「リボンちゃんっ!」
階段を登ってリボンを追いかける。
「ニャコちゃんはっ! アタシを、利用したいだけなんだっ!」
その先にいたリボンは、こっちに振り向いて叫んだ。
「違うよ!」
「だったら解いてみてよ! 怖いんでしょ!?」
「それは……」
「ほら……結局アタシを信じてくれない」
リボンは悲しそうに俯く。
「……わかったよ」
「え?」
「解いてみる。ただ、あなたを信じてないわけじゃないの。信じてるからこそ……万が一、これが幻想だったらって思うと、すごく怖くて……。だって、私の友達のリボンちゃんが、どこにもいなくなっちゃうってことだから」
「……ううん。行かないよ。アタシはどこにも行かない。だから安心して。アタシはアタシの意思でここにいて、ニャコちゃんを信じてついてきてるんだから」
「リボンちゃん……」
その瞳は真っ直ぐに私を見つめ、曇りない輝きが真実を訴える。
この煌めきを信じないわけにいかない。
「じゃあ……いくよ」
スキルの解除を念じる。
一瞬透明な鎖が浮かんで見えたような気がして、それはホロホロと崩れ去る。
私とリボンを繋いでいた何かが、確かに消えた。そんな感じだった。
「……リボン、ちゃん?」
「……」
リボンは私の声掛けに答えず、虚ろな目で真っ直ぐに虚構を見つめている。
「ねぇ……なんで黙ってるの? ねぇリボンちゃん!」
まさか、やっぱり……!?
「やだよ! 信じてるって言ったのに!」
「ふあぉ〜」
「わっ!」
リボンは急に大きなあくびをした。
「……あれ。なんか、急に意識が飛んじゃってた。……これ、もう解けてるの?」
「リボンちゃん!」
「ニャコちゃん! みて!多分成功した!」
「やっぱりリボンちゃんはリボンちゃんなんだ!」
「当たり前でしょ〜? 言ったじゃん」
「それでも心配だったの〜!」
私はリボンに飛びつく。
「ニャコちゃん。これからもよろしくね。魔法なんかなくたって、私たちは見えないリボンでつながってるんだから」
そう言いながらもリボンはツタを伸ばして物理的に私とつながってくる。
「えへへ、これじゃあ離れられないね」
「離さないもんっ!」
そう言うとリボンちゃんはもう少しだけツタを強める。
これだけ固い絆なら、決して切れることは無い。
あんなふうに消えていったゴロニャームの鎖とは、比べ物にならないほど強固だ。
「さ、ルルーさんのところに戻ろう。アタシもカッとなっちゃったし」
「大丈夫?」
「うん! あの人のやり方もちょっとひどいけど証明することはできるものね……それに、ニャコさんの雇い主なんでしょ? アタシ、失礼なことしちゃったし……」
「リボンちゃんはえらいね。そんなのほっといてもいいことなのに」
「ニャコちゃんに迷惑かけたくないから」
「ふふ、ありがと! じゃあいこ!」
「うん!」
ふたりで階下に残してきたルルーさんの許へ向かった。