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065 良薬、鼻に臭し

 ヌゲ?


 アタシは頭の中が真っ白になる…


 ユーデスが何かガタガタしている。


「えっと……マントを?」


「違います。全部です」


 ハハ。まあ、そうだよね。


 脱げっていうのは全部に決まっているよね。


 該当の下はビキニアーマーだし、すぐに……


 って!!


「ふざけるなぁッ!!!」


「ふざけてなどいません」


 アタシが怒るのにも、フィーリーは顔色一つ変えない。


「いや! フィーリー!」


「ウィルテが脱ぎますにゃ!」


「そういうことじゃない!!」


 いつの間にかマントを脱ぎ捨てて、ブラのホックに手をかけているウィルテの足を踏んで止める。


「別に変な意味ではありません」


「変な意味じゃなくて脱げってどういうことだよ!?」


 そうだよ! 男の部屋に呼ばれ、脱げなんて言われたらそういう意味しかないでしょ!!


 ……ま、まあ、デヴで根暗だったアタシにはそんな機会なかったし! 経験もないけれどもさ!


「……勘違いしないで下さい。私は貴女にはほんの少しも、わずかにも、コンマ1ミリも興味がありません」


 ……む。それはそれで傷つくな。


 いや、別にアタシだってそんな風にフィーリー見たことないですけど!


「……一時的にではありますが、貴女の魔路の活性を促します」


「え?」


 フィーリーは瓶の蓋を開き、中身をすり鉢の中に注ぐ。


 そしてゲテモノを……うげ、ムカデみたいなのとか、コウモリみたいな羽とか、長い髪の毛みたいなの入れて、潰して混ぜてるんですけどぉ!


「私の流剣派の師は、医薬学に精通したマスターでもあります。私の医療の腕前は師ほどではありませんが……」


「ってことは…」


「不浄脈により乱れた魔路を修復するには時間がかかります。しかし、路線の要点に物理的な刺激を与えることで、擬似的に活性化させることが可能です」


 フィーリーはそう言って腕まくりする。


 えっと、言っていることはよくわからないけれど……つまりは、ツボをマッサージするみたいなことするってこと?


「でも、その…すり潰した物は?」


「特効薬とまではいきませんが、私が今作れる療法薬です。

 外と内からの治療による相乗効果を狙い、レディーの魔路を本来の姿に戻します」


「ということは、やっぱりアタシにそれを……」


 アタシが後退ろうとすると、ウィルテが後ろから羽交い締めにしてくる!


「レディー! ここは我慢にゃ! この町を守るためにゃ!」


「イヤだー! 絶対にイヤだー!」


「大丈夫です。苦味は多少ありますが、一気に飲み干せば……」


「一気にいけるか! 絶対に固形が残ってるでしょ!」


 そうだ! 潰したあのゲテモノがサラリとした液体になるわけがない!


 げ! なんか紫がかった灰色…どー見ても人間が口にしていいもんじゃないし!


 それにここまで変な酸っぱそうなニオイ漂ってるし!


「仕方ありません。ウィルテ。レディーをそのまま捕まえて置いて下さい」


「はいにゃ!」


「オマエら! ふざけるなぁ!! ユーデス! 助けて!」


(ゴメン。僕もちょっと、レディーが脱ぐとこ見たくて……)


 クソー! あの剣! 絶対に良からぬことしか考えてないぞ!! 薄情者め!!


「はい。では、息を止めて」


「止めろ!? なんで!?」


「鼻腔がやられるからです」


「は!? そんなもん飲ませようと…クッサー!」


「ひ、ひどいニオイにゃ…。レディー。ご愁傷さまにゃ……」


「ヤ・メ・ローーー!!!」


 アタシは口の中に、そのトンデモナイ物が流し込まれ──

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