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冒険者登録

「ここがギルド……」

大きな門があり、その中は小さな町のようになっている。

「む、ヴィヴィと……魔法生物か!?」

門番のような人がこちらを見て驚く。

「待って。私たちは敵じゃないわ」

「しゃべったぁ!?」

「ああ、そうそう。喋れるの」

「アタシも何もしないわ」

「……ふむ。しかし口だけではなんとでも言えますからなぁ」

門番は訝しげに私たちを見回す。まぁそりゃそうよね。

「これノーフ」

カバンからルルーさんにもらったノーフを取り出す。

「あ、冒険者ですか?」

「今からその登録に行くの」

「登録前からノーフ? 妙ですね……」

「ん〜、ルルーさんって言っても通じるのかな」

「ルルーさん?」

その名を聞いた門番はそれに反応する。

「えぇ。私、ルルーさんのとこでお世話になってここに来たの」

「なんと! ルルーさんの知り合いでしたか! それなら疑う余地もないですね!」

「あ、確認とか……」

「大丈夫ですよ! ルルーさんの名を騙るような不届き者はいないはずですから!」

意外とすごい人なんだあの人……。

「さ、どうぞ!」

門番が道を空ける。

私たちはそれを通りギルドの敷地へ足を踏み入れた。

「おぉ……ヒトがいっぱい……じゅる……」

「こら。人は食べない約束でしょ?」

「そ、そうだけど……ヒトなんてほとんど見たこともなかったし……」

「そんなのよりおいしいのたくさんあるわよきっと」

「それなら文句なしだけどねぇ」

はやく美味しいものたべさせないと暴走しそうだ……。

間もなく大きな建物が見えてきた。

これがギルドだろうか。

「さっきの門番さんみたいに驚かれちゃうかな……」

リボンの言う通りかもしれない。私みたいなのが来る場所ではないのかな……。

もやもやとしながらもギルドの戸を開く。

目の前は酒場になっていて、冒険者と見られる者たちで溢れていた。

その顔ぶれは様々で、ヒトの他にも多種多様魔法生物が混ざっている。

「え……いるじゃん、魔法生物!」

「ん? おー、喋るヴィヴィ!? 面白い!」

戸の開く音をきいてこちらを見た冒険者たちが、私を見て笑っている。

「後ろにいるのはヴァイン・ヴァインか? 珍しいなぁ! ちっさいけど!」

「ちっさいって言うな!」

「ギルドに来るのは初めてだよな? あっちのカウンターで受け付けしてるぜ」

「ありがと」

「はは! いいってこと!」

気さくな人が多そうだな。

「おいしそうなにおいしたよ」

リボンが言う通り酒場には料理が溢れていた。

「とりあえず登録しちゃお。ご飯はそれから!」

「ん〜」

リボンにはひとまず我慢してもらっておいて、彼に言われた通り入って右側にあるカウンターに向かう。

「あらあらぁ? かわいらしい! ヴィヴィちゃんですか〜!」

カウンターにいた女性がこちらに駆け寄って私を抱き上げた。

「ふぎっ! ちょ、いきなりなに!?」

「あぁ〜ごめんなさい! かわいくてつい!」

「ま、まぁいいけど……」

抱き上げられたままだが私を降ろすつもりはないらしい。

「ギルド登録ですかぁ?」

「うん、そう。冒険者になってこいってルルーさんが」

「あー、ルルーさんのとこのヴィヴィちゃんなんですねぇ」

「ニャコよ。こっちはリボンちゃん」

「ど、どうも……」

リボンはなんかちょっと緊張してる。

「私はクラリス。よろしくね。こっちもまたかわいらしいわねぇ〜。ヴァイン・ヴァインの幼体ちゃんかな?」

ようやく私を降ろしたクラリスはリボンの頬を撫でる。

「んん〜……」

「あ、この子は冒険者ではないから」

「あら、そう?」

「私が勝手に連れてきたから……」

「ふぅん……でも、そんなに気負うことないんじゃないかしら? 時々酷い子たちも見るわよ? それこそドレイみたいな……」

「変わらないわよ、私も……」

「そんなことない!」

それを言ったのはリボンだった。

「あなたは魔法で操られているのよ……そう言うしかないんでしょ?」

「違うよ。今喋ってるのはアタシだもん。友達なんでしょ? アタシたち。だから魔法なんてなくたって、アタシはニャコの味方だよ」

「リボン……」

本当かどうかはわからない。

都合よく精神が改竄されているだけの可能性もある。

でも……その言葉は私にとっては救いのようだった。

「仲良しじゃないのぉ。ね、あなたはやっぱりもうちょっと気楽に考えてもいいと思うわよ」

「うぅん……」

「まぁ登録はあなただけにしておくわね。チームとして登録するから」

「あ、はい」

「がんばってね。えっとノーフは……」

「あ、それは持ってるんで……」

「じゃあ登録するからね。……よし、これで完了!」

私のノーフを受け取ったクラリスは数秒も経たないうちにそれを返してくれた。

「早くないですか?」

「ノーフは便利なものだものねぇ」

「え、じゃあこれでもう行っていいんですか?」

「えぇ。……でもたまには顔を出してね? ノーフで大体全部できちゃうけど、私はここにいるから……」

「また来ますよ。ね、リボンちゃん」

「うん! お話しよう!」

「あらあら。ふふ、嬉しいわ。それじゃあ期待してるからね」

クラリスさんは笑顔で見送ってくれた。

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