それからネストをいくつか通った。
道中ではいくらかの魔法生物に遭遇したが、皆蹴散らした。
油断さえしなければ大丈夫……それにリボンもいる。
最初から意思疎通のできる味方に出会えたのは幸運だった。
そんな中で訪れたネストには、魔法生物はいなかった。
その代わり、空間に穴が空いたかのような裂け目があり、そこから光が漏れている。
「もしかしてこれ……出口かな」
「出口って……どこの?」
「リボンちゃんはなんにも知らないのね」
「アタシ、生まれてからすぐにひとりになっちゃったから……」
「それは……なんかごめんね。でもそれなら丁度良かった。私といたほうがきっといいわよ」
「確かにそうかも。おいしいご飯も食べられるし!」
食い意地が張っているところがこの子のいいところだ。
「よし! じゃあ出るよ!」
「うん!」
私たちは揃って裂け目へと飛び込んだ。
──ここは……平原だ。
「あれ!? 変わってない!」
「いや……どうやら出たみたいだよ」
平原は平原でも、ここはさっきの場所とは違う。茂みの壁もなく周囲は広大に広がり、ちらほらと洞窟が点在しているのが見える。
おそらくここが、ガレフ第一層、タセフィ区だ。
「踏破したんだ。案外あっけなかったかな」
「えー、そう? アタシがいたからじゃないのぉ?」
「それは確かよ。ありがとうリボン」
「えへへぇ」
「さて……とりあえずルルーさんに連絡しておくかな」
「だぁれ?」
「私の主ってとこかしら」
「主の主!? えらいひとだぁ……」
「ちょっとまっててね」
リボンから少し離れてノーフを起動する。
「ルルーさん、ニャコです」
『こんにちは。どうしましたか?』
「ひとつめの迷宮を踏破してタセフィ区に到着しました」
『ええっ!?』
受話器の向こうからは驚いた声が響く。
「意外でしたか?」
『そうですね……マークさんは十話くらいかけてましたから』
「え?」
『いえ……こちらの話です』
「それで、この後はどうしたらいいのか……」
『ギルドへ向かってください。タセフィ区の地図はノーフに入っているのでわかると思います』
「ギルド……あ、あった。ありました」
『では、そこへ向かって冒険者登録をしてください』
「了解しました。じゃあこれで……」
『あ、ニャコさん』
「はい?」
『受話器越しだと敬語になるタイプなんですね』
「もー! 別にいいじゃないですか!」
『ふふ、せっかく踏破したんです。肩の力を抜いて休んでください。それでは』
通話は終了した。
「しかしギルドか……私みたいなヴィヴィでも受け入れてくれるのかな……リボンもいるし」
「どこか行くの?」
「うん。行かなきゃならないんだけど……大丈夫かなって」
「アタシとニャコちゃんなら大丈夫でしょ! 邪魔者はみんな絞め殺しちゃうよぉ〜」
「あー、それやめてね。ヒトに対しては金輪際危害を加えないこと!」
「え、だめなの?」
「だめです。私はヒトの味方なので」
「一回食べてみたかったんだけどなぁ」
「別のものいっぱいあるから我慢してよ」
「それもそっかぁ」
「よし、それじゃあとりあえず目指そうか!」
「うん!」
ノーフの地図を起動してギルドへと向かった。