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慢心の末路

薄暗い洞窟へ足を踏み入れた……はずだった。

不思議なことにその中には青空が広がっている。

風が吹き抜け、空には雲が流れている。

「ここがガレフ……」

話には聞いていたが実際に目にするとそれは実に奇妙なものだった。

これは魔素で作られたまやかしの世界……それがわかっていながら現実と見分けがつかない。

そして話に聞いていたとおり、その空間は部屋と通路のようになっており、見えない壁が存在している。

壁がある部分には基本的に茂みなどがありわかりやすくなっている。

部屋の部分はネストというらしく、通路の先にはおよそそのネスト、そしてまた通路と続いていく。

そしてそのどこかのネストにある出口に到達出来れば踏破、という形で迷宮をクリアすることができるという。

ただ、そのネストには様々な魔法生物や罠が溢れているのだとか……。

「用心するに越したことはないわね……」

見たところここは平原の迷宮。それぞれのバイオームに対応した魔法生物が生息しているらしいが、平原となると先程私が通ってきたような環境ということだろう。

幸いというか速く移動しすぎたせいで道中魔法生物には遭遇しなかったのだが……ここでは失踪したら壁にぶち当たってしまいそうなので同じ手は使えそうにない。

「地道に行くしかないか……」

気合いを入れて通路を進むことにした。



茂みに挟まれた通路部分を歩いていくと、その茂みが途切れる部分までたどり着いた。つまり、この先はネストということだ。

ネストには魔法生物や罠が溢れている……それが本当なら今目の前にあるネストには何かがいる……。

「……でも今の私だったらなんでも来いだわよね! おらぁ!」

そう言って私はネストに足を踏み入れる。

その瞬間、視界が上下逆さまになった。

「え……もごっ……!」

身体が動かせない。それどころか喋ることもできない。

私は太いツタに絡まれて吊り上げられてしまった。

「んっ! んー!」

まずい。魔法を使うには詠唱をするか身体の一部に意識を集中しなければならない。

そのどちらをも封じられていては、為す術がない!

さらにまずいことにそのツタは私の首にまで伸びてきた。

このままでは首まで絞められて私はジ・エンドだ。

やだもう……こんな入って間もないネストで死ぬの……?

浮かれていたにしてもこんなのあんまりだ。

まだスキルだってマシに使っていないのに……相手がツタじゃそんなの使うこともできないし……。

ゆっくりとツタは私の身体を締め上げる。

ミシミシと音をたてながら痺れるような痛みが満ちていく。

苦しい……あぁ、こんなとこで終わりか……。

意識が朦朧とし始めた。

酸素の供給が止まり脳が働かない。

目の前がぼんやりと暗くなっていき……そして……ぷつりと途切れるように意識が飛んだ。

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