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第5話 これが愛の形!!!



「……」



 どうも、起床したら何故か別の部屋で分けられている筈なのに、レイゼルが私のベッドに潜り込んでその抱き枕にされていたノエルです。



「いや、おかしい……私、部屋に鍵をつけてもらった筈……あれっ? 鍵かけたよね?? ……うん、やっぱりかけてる。じゃあ何で……???」



 私はそう思いながら、眠っているというのに思いっきり私の無い胸を揉んで「ノエルぅ~……♡ いっぱいセッ○スして野球チームできるくらい子供作ろうなぁ……♡」なんていう寝言を言うレイゼルの手を退かす。手はまだいいとして、そのカッチカチな下半身を何とかして。私の腰に押し付けないで。



「……ちょっと、起きて。レイゼルが起きないと私パジャマから着替えられないんだけど」


「ん……あ、おはよーノエル……♡ さっき、いっぱいノエルとセッ○スする夢見たんだけどさ~、夢の中のノエルがずっと俺の事離さなくて可愛かっ──」



 私はレイゼルの頭を掴むと、そのままベッドから引きずり出して部屋のドアの方まで歩く。



「あっ、あ~っ♡ ノエルのすべすべな手がぁ♡ 俺の頭掴んで、俺の事雑に扱ってるっ……♡ はぁっ♡ いつかその手で俺のチ○コいっぱいシゴいて抜い──待って、チ○コ床に擦れてるからっ♡ 引きずられて床オナみたいな感じになってるからっ♡ 床オナはだめだって♡ チ○コがだめになるっ♡ 出るっ、でるからっ♡ ノエルまって♡♡ ノエルっ♡♡♡ らめらってぇ♡♡♡」


「私の部屋から出ていけッ!!」


「あんっ♡♡♡」



 レイゼルをぶん投げて部屋から出すと、部屋の外から「あっ、あぁっ……♡ ふーっ♡ ふーっ♡」という声が聞こえてきたけど、私は無視すると鍵をかけておいた。



「本当にどうしようもない変態……(その変態行為に密かに興奮する私もある意味同類か……)」



 私はそう呟いてパジャマを脱ぐと、さっさと服を着ようと上の方を着ていた時だった。


 なんだか嫌な予感がして、何気なくドアの方を見ると……。







「はぁ、はぁ……♡(ノエルの生着替えシーン♡ ノエルのクマさんパンツに俺のぶっかけてマーキングしたい……♡ 間接キスみたいな感じで中出しセッ○スしたことになんないかな♡♡ あ~っ、今日も可愛いぃぃ♡♡♡)」



 レイゼルが鍵をかけた筈のドアから堂々と見ていた。床には細かいギザギザした棒、小さなL字の棒……明らかにそういうツールが置いてある。



 こ、こいつッ!! ピッキングを覚えてやがる!! 


 いやどこで覚えたそんな技術!! 



 し、しかも手に持ってるのって、映像記録用のアーティファクト!? 何でそんな高い物を持って……というか!! 



「堂々と盗撮すんなっ!!」


「わかった、じゃあ"これからも"隠れて撮るからさ!」




「いや、だから撮るな!! って、これからもってどういう意味!??」


「あっ、でもいつかハ〇撮りはするかもしれないけど、それは良いよなっ♡ 俺とノエルの愛の記念撮影だし……いつか2人っきりの結婚式で流そうな♡♡」


(※備考 この世界ではハ〇撮りセッ○スをする事は珍しくもなく、結婚式で流す事も普通にある。いわゆる「こんな感じで2人は産まれてそれから成長して出会って、ご覧のような感じで愛を深め合いました♡」というプロフィールムービーの一種として。そして結婚式は現代とは違い、まず必ず新婦の安全日に行う事がまず条件になっている。そして結婚式を挙げている途中、神様の前で妻以外とはドスケベなセッ○スのプレイ不倫はしない事を誓った後、愛のキスならぬ愛の中出しセッ○スをする事になっている(頭おかしい)なぜこんな方法なのかというと、それはこの世界における創造神の神話によるものの影響である。レイゼルは変態ヤンデレ勇者なので、絶対にレイゼル以外の男がウエディングドレスを着たノエルや、色んな恥ずかしいところをイジメられながらノエルが潮を吹いて絶頂してレイゼルに孕まされている所を見られることは無いぞ!ただその代わり、結婚式場がオスとメスが盛ったようにただ交尾して性の匂いが充満するラブホと化す)


 私の目の前では鼻血を出して、ハァハァとヤヴァイ顔をしたショタが何故か私を盗撮しながらサムズアップしており、下半身を何がとは言わないけど、ヌルヌルでカチカチにさせていた。



「ちょっと、流石にいい加減にし──。


 ……っ!?」


「えっ!?」





 ドンッ



 私は今どんな格好なのかも忘れて、ズンズンとレイゼルの持っている盗撮機を没収しようとした。


 けれども、床が何故かツルッ、ヌルッとして滑って私は転んだ。……レイゼルを下敷きにして。なんか足がヌルヌルするんだけど……まさかこれ、レイゼルのせい──考えるのは止めよう。



「いった……」


 ちょっと引きながらも、着替えた後で足を洗いに行こう……そう思って、私に平たい胸を押し付けられているラッキースケベ中の変態の方を見た。だけどそこには……。


 顔を赤くさせて緊張していた童貞勇者が居た。



「え……」





 ちょ、待てよ。


 思わず心の中のキ○タクがそう言った。



 レイゼル、そんなキャラじゃなかったでしょ。いつものレイゼルだったら喜んでるところでしょ、逃がさないように私を抱きしめてスーハースーハーしてるところでしょ。



 思わずフリーズした私だったけど、今の状態をよく考えてみてハッとした。


 私は今、下はパンツだけ。そして私は不注意で偶然だったとはいえ、レイゼルに近づいて押し倒した事になる。そして……私は今、レイゼルの上で四つん這いになっている。しかも密着している状態プラス、顔と顔が30cm以内の距離で。


 そう、普段の私ならまず絶対にしないようなこと。しかも誰がどう見ても、私が襲っているようにしか見えない。


 もしかして、いきなりの事でキャパオーバーしてる? 




「大きな音が聞こえたけれど、一体どうし……あら、あらあらあら♡」



 そんな時、一番今聞きたくなかった声が上から降ってくる。



「お、お母さ、これは違っ……違うのっ!!」



「ついにノエルも自分の心に正直になって大人の階段を登るのね……大丈夫よ、邪魔しないから。ノルトさんとデート検診にでも行こうかしら~♡」


「いや、理解のある母親みたいな感じに言わなくていいから!! というかそれ建前で、お父さんと2人っきりでイチャイチャしたいだけでしょ!? 待って、行かなくていい!! やめて~~っ!!!」



「ごゆっくり~♡」


「待゛ってぇ!!!!!」



 追いかけようとしたけれど、お母さんの方が行動は早かった。本当にお父さんと出かけて行ってしまい、私とレイゼルはそのまま放置された。それでシーン、という音のない音が聞こえてくる。


 とりあえず未だに倒れているレイゼルよりも、足を洗おう。精液が乾いてカピカピになるかもしれない。それからズボン履かないと、ズボンに付きそうだし。


 まぁそのせいで戻ってくる時、廊下でまだ倒れていたレイゼルの横を通らないといけなくなったけど……。その時に「絶景だな……ここが天国か」ってガンギマリの目で凝視しながら呟いて盗撮してたから足で頭をグリグリした。変態には逆効果で「はぁ~っ♡ はぁ~♡ ノエルに踏まれてるぅっ♡♡ ノエルの足ぃぃいっ♡♡ 足ぃっっっっ♡♡♡」だったけど。


 それから起き上がった後、ズボン履いてる私を盗撮しながら話しかけてきた。



「なぁ、今日が何の日か分かるよな!」


「レイゼルに知らずの内に盗撮されてる事が分かった日だけど?」




「そうじゃなくてさー、今日はぁ…………俺のマイエンジェル・ワイフ♡」


「全然違う、一回脳みそ取り換えたら?」




「ノエルの誕生日じゃん!」


「まぁ、その両親は娘の誕生日だというのに祝いの言葉もひとつも寄越さず、病院に行きましたけどね!! レイゼルのせいで!!」



「俺、一番にノエルにおはようって言って祝いたくて……つい、ドアをたまたま家にあったキーピックマスターキーで開けてノエルのベッドで寝ちゃったんだよな……きゃっ♡」


「何でそこで照れるの、そこで。というか、何でキーピックがたまたま家にある!!」



「しらない! 


 けど……要するに俺にキーピック使ってノエルの可愛い所を撮れって神様が言ってるんだ! たぶんそう! 





 だから可愛いノエルのあんなコトやこんなコト、そんなコトも、いつか俺にあられもない姿で○○○○○○○○○○ピーーーーーーーーッされて、自分から○○○○○○○○○○ピーーーーーーーーッしてるところも、○○○○○ピーーーッして俺のこと○○○○○○○○○○ピーーーーーーーーッって言いながら○○○○○○○○○○ピーーーーーーーーッに俺の○○○○○○○○○○ピーーーーーーーーッ○○○○ピーーッした○○○○ピーーーッ○○○○○ピーーーッで肉と肉が絡み擦れ合って、○○○ピーッの中に○○○○○○ピーーーーッ注ぎ込まれて幸せそうにアヘりながらイッてるところも、


 全部撮る!!!」


「母なる大地に還れ」




「あっ、そういえばノエルの為に誕生日プレゼント用意したんだ!」


「……まさかそれ、自分とか言わないよね」



 私はそう言うと、レイゼルは顔を赤くさせながらモジモジと照れ始める。



「……お、俺の方が良かった?」


「要らない」




「来年は俺のチ○コにリボン付けて勃起スタンバイしておくから、いつでもそれでオ○ニーしてチ○コとま○この濃厚接触していいからなっ♡ あっ、硬さ調整したかったらちょっとノエルのとぅるとぅるお手てとヌルヌルなちっちゃいお口と舌でされたらすぐに硬くなるから♡」


「要らない!!」



 すると変態は私にとある箱を渡してきて、私よりもなんだかワクワクしている変態に「開けてみて」と言われた。仕方なく私はその箱を開けてみると……。



「ん……?」


「もう一回開けてみ」



 更に小さな箱が5つ。ふたつは長方形、みっつは正方形。



 私は言われた通り開けてみると……そこには良い意味でレイゼルらしくない誕生日プレゼントに相応しい物が入っていた。



「じゃーん! どう? すっごく綺麗だろ!」


「あっ……え!?」





 中に入っていたのは綺麗なサファイアレイゼルの眼とエメラルド私の眼の宝石が付いたアクセサリーで、ネックレスや指輪にピアス、アンクレットに髪飾りのフルセットだった。しかもシルバーでスタイリッシュさのある、私好みな凝ったデザイン。


(※女性に贈る時の注意点 もし異性、特に女性にアクセサリー類をプレゼントする時は、絶対に"本人の好みに合う"なおかつ本人の魅力を上げるような"本人に似合う物"をあげようね! 大人な女性に可愛いに全振りした物より、大人なデザイン(それでいて可愛い)を渡した方が良いってことくらいは分かるよね! もし分からなかったら……。


 テメェがモテない理由はそういう細かい気遣いと察しができねェ所だ。


 だけど指輪の場合はサイズが小さかったり大きかったりしちゃうかもしれないから、サプライズで渡すのはかなりリスキー! 高い物を買って失敗すると「は? コイツ、センス無い上に無駄に高い物買ってきたんだけど……結婚した時にもコレみたいにいきなり普段の日常で必要無いもの買ってきそうで無理……別れようかな」になってしまう可能性が出てくるよ! 


 だから「ねぇ~これめっちゃ可愛い! 欲しい!!」って前に彼女が言ってたやつでサイズもピッタリだから絶対失敗しないっていう自信がある指輪を用意してある人以外は、彼女と一緒にデート中に「ちょっと見てみようか? またいつか買いにここへ来る時に、どういうやつがあるのか予め見ておいた方が分かりやすいだろうし」と結婚をほのめかす言葉を言って一緒に店内を回り、店員に色々と聞いてみたりして自分が気に入っていて彼女に着けて欲しい指輪ではなく"彼女が一番似合っていて気に入った指輪"をスマートに買って渡した方がいいぞ! たぶん!)



「こ、これっ!! 高かったんじゃないの!? ものすごく宝石が大きいんだけど!!」


「え? いや、そこまではしなかったぞ?」



「じゃあ、コレ偽物?」


「いーや本物、ノエルに偽物なんかあげる訳ないじゃんか」



「何で……??」


「これ、全部材料は俺が取ったんだよな~」



 材料を取ったって、いつの間に。あ、もしかして私が家出して帰ってきた時にレイゼルは「ちょっと寄り道しながら追いかけてきた」って言ってたな。


 よく考えてみればレイゼルなら私を追いかけて来ると思ってたけど、結構一ヶ月くらい私は旅に出てたし。その間、ずっとこれを用意する為に頑張ってたって事? まぁ、材料探すのにも作るのにも時間かかるし……その間探しに来なかったのには納得。


 あれ、でも……普通、匂いってスカンクの体液みたいに強烈じゃないとそんなに匂いって残らないよね。それに風の向きとか色々あるし。もしかして、犬以上の変態的な嗅覚なんじゃ……。


 そんなレイゼルだけど、一週間が過ぎて無視するのを止めた頃、ずっと私にくっ付いて「ノエルが返事も必要ともしてくれないなら俺は死ぬ、存在理由も生きてる価値も無い……」とか言ってた。


 表情とか完全に無で、本当に死にかねない雰囲気だった。


 まぁ、仕方ないから「流石に死んで欲しい訳じゃないんだけど……それにそんな死ぬとか言わないでくれる? レイゼルの事はちゃんと大事に思ってるし……い、一応ね! 一応!! 調子乗って変な解釈したらぶっ飛ばすから!!!」って言ったらレイゼルは完全に復活した。


 でも何故か心臓を押さえながら後ろに倒れて鼻血ボタボタ垂らしてて、出血多量で死にかけてたけど。そんな様子を見ていた両親は「いつ付き合うんだ?」「孫が楽しみね♡」的な事言ってたけど。やめろ、そんな意味わからないことを言わないでくれ。


 確かにレイゼルは顔とか鍛えてるから体、それからエロゲーの主人公らしくちん……もなんか規格外な感じで、まだショタなのに色気は凄いけど! えっちだけども!! そうではあるし、そこは否定しないけれど!!! 


 中身が!! 中身が残念なの!!! あまりにも!!! それに伴って、ハァハァしてる時の顔が色々とやばいんです。何がって? 色々は色々(意味深)だよ。


 いやいや、そんな事よりも! 本当にデザインセンスが良いな……結構宝石は多め、それに絶対に高いような大きい物があるけど、嫌味な感じというか、ジャラッとしたような……豪華過ぎて普段使いにできなさそうな感じとかじゃない。


 レイゼルにこんな才能があったとは。レイゼルへの今までの認識が、ほんのちょっとだけ変わった。……あれ、そういえばヒロインの誕生日にはヒロイン達にプレゼントをあげて好感度とバフ効果を上げる事ができるけど、確かノエルってゴミ(使用済みの避妊具)以外唯一何あげても喜ぶキャラクターだったよね。


 だから初見の人とかノエルを攻略する気がない、普通にプレイする人は適当に持ってた物適当に渡すけど……。そのレパートリーの中に薬草とかその辺に落ちてた花とかあるけど、それのどれをあげてもノエルは喜んじゃうんだよ。薬草はハーブティー、花は押し花にして使ってるし。……私は花が好きだから、ぶっちゃけ綺麗だったら正直喜んじゃうかもしれないけど。


 というか本当にそういう要らないもの押し付けて「これ誕生日プレゼントだからあげる!」「ま、まぁ? せっかくの貢ぎ物だから仕方ないけれど、一応もらっておいてあげるわ。せいぜい優しい私に感謝する事ね!……ちょっと、何ニヤニヤしてるのよ」って……都合のいい女過ぎる。そんな物貰って喜んじゃダメだよ、どれだけチョロいの!! 


 でも実は他のキャラなら自分の欲しい物をあげたらイベント終了時に貰ったものの効果でステータスと好感度超アップするけれど、売却時にあげる物の価値が高いアイテムをあげると他とは違ってステータスがかなり上がる。


(好感度はどれあげても上がる数値が一定だけど)


 だからノエルには自分で作ったグレードの高い料理、そして換金アイテムの宝石類、自分で作った良い装備(服)などをあげればいい。誕生日プレゼントには数の指定がないから、持ってる物……まさに自分が着てる服、身ぐるみ全部あげられる。


 もちろん自分自身をあげてイチャイチャ(意味深)でもできるし。


 まぁ、そんな訳でレイゼルは多分……ヒロインにあげられる中で一番高い物を全部初っ端からストレートで出してきた訳だよ。しかも長い間、それを作るために頑張ってた訳だし。


 ……それは、無になる。ごめんレイゼル、心の中で謝るから。でもそれはそれとして、レイゼルの渡す物だから、普通の超高いアイテムって感じじゃなくて何か特別な事が施されてそうな気がしてならないんだけど……。



「鍛冶屋のおじさん(例の村に竿役モブおじと美女のカップル2組居る内の一人のおじさん)にデザイン図渡して安く加工してもらったから! あ、もちろんおじさんが変な細工してないか、俺がちゃ~~~~~んと確認したから平気だぞ!」



 変な安全確認的なものを言われても、平気じゃないのはレイゼルの方である。お前の方が細工してないだろうな……。



「何でそんな疑いの目で俺の事見んの。大丈夫だって! むしろこれはノエルの身を守る為の装備だから!」


「そ、そうなんだ……」



「そ! きったねぇ欲望を吐き出したいと思ってる俺以外の男共がノエルに触ろうとすると、すっげー強力な電撃を受けたように感じるんだよ! これ凄いよな!」


「あっ、うん……ソウダネ」



 い、今の"男共"のところが複副声音でゴミ共って聞こえたような……。でもまぁ、それはありがたいかな。また前みたいにインキュバスが寄ってくるかもしれないし。



「あー、でもピアスは穴空けないと着けられないか」


「まぁ……キラキラしてたり綺麗な物は好きだけど、そもそもアクセサリー類を自分で着けようとは思った事なかったし」



「すっげーもったいない! 絶対ノエルに似合うって! ……って思ってたから、これをノエルに誕生日プレゼントとしてあげるな! 邪魔だったら透明になれーって思いながら魔力込めれば、マジで消えるから! 原理は知らないけど、消えてる間は着けてる感じも無くなるからさ。いちいち外す手間が無いから、これならずっと着けてられるだろ?」



 えっ、もしかしてこれ肌身離さず着けろって事? うーん……。



「まぁ、それなら……でも指輪って大丈夫?」


「やった!! あ、指輪は指の太さに伴って大きさ変化するから心配しなくていいぞ」



 なんか、いつもよりグイグイくるな、この勇者。



「でもやっぱりピアスの方も着けて欲しいし……」



 そう言うとレイゼルは私の耳に触れてくる。少し、くすぐったくてゾワゾワ……いや、ゾクゾクする。






「この際さ、穴空けよ? きっと──いや違うな、絶対にノエルに似合うからさ」



 ……まただ、前にお風呂場にレイゼルが乱入してきた時の……あの感じ。いつもとは違って何故か体が抵抗しない、嫌じゃない感じ。



「いいよ、そうしないと着けられないし。せっかく持ってるのに着けないのは宝の持ち腐れというか、ただの宝石ならまだしもアクセサリーとして加工されてる訳だから、本来の役割を果たせないピアスが可哀想だし……」


「じゃあ俺が開けていい? 自分で自分に穴開けるのって怖いだろうし」


「普通に怖いからやって」



「ん、分かった。でもまぁ、穴開けてもしばらく塞がらないようにアクセサリーとして着けるピアスじゃなくてファーストピアスっていう他の物を着ける事になるけど」


「えっ、そうなの?」



 前世はオシャレとは無縁の生活送ってきたから知らなかった……。



「短くて一ヶ月、長くて三ヶ月。毎日着けて消毒しないといけないけど……そこは俺がちゃんとノエルを傷物にした責任をしっかり持ってやるからな」


「その言い方やめて」



 私はすぐにツッコミを入れると、それからレイゼルの「丁度穴開ける針も作ってもらったからさ、早速開けよ!」という言葉で私は耳に穴を開ける事になった。


 だけどレイゼルが持ってきた道具は完全に現代に友達の付き合いでアクセサリーショップに行った時、そこに売ってあったピアッサーとまんま同じで、一体どうやって手に入れたんだと不思議に思いながらも、私を椅子に座らせ、前にあるドレッサーでしっかりと見える状態で開けることとなった。



「じゃあいくぞー!」



 ガチャンッ



 思ったりよりも痛くない少しの痛みと音に驚きながらも、私は両耳同時に開けられてレイゼルに回復魔法ヴァリカーで穴が塞がらない程度に止血され、消毒液で濡れたガーゼで血を拭われる。そしてファーストピアスを着けられた。



「よし、じゃあ着けてあげるな~!」



 上機嫌でレイゼルは私にアクセサリーを着けていく。まずはアンクレットで、レイゼルは私の足を取ると……ちょっとだけカサついた唇が甲にキスをした。


















 ま、待って、普通にそういう事しないで!? 私の前世はただの恋愛拗らせてた女なんですけど!?? 


 いつもと全く違うレイゼルに段々と顔が熱くなっていくと、それを見たレイゼルが嬉しそうに目を細めて意地悪そうな顔で「顔真っ赤」と言ってくる。



《勇者はノエルの心に99999のダメージを与えた!》



 ほんの少しの金属の冷たさにちょっと体が震えて、チャリッという音と共にまずはアンクレットが着けられる。


 そして次に髪飾りを頭に挿す。髪飾りは前世の世界に住んでいた国の、大昔の女性が着けていた簪にとてもそっくりだった。レイゼル……どこでそんな女の子の髪に簪挿す方法なんて知ったの。


 それから首にネックレス、ブレスレットを着けられて最後に指輪を着けてきた。何故か当然のように左手の薬指にはめられたけど。


「やっぱり俺の見立て通りだ、似合ってる」


 レイゼルはするりと私の後ろから左手の指を絡めて握ると、包み込むようにして抱きしめてきた。そういう事たまにしてくるのやめて、普通に特攻&会心入って私の心抉ってるから。


 いや、でも!! こんな脈アリな素振り見せてきてるけど、原作みたいに捨てられるかもしれないし!! いつかただの都合のいい女扱いされるかもしれないし!!! まぁ、原作ではノエル……つまり私が初恋だったらしいし? 今はそうかもしれないけど、いつかは──


 ……自分で言っててなんだか凄く悲しくなった。



「~~っ、すっげー可愛い!! 天使! いや女神だ!! 俺の幼馴染は世界で一番可愛いなぁ~~~♡ 絶対、他の男の所になんか行かせないからな! 好き好き好きっ♡」



 でもレイゼルはそう言いながら私にスリスリしてくる。……やっぱり私はチョロインなのかもしれない、だってあんなに変態行為の数々しかしてこない奴のことなんか、ほんのちょっとだけとはいえ普通は意識とかしないもん。絶対に引く、距離取る。


 そう、これは誕生日マジック!! その時の雰囲気というか、私が多分誕生日だから浮かれて……いや、そうでもないな。流石に……前世は18っていう20も生きてない年齢で死んだけど、もう誕生日で浮かれるような精神年齢じゃない。


 なんか、もの凄く屈辱!! レイゼルなんかにほんのちょっとだけとはいえ、私が意識させられるのはなんか嫌!! 





「……大好き」


「そ、そんな冗談、ただの幼馴染に言う言葉じゃ──」





「冗談とかじゃなくて、本当に。ノエルの事、愛してるからさ!」



 私の頬に自分のをくっつけて笑いながらそう言うレイゼルだけど、私はその時に見えてしまった。



















 ドレッサーの鏡に映ってるレイゼルの耳が、真っ赤になっている事に。



「だからさ、ずっと……これ着けたままにしてくれよ。死ぬまでずっと」

























 いや、流石にそれはちょっと重い……。


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