アタシたちは森の中へと入っていく。
「まずは簡単な依頼からにゃ。チームは連携ができなければ困るにゃから……にゃッ?!」
アタシじゃなく、フィーリーが横にいたんでウィルテがびっくりしている。
「大丈夫ですよ。普段通りに話して頂いて」
たぶん、フィーリーはウィルテの猫かぶりに最初から気づいてたと思うけど。
「そ、そうですか……にゃ。エヘヘ……コホン! えー、ワタシ…ウィルテは魔法使いなので、当然後方からの支援攻撃メインにゃ。補助魔法も多少は使えるけれど、基本は攻撃系魔法。特に炎系が得意にゃ」
「私は流剣派の剣士です。接近戦が得手ですが、剣閃を飛ばす技も使えます」
「さすがフィーリー様! 遠近両用の剣士はレンジャーとして一目置かれる存在にゃ! んで、レディーは…」
フィーリーとウィルテの視線がアタシに集まる。
「えっと、たぶん流剣派…かな?」
「そうにゃ。遠距離もできるし、レディーもフィーリー様と同タイプにゃ」
「レディーが流剣を?」
フィーリーからすれば意外だろうな。剣を教えて貰っている間、ずっとダメダメだったし……
「魔剣のお陰で才能が開花した……みたいな?」
ユーデスを見やるけど…あれ?
なんか反応なし?
「えーっと。それで、討伐依頼はなんなの?」
ウィルテがなにやら書面を掲げる。
「トレントですか。たまに異常発生する魔物ですね」
覗き込んだフィーリーが言う。なんか近づかれて、ウィルテの鼻息が少し荒くなってる。
「ザコはザコだけれど、数が多いからゴブリンよりは厄介にゃ」
「植物系の魔物は、危なくなると同族を呼ぶタイプが多いんでしたね」
「さすがフィーリー様♡ よくご存知ですにゃ♪」
「アタシ、魔物にはそんなに詳しくないし……」
エアプレイスには魔物なんていなかったしね。
お父さんもゴブリン以外と戦わせてくれなかったし……いや、アタシじゃそもそも対処できないからなんだけど。
「トレントはツルの鞭さえ気をつければ問題ありません。上位種になると毒液を投げてきたり、その場で種子を蒔いて仲間を増やすタイプもいます」
「そうそう。後は倒す時に即死魔法の断末魔を上げるヤツもいるにゃ」
「うげぇ。魔物って怖い……」
転生前に、そんな怖い魔物がいる世界だなんて聞いてなかったんですけど……
そうだ。デモスソードとかいる世界だと聞いてたなら転生先になんて選ぶわけないし!
「あ! ちょっとトイレ!」
「は! またかにゃ!」
そんなことを言うが、ウィルテは怒ってるフリをしてるだけだ。
だってフィーリーと2人きりになるチャンスなんだから。
2人から少し離れ、木陰に隠れる。
「ねぇ。ユーデス」
「……なに?」
「なんだよ。喋れるじゃん」
「そりゃね」
また前みたいに眠ってしまったかと心配してたのに。
「なんか怒ってるの?」
「……レディーが私の忠告聞かずに、ギルド入りした挙げ句、パーティーまで組んだこと?」
「……そう。それ」
「怒ってはないよ。万全になるまでは戦いは避けるべきだけれど、お金を稼ぐべきというのも理解できるからね」
「なら、何を……」
「気に入らないんだよ」
「だから何がだって…」
ん? もしかして……
「フィーリーのこと?」
「ああ。そうだよ! 同郷の昔の知り合いか何か知らないけど、レディーに馴れ馴れしくしちゃってさ!」
「なんだよ、そんなことかー」
「そんなことじゃないだろ!」
「いや、そんなことだよ。フィーリーはアタシの師匠みたいなもん。ま、向こうは弟子と思ってなかっただろうけれど」
「師匠と弟子なんて一番マズイじゃないか! 技を教える代わりに、チョメチョメさせろだなんてよくある展開だよ!」
「ど、どこの同人誌の展開だよ…」
なんかユーデスは元神なのに、俗っぽいんだよなー。それが原因で剣に変えられちゃったんじゃないの?
「とにかく! 私はフィーリーという男が嫌いなんだ! レディーにも一切関わらないでもらいたい!」
「そんなわけにはいかないだろ。仲間だし」
「仲間だからって! ……私は?」
「え?」
「……私はレディーの仲間?」
ユーデスは何を言ってるんだろう?
「当たり前だよ。もし、ユーデスがウィルテとフィーリーと話せるなら紹介しても……」
「それはできない」
「……でも、2人は信じれるよ」
「それは分かってるさ。けれど、レディー。君が危険な目に遭うことは避けたい」
魔剣に意思がある……それを伝えることでどんな危険があるのかアタシには分かんないけど。
「ユーデスがそう言うなら……黙ってる」
「うん。ありがとう……」
「でも、フィーリーが嫌いでも、戦う時は協力して欲しい」
「……分かったよ」
「おーい! まだかにゃ! 踏ん張ってんのか! 長いにゃ! そろそろトレントの生息地にゃ! 早くするにゃ!」