少年に連れられて訪れたのは、古臭くも暖かみのある民家だった。
確かになんとなくだがここのニオイには心の奥が反応しているような気がする。
私はやはりここにいたのかもしれない。
しかし、それならなぜ……?
「……まず、私の生い立ちを聞く前に、あなたのことを知りたいわ」
「ぼくはシンジ。改めてよろしくね」
「よろしくシンジ。それで……私のお母さんは?」
「……えぇっとね。きみのお母さんは、少し前に亡くなってしまったんだ」
「そう……」
「本当は、その前にきみを連れて帰りたかったんだけど……仕方ないことだよね」
「残念だけどそうね。私だって、今までずっと見捨てられたものだと思っていたから……」
「そうだよね。悲しいのはきみも同じだよね」
そう言ってシンジは私の背を撫でた。
「ねぇシンジ……私、ここにいてもいいの?」
「なんでさ?」
「だって、私、捨てられたんでしょう?」
「何言ってるんだよ! そんなわけないよ!」
「でも! じゃあなんで私はあんな場所にいたの!? 生まれたばかりであんな場所にいるなんて……」
「ニャコは、誰かに連れていかれてしまったんだよ……」
「え?」
「ニャコ以外にも三匹の兄弟が生まれたんだけど、その子たちは別の家に譲る予定ぁったんだ。それで、譲渡会の時に、みんなそれぞれ別の家族の許へ行ったんだけど、気づいた時にはニャコまでいなくなってた……手違いで誰かが連れて行っちゃったのかもしれなくて……でも譲渡会に来てくれた人達の誰もニャコのこと知らないって言って、それで……」
「よくわかったわ。つまり私はその譲渡会の時に別の家族に連れられて……そして捨てられてしまったのね」
「……多分、そうなんじゃないかと思う。正直にそんなこと言う人はいないから。だからそれからぼくは、ずっときみのことを探してたんだよ」
「……そう。ありがとう、シンジ。それとごめんなさい。心配させたわね……」
「きみがそんなこと言う必要はないんだよ。悪いのはきみを連れていったのに捨てたやつだ。許せないよ……」
「……でも、私はここにいるわ。だから、もういいじゃない」
「そう言ってくれるかい? ならいいんだけど……」
「うん。私、もうずっと独りで生きていくしかないと思っていたから」
「大丈夫だよ。ニャコ。この先はずっとぼくと一緒だから」
「うん! ありがとう、シンジ!」
ようやく訪れた安息。
孤独な日々が色づくかのように変貌した瞬間。
それはいつまでも続くと、そう思っていた。