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第6話 王族は!クソ!!はっきりわかんだね!!!



「……はぁ?」


 ある日、レイゼルから聞いたことも無いような低い声が聞こえてきて、驚いた私は私はピアスのチェーンが音を立てるくらい素早くその方向を見た。寝ぼけていた頭が一瞬で覚める程で、黒いオーラを放っていたレイゼルは珍しく「チッ……」と舌打ちをする程に機嫌を悪くしていた。


 どうやらレイゼルが読んでいた手紙に、よほど嫌な内容が書かれていた様子。これは相当怒っている事から……おそらく、王様からの手紙なんだろう。まぁ、レイゼルに手紙が来るのは大体王族とか"勇者"に取り入って利用しようとする貴族くらいだからね。


 勇者はこの世界の神と呼ばれる圧倒的上位の存在に選ばれ、寵愛され力を与えられた者。


 その特徴は目が群青色のような青で、手の甲には勇者の証である神を表すシンボル、つまり十字架……ではなく! ♂♀のマークが合体したような痣が現れる。


 そして沢山異性と触れ合ったりスキンシップなどの行為、特に粘膜接触であるキスやセッ……をするとステータスが上がる(他にも効果はあるけど、今は割愛)唯一のユニークスキルを持っている事。


 うーん、そういうデザインと設定がエロゲーそのものだなぁ。


 そして勇者は魔物と人間の架け橋でもあり、まさに人間の代表とも言える。


 けれどもそこに人の王として政治的な権力を与えられる事はなく、政治的な権力を持つには王族や貴族の産まれになるか、国王から貴族としての称号を貰わなければならない。


(まぁ、滅多にそんなことは無いけれど)


 ただひたすらに"魔王と共に"世界の秩序を守る者。そう、本来魔物と人間は争うような関係ではなく、共存するべき相手。そしてまさに勇者は前世の現代における、日本の天皇陛下のような立ち位置だ。


 ……レイゼルがそれに当てはまり、それと同じにするのはもの凄く! ほんっとうに心の底から不敬だとは思うけれども!! 


 まぁ、全部レイゼルのお父さんクズ野郎が始めた物語戦争だけど、何の因果か……その息子であるレイゼルが勇者になるだなんて思いもしなかったよね。ちなみにその戦争が始まったのは今から……そう、なんと約60年も前の事!!


 ……まぁ、まだ魔物達が戦争する宣言してから一度も不思議な事に攻め込まれたことは無いけれど。


 つまり魔王に手を出した挙句、逃げ続けてその歳でレイゼルを作りやがったという訳だ!! そりゃ怒る!! というか、誰でもキレる!! 


 まぁそんな訳でそんなクズは無事に成敗されたものの……。


 それでも魔物達は怒りが収まらなかった。意外と魔物達はキレるとドラゴンと同じくらい手が付けられない上に、かなり仲間意識が高い種族。



『死んで詫びろ!! というか、何で人間そんなに性欲強いんだ!! そんな品も節操も無い生き物はみんな死んでしまえ!!』



 ……というのが、魔物達の考えている事。まぁ、分かるよ。この世界の人々、性欲あり過ぎるよね。ビックリするほど変態しか居ないよね、魔物と人間で恋した時なんか「えっ、何で毎日5回戦セッ○スしてくれないの? セックスレスじゃん、俺・私の事愛してないの??」とかになるらしい。違う、毎日5回は異常なんだよ。


 それに魔物達は寿命が長いから体質的にそんな子供作らなくていいし、だから性欲も元々それに伴って薄いし……どちらかというと睡眠欲と食欲の方が高いし。


 まぁそんな訳で、魔物との戦争に対して王族や貴族は"勇者"の持つ高い魔力と高いスペックを狙っていて、なんとか自分の娘を勇者にやって沢山の子供を作ってもらい、質のいい後継者や戦力を欲しがっている。その中で王様も同じように思っているようで、前から何度もレイゼルに自分の娘の写真を送られてくるらしい。


 同い年だからって、それでイケると思っているんだろう。まぁ新聞で見た事あるけど、すっごく可愛いんだよね……王女様。胸も大きいし!!


 まぁもし勇者が戦いに敗れて死んでしまっても勇者の子供が居れば大丈夫だし、長男が産まれれば家をその子供に継がせ、それ以降の子供に戦いに行ってもらえればいいのだから。


 だから レイゼルにはよくお見合い写真とかの入った手紙とかがやって来るけれど……。王様からの司令の手紙くらいしか読んでいるのを私は見た事がない。


 前にちょっとその写真見た事があるけど……見た後で見た事を後悔した。


 だって!! 皆ストーリーとかで絶対に関わらないようなモブ(たぶん)なのに当然のように可愛いし、皆……皆ッ!! 


 大胸筋が意味分からないくらい発達してるんだもん!!! 


 前世はCで日本人平均カップ数で、モンゴル体型じゃなかったからCでも小さくもなく大きくもなく見えて丁度いい大きさだったけど!! 今世のノエルはA!!!


 今12歳だけど、一向に胸が大きくなる気配無いし!! 発育始まるのって、大体10歳、早くて9歳からで、大体15歳までよ? 今がピークでいっぱい鶏肉とか大豆とかヘルシーで高タンパク質な物食べたり、腕立て伏せとか合掌ポーズで大胸筋鍛えて胸の土台作って素材もいっぱい投入してるよ?? 


 何故育たない!! おかしい!! 希望を捨てきれなくて頑張ったのに!!! 


 ……ハッ!? 


 まさかこれが二次創作の転生物によくある、原作の修正力というヤツでは!? ふざけるなぁぁぁあ!! ちくしょう、修正力め!! あっ、今になって前世の友達が「努力して結果を出せないなら、最初から努力してないのと同じ」とか平然と言ってたの思い出した!! けど、これを前にしてそんなセリフ言えるか!?? クソッ!!! 結果も大事だけど、過程も大事なんだよッ!!! 


 まぁ確かに今回の場合は結果が大事だし、薄々その結果は分かってたけど!! だけど……これだけ抗おうとして頑張ってきたのにBにすらならないこの胸が恨めしい。


 というか、よく考えてみたら胸の厚みでいうと、細マッチョなレイゼルの方がある、気が……。


 なんか、無性に泣きたくなってきた。



「俺はノエルのおっぱい好きだけどな~」



 心を読むなやめろばか(泣)


 というか、レイゼルの場合はやっぱり大きければ大きい程良いけど、どんな大きさでも皆好きそうという私の偏見があるんだけど……。うん、気にしないようにしよう。


 するとレイゼルは本当に嫌そうに、そして言い出しづらそうな表情で「……あのさ」という声を上げた。



「ノエル、今から俺と一緒にデートに行こう?」


「……えっ、今から!?」



「そ、今から」


「というかデートって……」



 私は凄く嫌な予感がしながらもそう言うと、レイゼルは手を握ってくる。そして転移魔法のムーヴィを唱えると、一瞬にして移動した。


 ……移動した先は城下町だ、久々に来たな。昔小さい頃にお父さんとお母さんに連れてこられて以来だ、でも……。





『おとうさぁぁん!! おかあさぁぁああん!!』


『全く……探したんだぞ』


『そうよ、本当に心配だったんだから!!』



『今まで一体何処に──待て、お前の後ろで四つん這いになりながら着いてきているゴキブリ共は何だ』


『し、しらない……なんか、きもちわるいおじさんたちがわたしにはなしかけて、さわろうとしてきたからまえにおかあさんがいってた、ふしんしゃげきたいじゅつ(金的)でけりとばしたらずっとおいかけてくるの!! こわいよぅ!!!』



『その子を嫁に……いや、私の主として貰えないか! この子には才能がある! もちろん、飼い犬として精一杯尽くそう!! いや、尽くしたい!!!』


『いや俺が仕えるんだ!!』


『俺だ!!』


『オレどぅわぁぁぁぁッ!!』


『……トオン』



 ゴォォッ!! 



『黙れゴキブリ共。虫けらの分際で俺の娘を主だのなんだのとほざいてはいるが、ただの性処理としか見ていない、独りよがりばかりで脳みそがち○ぽに付いている害虫ばかりだ。


 それとお前らのような虫けらが俺の娘に釣り合っているとでも思っているのか? それ以上その下水のような臭いを撒き散らす口を開いたら、お前らのポークビッツを塵も残らずに焼き尽くす』





 ……という感じで特殊性癖のおじさん達をお父さんがブチ切れながら炎魔法でおじさん達の脂ギッシュな髪を燃やしてた。あれは本当によく燃えてたね、汚物ほどよく燃えるものは無い。


 それでお母さんが惚れ直す&興奮してその夜はずっと長い間イチャイチャしていたけど。……その日はとにかく寝れなかったです。


 まぁそんな事があって、それ以来城下町に連れて行ってもらえなかったけどね。お父さんには「頼む、これはお前を守る為だ。我慢してくれ」と言われたけど、あんな事があった訳だし仕方ないなで我慢したし、着いて行けなくなった。たぶん、6年ぶりくらいかな。


 相変わらず城下町は賑わっているな。


 普通に道行く男女がお互いの胸や下半身とか、あからさまに性的なボディータッチをしてるけど。お店にはエロイラストによくある「一発2000ソール」とかいう、明らかにそういう感じのとかラブホも普通にちらほらあったけど……。


 全部が全部そういうのじゃないから、ちょっと安心。でも別の意味でこの世界ではあまりこういう人が多い場所は、私のような人間にとって安心できない。



「あんまり俺から離れないように気をつけろよ?」


「分かってる」



 というのも、女の子が一人でいる事はこの世界だとすぐにヤリモクとか変態に捕まるからだ。そう、昔の私みたいに。そのまま流されてセッ……に持ち込まれたり、最悪エロ展開ではよくある催眠術にかけられる場合もある。


 だけど今回は勇者であるレイゼルが一緒にいる。実はレイゼルの顔は新聞などで現勇者として顔が勝手に世界中に知れ渡っており、ユニークスキルの事も知られている。要するに、そんな知らない所で顔は知られてる有名人なレイゼルの隣に居る私は……。"勇者"の女というふうに見られている訳だ。


 勇者の物となれぱ、手を出すような輩は出てこない。いや、そもそも……私よりもその隣の方に皆視線を向ける。


 戦争が起きるキッカケを起こした張本人そっくりで、その実の息子である勇者レイゼルに。



「それで、どうしていきなり城下町なの? さっきデートって言ってたけど……明らかに変でしょ」



 嫌な視線が向けられる中、私はいつも通りにレイゼルに聞き出すと「あー……それは、えっと」という歯切れの悪い返事が返される。



「……王様からの司令なんだよ。ほら、俺勇者だけどお見合いとかそういうの一応行かされてたけど全部断ってたじゃん? でも勇者はセッ○スした方が強くなれる訳だし……その原因の女を連れて来いって言われてさ」



 勇者とはいえ、元々はただの一般国民。大体は王族や貴族の出として産まれない限り、政治的な権力を持たない存在。自分が同じ立場でなければ拒否する事もできない。それは最悪、家族や周りを巻き込むからだ。


 この反応と手紙を読んでいた時の反応からして……本当は嫌だったんだろう。



「……はぁ」


「ごめん、ごめん……本当にごめん」



 レイゼルは酷く申し訳なさそうに、そして悲しそうに、酷く怒ったような声で言った。つまり、私はこれから王様に「なんだこのちんちくりんは、別の女にしたらどうだ。娘とかをお前にやろう、その方が捗るだろう」的な超失礼な事を言われるのか。


 まぁ原作では直接的に王様は登場しないし、国民達の王様に対する評価が「クズ」で、どういうふうにクズなのかは口に出す事もしたくないらしいので、ハッキリとは知らないしどういう人なのかも正直分からないけど。とりあえず……胸がデカイ側室が多いんだって。ちくしょう。あと流石に新聞で自分の国に住んでる王様の顔くらいは知ってるけど、デブである。


 典型的な、二次元でよくある権力者=デブ=クズだ。



「まぁいいよ、さっさとあのボンレスハムの顔を拝んで帰ろう? レイゼルもずっとここに長居したくないでしょ、私は大丈夫だから安心して? いざと言う時にはあのクズをぶん殴るから!」


「絶対殴ったら駄目だからな!? ……本当に、駄目だからな。もしアレに気に入られたらノエルは……」



 なんか様子が変だな、と思いながらもそのままレイゼルとお城に行く事になり、私は初めて王様()と謁見する事になった。


 ……が、そこは文字通りの地獄だった。




「勇者よ、よく来たな……♡」



 何故ならそこには裸の薄らハゲデブが、自分の欲の為に一生感性や体が子供のまま成長せず子供も産めないという呪いをかけたらしい、ロリの側室達に囲まれハーレムを形成しながら、奉仕(意味深)を受けてふんぞり返っていたからだ。女の子の泣き叫ぶかのような矯声と性の臭いが辺りに充満して……。


 本当に吐きそうなほど気持ち悪い。


 そういう特殊性癖な人は抜けるんだろう、でもこれが二次元ではなく"リアル"だと考えてみて欲しい。あまりにも、生理的に受け付けない。しかもその側室達の半数には豊乳でもしたのかと思う程に……いや、たぶん無理やりさせたんだろう。


 その子はその異常に大きな胸を押さえ付け抱えるようにしていて、王様に好き勝手に使われていた。……たぶん、大きく揺れるから痛いんだ。


 胸が日本人の平均サイズ(世界的に見ると小さいけど)あった私でも、学校の体育の授業の時ランニングが嫌いだった。まぁ、普段運動しないのもあるけれど……理由も3つある。


 それは胸が引っ張られて走りにくいし、すぐ疲れるし……何より思いっきり走ると痛みを感じるから。


 二次元の女の子で学園モノの巨乳キャラは足が遅い設定がよくあるけどそれは間違いじゃない。日本人女性の平均よりちょっと大きめな方のDカップの友達だった子は、本当に周り(男子)から見られるし痛いし疲れるしで体育が苦痛だと言っていた。


 それに巨乳が思いっきり走ると、クーパー靭帯がブツリと切れて胸が垂れる場合がある。


 だからその子は結構強めに胸を押さえつけて固定するようにしていたけれど、胸の揺れる様子も楽しんでいたらしい王様は「邪魔だ、その腕を退かせ」と言うと、それに逆らえない子は嫌そうにしながら渋々腕を離した。



「そんな態度をして、お前のせいで家族がどうなってもいいのか?」


その女の子はそう言われてビクリとすると、震えながらその子は「申し訳ございません」と、何度も謝罪の言葉を口にする。



「ならそのまま奉仕しろ♡ あぁ、勇者……まだもう少し待っていろ、すぐに終わらせる♡」



 歳不相応なくらいの胸があって……腰を無理やり押さえつけられて犯されている子は心の悲鳴と肉体の歓喜が入り交じったような喘ぎ声を出している。表情は……説明するまでもない。見るからに、ただの性処理として使われて……おかしくなりそうになっている。ありとあらゆる体液でぐちゃぐちゃで……見るに堪えない。


 もう一度言うけれど、これがリアルに私の目の前で起こっている。


 ただでさえ私の中でロリショタは愛でるものだと思ってる(ただし変態には適用外)というのに、こんなあまりにも人権や愛が無い物は無理だった。何故か私には変態ばかり寄ってくるけど、それは多分慣れとかで大丈夫だったんだろう。気持ち悪い事には変わらないけど、まだマシだった。


 でもこれだけは本当に無理。


 そもそもこの世界でもレイプは流石にダメだし、相手が「いくらでも犯していいですよ」という意思表示の彩度が高めなピンクのスカーフとかバンドとか首輪、国で決められているそういうアイテムを足とか腕、体に巻いたり目に見える所に装備していないと、基本的には違法になる。


 ただこの国は王族……特に一国の主である王に全ての決定権があり、王が全て。王にはそれが適用される事は一切無い。


 思わず口を押さえると、それを見かねたレイゼルが「ごめん……本当にごめん、大丈夫か?」と聞いてくる。



「大丈夫……うっ」



 ……もし私がレイゼルの立場だったなら、きっと本命じゃない相手をここに連れてくる。でも、このクズの前ではそうもいかない。というのも、この国の王に"嘘の言葉は通用しない"からだ。それもユニークスキルのおかげで。


 その為「それが本命か」と聞かれたらどう答えようが、結局は同じ。だからレイゼルは私を連れて来るしかなかったんだろう、だけどこれは……あまりにも予想外だった。


 エロゲーの世界だから色んなタイプの変態が居るとは身に染みて分かってたつもりだったけど、これは……本当に駄目なタイプだし、居たことに引くを通り越して恐怖を感じる。あまりにも地雷過ぎた。


 普段いつも夜に両親の愛の行為によって聞こえてくるものは、いつも聞いていて私までムラムラするし、普段の生活でもお互いに幸せそうでいいなと思う。


 だけど、これは……何もかもが吐き気を催す。


 私はレイゼルに「ごめんな、こんなの見たくないよな……」と言われながら目を両手で覆われる。自分で自分の耳を押さえると、そのまま終わるまでじっとしていた。


 それからしばらく経ってレイゼルの私の目を覆うのが片腕になり、私の手を取る。



「もう大丈夫、でも絵面はそんなに変わってないからさ、このまま話だけ聞いてて」


「うん……」



 私は手を離して話を聞く事にすると、いきなり私は王様から意味不明な事を言われた。



「ノエルとやら、私の側室にならないか?」



 なんでこの状況でそんな事が言えるのか。嫌悪感とか不快感とか、そういうのを通り越した恐怖を再び感じた。


もしかしたら、私もあの子のように家族を盾に無理やり犯されるかもしれないから。


それにこの王様からの視線は完全に私をただの性の対象として見ているような感じがする、その証拠にさっきからずっと鳥肌が治まらない。そこから感じる気持ち悪さと恐怖に更に私は吐き気を催す。


相手に選択権を与えているようで、一切私に与えない圧が私にかかった。


「……はぁ?? ノエルは俺の好きな人で、絶対に俺はこの子以外とセッ○スしたくないんだけど。もしそんな事したらお前の首が地面と濃厚なキスする事になるけど、いいんだ?」


「ふん……お前が勇者でなければ処刑していた所だ」



「殺してでも無理やり奪うって? まぁ、それが上流階級の人間が考える事だよな。それしか脳がないんだからさ? それで、何の用? 


 ……まさかこれだけの用の為に俺達を呼び出した訳じゃねぇよな」



 底冷えする程に冷たい声がレイゼルから聞こえてくる。全く熱を感じない、まるで絶対零度のような……。




 ~・~・~




「ど、どうせ胸やケツのでかい年上の女を連れて来るかと思えば、まぁ……中々良い趣味だ。思わずその気が強そうな顔についた口にチ○ポをねじ込みたくなるな」



 その瞬間に俺はクズの顔スレスレに氷魔法のグロウを飛ばした。ただの威嚇射撃みたいに弱くやったつもりだったけど、かなりの威力が出たらしく、壁に氷塊がでっかいクレーターを作ってめり込んだ。きっと俺の勇者としてのユニークスキルによってノエルからのバフがかかっているからだろうな。


別にセッ○スをしている訳じゃないのにかなりステータスアップしているって事は……つまり、ノエルは俺に対しての好感度が上がったって事だ。


 好感度のアップはバフの上昇を好感度の数値の倍率で上げる事ができる効果と、スキル効果強化がある。そしてノエルのスキルは全ステータスアップ、特に……攻撃力と魔力の2つが上がるスキルだ。


 まぁ、原作では一回のセッ○スで上がるバフの上昇率が悪くてノエルを攻略しようとする人以外は一切強くしようとしなかったらしいけど……。でもガチ勢が最強を目指そうとすると、絶対にノエルを攻略しようとする。それは一定回数セックスをして一定の数値を超えると色々超パワーアップして、手に入るスキルに乙女の勘っていう最強のスキルが増えるから。


 これが本当に強くて……相手のステータスや弱点、行動が全部分かる上に、通常攻撃が必ずクリティカルになるっていう超強いスキルなんだよ。しかもこれ、戦闘時以外にも旅の途中で色々と使える能力なんだよな。


 例えば嘘ついてるキャラクターとかの嘘を見抜いたり、運ゲー要素のあるミニゲームを絶対にクリアできるようになったり、レアモンスターに遭遇する場所を教えてくれたり、レアな素材を落としそうなモンスターとタイミングを教えてくれたり。


 (勘っていう言葉で済ませるあたり、適当だなーって思うけど)


 まぁ俺は前世の頃からストーリーを進める為に仕方なく他のヒロインの好感度をプレゼントとかそういうのである程度上げて、一回だけセックスして進めていたからか……一周目ではほぼノエルルートを攻略をする事は不可能だって言われてたのを、一周目で攻略したけどさ。


 だって……なんかさぁ、浮気みたいじゃん? 罪悪感凄すぎて背徳感どころじゃなくて萎えたし。俺は昔から食べ物でも趣味でも、好きになったものに対して一途なんだよ、食べ過ぎて飽きたりとかは1回も無い。


 それでそんな絶対に俺が飽きたりしない率と共に俺からの好感度が100%なノエルはいきなりの音にビクッてしてて、心の中でノエルに謝る。ごめんな、驚かせちゃったな……。


 それはそうとして、驚いてるノエルも可愛い!! この場において唯一の癒しだな……やっぱりノエルは地獄に舞い降りてきた可愛い俺の天使だ、浄化しそう。賛同するのがクズ相手だからあんましたくないけど、ノエルにチ○コ突っ込みたいのは正直分かる。すげぇ分かる。


 でもいくらノエルが可愛いからって──。



「俺以外がノエルで想像すんじゃねぇよ、お前の口に氷ブチ込むぞ? ……いいからさっさと要件言えよ、お前がキモいせいでノエル吐きそうになってんだろ」



 殺意を込めながらそう言うとクズの股の間から汚い黄金水が放出され、兵士達が「貴様ッ!!」と言いながら俺に槍を向けてくる。けど、それはただの鉄製の槍だ。毒魔法のシアン(魔法で作りだした酸性の溶解液)でその鉄を一瞬にして溶かせばそれは武器として使えなくなる。


はぁ、汚ぇな……いい大人だろ? 何漏らしてんだよ……あぁ側室の子、それ直接その汚い竿から飲まないでくれよ頼むから。でもそれを自らやろうとしてるあたり、普段からこれはやらされているんだろうな。……流石に俺でも吐き気がする、ノエルがこんなの見たら絶対に吐いてた。


 それよりも、俺の大切なノエルにそんな扱いしようと少しでも考えた目の前のクズが、本当に殺したくてたまらない。



「お、おおおお前に勇者として世界を救う為の命令を下す。来年から、更なる力の会得としてこのフェリラ一番の学校へ入学しろ」



 どうせ他に女作るキッカケを与えようとでも思ってるんだろ。丁度このクズの娘も来年から入学する年齢だし、もし結婚でも何でも子供でもできればいいからな。でも……。



「もちろん、ノエルと一緒に行ってもいいんだよな?」


「な、何馬鹿げたことを言うか!! そこは数多くの王族や名の知れた貴族が通う、私も過去に卒業した歴史ある学校だぞ!! 由緒正しい家の生まれでも、大富豪の商人の娘でもない平民風情が──」



「いいよな?」



 全く意味をなさない王としての威厳と威圧を出すクズに、俺は殺気をモロにぶつけながらそう聞くとそいつはただ頭を縦に振った。よし、さっさとこんなとこ出ていくか。


 いやぁ、本当にこの世界の勇者には呪いとかが効かなくて良かった~! もしそうじゃなかったら、王族とか近衛騎士とか王宮魔道士以外は魔法が使えないからな。お互い"穏便に良い話し合い"ができてよかった! 



「じゃあ学費とか食費、学校生活でかかったありとあらゆるお金は全部諸々言い出しっぺの王様が払うってことで! あぁそれと……ノエルに手を出す男は皆滅べばいいと思ってるから、そこんところちゃ~んと覚えとけよ? 


 懸命愚か偉大卑小な王様」



 俺はそう言うと転移魔法・ムーヴィで転移してノエルと家に帰った。



「体調は大丈夫か?」


「……もう太った薄らハゲおじさんの事を直視できないかもしれない」



 あの地獄はノエルに結構なトラウマを与えたようで、その日はずっと元気が無くて俺は凄く連れてきた事を後悔した。


 いくらあの王様が小物だからって、もし兵や権力を使ってきたら俺はノエルや未来のお義父さんお義母さん、まだ産まれてない義理の妹か弟を絶対に守り切れる自信が無い。とりあえず今回はその難攻不落とも言われる温室育ちで、直接的に一度も殺意をぶつけられた事が無い王様に「殺されるかもしれない」という恐怖は植え付けられた。


 ただ来年になるまで、強くなれるようにもっと鍛えとかないとな。まだ12歳だからこれから体の筋肉が発達するとはいえ……18になったら卒業と同時に旅に出なくちゃならない。


 そしたら俺の勇者としてのスキルの都合上、ノエルは俺と一緒に原作通り旅に出ないといけない。戦うのは勇者である俺だけだけど、普通に考えてノエルが巻き添えをくらったり、最悪人質にでもされたと考えると……やっぱり今からもっと原作以上に強くなっておかないとな。




 ……あ、でも学校に行くって事は、原作ではありえなかった事だよな? だってあれ学園モノじゃないし、主人公の物語が開始する前の経歴なんてノエルとの幼い頃の回想シーンしかないし。


 最初から俺はノエルだけを選ぶつもりだったけど、もしかしてそれで物語の修正力が俺にハーレムを形成させる為に、沢山の人や異性が居るであろう学校に通う事になったのか? 


 くっそー、余計な事しやがって!! まぁそのおかげで強くなるチャンスを掴めるかもしれないとはいえ……ノエルが他の男に見られて話しかけられると思うと!!! 


 でもその学校、こんな田舎に住んでる俺でも知ってるような名門学校だし、お義父さんとお義母さんが行ってたとこでどうやら寮生活を送らないといけないらしいんだぞ!? 2人から教えられたことあるんだよ、俺が個人的になんとなく気になって馴れ初め話を聞いた時に。


 俺、ノエルから離れたら死ぬ未来しか見えないけど、他の男がノエルに話しかけてるとこ見たらもっと精神的に死ぬ!!! 


 あっヤバい、今想像しちゃったじゃんか!! 俺の妄想の中のノエルに話しかける妄想の中の男!! それ以上俺のノエルに近付いたら殺す!!! 



 あー……とりあえずプロテインのプロテイン割とか、粉物プロテイン料理とか食べたり飲んだり、証拠残さずに完全犯罪できる方法とか、確実に息の根を止める方法とか、手口の分からない殺し方とか調べた方がいいな。


 それがいい、そうしよう。

















 全てはノエルといちゃラブ子作りセッ○スをして、幸せな家庭を持つ為にな!

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