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044 レディーの出番

 メカ・エキドナが羽ばたく。この魔物(?)が戦いやすいよう、この辺だけ天井が高くなっているみたい。


「ウィルテ! どんな攻撃をしてくる!?」


「あれがエキドナなら、基本的には魔法中心のはずにゃ! 知性を与えた弊害で、戦闘能力はキマイラよりは劣るにゃ!」


「キマイラなら全滅必至だったけど、なんとかなるって思っていいんだよね? トレーナ!?」


「う、うん。たぶん…」


「なんじゃい?」


「いや、ステータスが……」


 そんな話をしていると、メカ・エキドナが空中から炎を吐いた!


「うおおお! あっちーッ!!」


 尻に火のついたマイザーが駆け回る。


 メカ・エキドナは続けて、鉄の羽を高速で動かして小さな竜巻を起こす!


「クソ! 剣が届かない距離だ! なんとかしてくれよ!」


 マイザーの言う通り、敵はこっちの攻撃が届かないところで一方的に遠距離攻撃してくる。


「【鳳扇刃】!」


 フィーリーが素早く剣を抜くと、そこから魔力で形成された刃が飛んで行く!


 けど、メカ・エキドナは空中でヒラリとかわしちゃう。


「チッ! 【多段鳳扇刃】!」


 剣を左右に目にも止まらないスピードで動かして、まるで折り重なるように時間差で積み重なった【鳳扇刃】がメカ・エキドナを襲う!


 さすがにこれは避けらなかったけど、金属同士がぶつかる音からしてもそんなにダメージにはなってなさそう。


「範囲攻撃来ます!」


 フィーリーが攻撃を止めて退く。


「全員、ワシの後ろに!」


 代わりとばかりにダルハイドさんが前に出て、持っていた大剣を床に突き刺す。


「【不動仁王】!」


 そう叫ぶと、ダルハイドさんの全身の筋肉が盛り上がる。


格闘家モンク技能スキルにゃ」


 ウィルテに引っ張られ、ダルハイドさんの背中に隠れる。


 スキル? 剣技や魔法とはまた違うもの? 


 メカ・エキドナが鋼鉄の羽を無数に飛ばしてきて、それをダルハイドさんが一身に受け止める。


「くそ。多彩だな。地面に引きずり込んでやらねぇと、攻撃が通らねぇぞ。遠距離攻撃でなんとか誘き寄せられねぇかな」


「フィーリーの攻撃が通用しなかったんだから、ウチのフライングディスクじゃ何の意味もないでしょ」


 シェイミは腰のフリスビーみたいなのを指差して言う。


「ならここは…」「魔法の出番よね」


 ウィルテとトレーナさんがそれぞれ言い、互いに睨み合う。


「攻撃が終わる。反撃するぞい!」


 幾つか刺さってしまった羽を引き抜き、ダルハイドさんは大きな咆哮を上げた。


 そして、ウィルテとトレーナーさんがほぼ同時に、ダルハイドさんの左右から飛び出す。


「【フレイム・ボール】!」「【アクアス・ボール】!」


 ウィルテのステッキから飛んでいった炎の球と、トレーナさんの杖から飛んでいった水の球が、メカ・エキドナに当たる前に、ぶつかりあって、ジュアっと水蒸気に変わって消えてしまう。


 魔法を使い、「「あ!」」と2人が声を上げた。


「な! なにするにゃ!」「こっちのセリフよ!」


「なにやってんだよ! 【鉄壁耐壁】!」


 いがみ合っている2人に、メカ・エキドナが飛んで来て、それをマイザーが剣を十字にして防御した。


「にゃ? マイザー、そんな技使えたにゃ?」


「防御系だけだよ! しかもコレは剣技じゃねぇし!」


「お喋りしとる場合か!」


 ダルハイドさんに怒られ、ウィルテもマイザーも慌てて逃げる。


 メカ・エキドナはまた飛んで距離を取り、遠距離攻撃を繰り返す。


「クソ! 完璧に向こうのペースだぜ!」


「魔法防御耐性が高い。そのせいでこちらの攻撃が通りにくいようです」


「物理攻撃ばかりじゃから何とか凌げているが、このままじゃジリ貧じゃ!」


 フィーリーの剣撃を飛ばし、ダルハイドさんは手近にあった床タイルを掴んで投げつけ、マイザーやシェイミは突進してきたところを斬りつける……


 ウィルテもトレーナさんも攻撃魔法を幾つも使うけど、メカ・エキドナはそれを察して優先的に邪魔してくる。


「軽い魔法にゃ全然ダメにゃ!」


「でも、詠唱する時間が足りないわ!」


「敵を一瞬だけでも怯ませられないかなぁ!」


「無理だろ! 師匠の攻撃にもビビってないんだぜ!」


 マイザーの言う通り、フィーリーの攻撃は当たってはいるけど深い傷は与えられていない。


「一撃必殺ってなら…」


 ウィルテが、アタシを見やる。


「あの、メカ…を?」


「“メカ”? エキドナのことにゃ? アレを倒すには、レディーの力が……」


 マイザーたちもアタシを見てくる……けど、アタシは……


「やるしかないようだよ。レディー」


 ユーデスが言う。


「けど…」


「大丈夫。私に任せて。もう前みたいなヘマはしないさ」

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