アタシたちの前に現れたのは、ギルドの受付にいたランザさんだった。
「なんで、アナタが……」
「どうして……」
「え?」
「どうして、ここで邪魔をするのよ!」
ローラさんの後ろで目立たないようにしていた時とは違い、憎悪の感情をむき出しにしてランザさんは怒鳴る。
「……様子がおかしい」
「う、うん」
ユーデスにそう言われ、アタシも警戒をする。
「これが終われば、私は幸せになるの! もう今までの“つまらない女”じゃなくなる! この狭苦しい島を出て、私はマルカトニー様と一緒になるの!!」
“つまらない女”……その言葉にアタシの胸がズキリと痛む。
彼女が何のことを言っているのかは分からない。
ただ、最初に見た瞬間、アタシは彼女の中に自分の存在を感じた。
そう。転生する前、デヴで陰気で何をやってもダメだった女だ……
強い自己否定。
どうしようもない嫌悪感が強まっていく。
もがき、苦しみ、悲しんで……
アタシは……私は……自分を棄てた……
「レディー」
「…ユーデス」
「大丈夫。君の動揺は私にも伝わってくる。でも、心配しないで。君には私がついている」
そう。この言葉がどれだけ心強いか……
ユーデスが側にいてくれたから……
ダメなアタシでも……
「私はこんなところで終われない!!」
ランザさんが胸元から取り出したのは、紫色の液体に満たされた小瓶だった。
「!? あれは!!」
「ユーデス?」
「ダメだ! 止めるんだ! レディー! あれは…」
ユーデスに言われ、慌てて走りだそうとしたけれども…間に合わなかった。
ランザさんは一口で小瓶の中身をあおり、空瓶を放り捨てる!
「あああああッ!!」
「まずい! レディー、急いでここから逃げるんだ!」
「でも、2人が!」
「クッ! 彼らの身体に、私を一瞬だけ押し付けて!」
「え?」
「いいから! 急いで!」
ユーデスに言われるまま、アタシはウィルテとフィーリィーに剣の側面を当てる。
「ぎにゃッ!」「グウッ!」
まるで電気でも走ったかのように、2人はビクンと跳ねたかと思うと目覚めた。
「一瞬だけ魔力を流して、気付けした! さあ、急いで!」
「うん! さあ、行くよ! 2人とも!」
「な、なんにゃ?!」「レディー? 私は……」
「いいから! 立って! 急いで!!」
寝ぼけ
正直、何が起きているのか分からない。
ランザさんのことも気になる。だけれど、ユーデスあの焦り方は普通じゃなかった。
アタシたちは必死で屋敷から逃げ出す。
そして、屋敷を出た瞬間に……