の背後目掛けて跳躍して来たのは、あの凶暴女エリンだった。

そのまま俺の背中に強烈なパンチを繰り出そうとしたようだったが、見え見えなので前に出てかわした。

「あっぶな……おいエリン!」

「やめないか! 女神様のお付き人ですよ!」

「で、ですが校長!」

「俺お前になんかしたっけ?」

「初対面の印象が悪かったからお前のことは許さないことにしたんだ!」

そんな自信満々に言われても……。

「ていうかあの時もお前が勝手に不審者扱いしただけだよな?」

「あのあと先輩に怒られちゃったんだからっ!」

知るかよ……。

「ほう……では、今日も説教が必要なようだな」

入口の方から、怖い声が聞こえてくる。

「ひいっ!」

「エリン! この間も言ったはずだ!」

リアンが入ってきてエリンをつまみ上げる。

「先輩〜! 納得いかないんですよ私はぁ〜!」

「別に俺に関わらなきゃいいだろが!」

「じゃあ案内しないでもいいって言うんですか〜!?」

「あ、いいですよ別に嫌なら」

校長が口を挟む。

「あっ、え……」

「配慮が足りなくてすみませんね。まさかそんな因縁があるなんて知らなくて」

「こ、校長先生のせいではありません! エ〜リ〜ン〜!」

リアンがエリンに詰め寄ると、校長はそれを制する。

「ブリリアントさん。そうやって押さえつけてはいけません。どうしても相容れない者もいるのです。それがどんな理由であれ、尊重してやる意志を持たねば人を治める者にはなれませんよ」

「は……はい」

「エリンさん。戻っていいですよ」

校長は優しくエリンに語りかけた

「…………ごめんなさい」

エリンは結局校長室を出なかった。

「どうしたエリン? 彼の案内は私が引き受けるぞ」

「……シエル、さん。行きましょう」

エリンは俺の袖を引く。

「あ?」

「案内をすると言ってる!」

顔は見せないが、エリンは俺を引っ張り出す。

「エリンさん。無理は……」

「私が配慮を受けるべきではないですから!」

「そんなこと……」

「それに、いつまでもそれを続ける訳にもいきません。私が慣れていかなければ……」

なんで俺こんなゴキブリみたいな扱いされなきゃならんの……。

「ま、まぁお前がいいっていうなら頼むよ。よろしくな、エリン」

「……あぁ」

まだ冷たい感じだけどエリンは案内してくれるらしい。

「それでは良い学校生活を」

校長は笑って見送ってくれた。

学校生活かぁ……最初っからこんなに邪険にしてくるやつがいるわけだから少し不安になってしまうが……こいつだけだろうそんなやつは。

ララもいることだしなるべく波風は立てて欲しくないからな。

先行きを案じつつ、既に生徒たちのいなくなった廊下をエリンたちの先導に従い進んだ。

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