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ボディビルダーは"魅せ"かけだけの筋肉

 ボディビルダーが格闘家と戦ってボロ負けする動画を見た。




 まったくおかしなものだ。あれほどの肉体を誇るのに、自分よりふた周りは小さいように見える小兵にボコボコにされる姿。滑稽にもほどがある。




 ボディビルダーと戦う小人のような戦士は、引き締まった身体で素早い身のこなしをしていた。おそらくボクシングでも習っていたのだろう。拳を顔面に近づけ身体を小さく構え、あっという間に大男の懐に侵入していた。対してボディビルダーのノロさたるや、まるで牧草を食べている牛のようだ。彼が一歩動く間にボクサーは数歩動き、さらに数発打ち込んでいる。




 差は明らか。あっという間にムキムキマンはヒザをつき、背中をつき、苦悶の表情を浮かべていた。見掛け倒しもいいところだ。やっぱりボディビルダーは見掛け倒しの筋肉でしかない。




 ――ほんとうにそう思われるだろうか?












:ムキムキになりたくないから筋トレしない? 安心してくれ、なれないから:




 よくある勘違いのひとつに『筋トレをするとムキムキになってしまう』というのがある。




 気持ちはわからなくもない。筋トレというと、みなさまイメージするのは屈強なメンズがジムで怒声をあげながらバーベルやったりダンベルやったりする光景だろう。近頃はチョコザップのような施設もあるが、ジムという言葉自体のイメージはまだこんなふう・・・・・ではないだろうか?




 で、さらなる勘違いに『筋トレをするとムキムキになれる』ってのがある。




 幻想もいいところだ。だれもがカンタンにムキムキになれるならボディビルダーという単語自体がそもそも誕生しない。え? そういうレベルじゃなくていわゆる"細マッチョ"とかにもなりたくないだって? ――安心してくれ。一般の方はそこにすらなれないんだ。だから安心して筋トレしてください。




 唐突だけど問題。ボディビルダーという単語でイメージするあのカラダ。あれを作り上げるにはどんくらいの期間、筋トレをしなけりゃならんと思いますか?




 一週間?




 いやいやひと月くらい?




 腕立て伏せを一週間繰り返せばよくね?




 さぁて、実際どんくらいやればいいんでしょう?




 一般論として、筋肉が成長したと『変化を感じる』には3ヶ月から半年ほど筋トレをすれば良いとされてます。




 変化を感じる・・・ために必要な期間です。実際に「あ、筋肉が大きくなってる!」と見てわかるレベルになるには、まあ半年以上から1年と考えてください。




 さらに、ボディビルダーのような全身筋肉ダルマレベルになるには、まあ必要なトレーニングをしっかり積み上げた上で"3年"を見積もったほうが良いでしょう。必要な、ということばには筋肉に関する知識を蓄え、食事管理し、トレーニングごとにしっかり限界まで追い込むことが含まれます。この時点で一般の方には不可能です。




 要するに、キミ自身がどのくらいの意識、頻度、重量、生活をかけてやるかによるってこと。




 筋肉は細胞です。細胞には代謝があります。理科の授業で「キミたちの身体は代謝によって入れ替わっているんだ!」って教わらなかった? 筋肉は、だいたい数ヶ月から半年で中身が入れ替わるの。で、そのときに筋肉さんが「なんかめっちゃエネルギー要るな……せや! 今までより強くなろ!」ってことでより強くなっていく。だから、筋肉がより大きくなっていく。




 この期間をざっくり考えて上記の期間が必要なの。だから筋トレしたから言うてすぐムキムキにはなれない。




 どんくらいの負荷をかけりゃいいのか? って点も重要。だって腕立て腹筋背筋スクワットごとき・・・じゃムキムキになれないもん。




 難しい話は割愛しますが、筋肉って強い負荷をかけなきゃ「より強くならなきゃ(使命感」モードに入ってくれないの。だから、筋トレヒューマンは全力に近い、まあ八割方のパワーで何回もバーベルやダンベルを持ち上げる。それを週5で数時間。仕事やらプライベートなどが重なるなか、これを3年間続けられる情熱ってなかなかないよ?




 それだけじゃなくてメシもきちんと考えてしっかり睡眠時間を確保して――ムキムキになっちゃうから筋トレはしたくない、ですか? ご安心ください、なれませんから。












:ボディビルダーは見せかけの筋肉:




 ムキムキになれないというメッセージはいいんだけど、いやいやおまえタイトル回収してないじゃないかと。




 ボディビルダーがどれほど筋肉マシマシだとしても、自分よりふた周りもちっちゃなボクサーに瞬殺されてんじゃん! 見せかけじゃん! っていう意見。




 これに対する回答は「はい・・そうです・・・・」って感じ。




 何かしら反論があると思われただろうか。それとも「ほらみろ! はい論破」となっただろうか。まあ、そういった方々も含めてちょっと読んでっていただければ幸い。




 ボディビルダーはみせかけの筋肉です。ただし漢字がちょっちちがくてね? 正しくは『魅せる』のほうなんですよ。




 彼らは身体を魅せるために鍛えてるんだ。戦うためじゃない。筋肉を大きくするにはどうすれば良いか? 全身のバランスはどの程度が良いか? その筋肉を他者に魅せるためにはどのようなポーズが良いか?




 彼らの身体は、言うなれば戦士のよう。だけどその心は「筋肉を分かち合いたい!」というピュアで、平和的で、ピースフルな精神を持っている。だから、彼らは戦うことはしない。もちろん、ボディビルダーは腕相撲や格闘などの『筋肉を使う場面』に魅力を感じることもあるでしょう。けど、その根本は筋肉そのものへの愛がある。自分が鍛え上げた筋肉が、それぞれの場面でどう躍動するかのほうが重要なのだ。




 ボディビルダーが瞬殺されて喜んでいる方々は、おそらく『筋肉に何を求めているか?』という視点が異なるだけでしょう。これを理解していただければ、ボディビルダーの良さというか凄さというか魅力が伝わるんじゃないかな? と思います。




 ボディビルダーはアスリートと違う。このふたつが同じ舞台に立つことはなく、言うなれば方向性の違いで解散するバンドみたいなものです。ってことで、それぞれの方向性を整理しておきましょう。




 アスリートは『全身の筋肉を駆使して最大限の仕事をすること』に全力を注ぐ。たとえば野球の技術練習。ボールを投げるっつーシンプルな動作でも、素人さんは「えいっ!」言うて数メートルしか投げられんのに対し、プロの選手はなーんにも考えず数十メートルぽーんと投げられる。ウデだけで投げようとする素人と比べ、プロは足から指先、なんなら体重移動などの自分の筋肉以外の部分まで利用可能だ。




 バッティングセンターで「キエエエエエエエ!!」と空振りしまくるオッサンに対し、プロの選手は「ふん!」だけで100メートルは飛ばす。身体の効率的な使い方を学べば、最低限のパワーで最大限のリターンを得られるんだね。




 一方、ボディビルダーは『ひとつの筋肉に全負荷をかけること』に全力を注ぐ。ダンベルを持ち上げるだけの動作を考える。ふつうなら反動をつけて「ヨイショ!」と腕を持ち上げるところを、ボディビルダーは二の腕だけを動かして重いダンベルを持ち上げる。非効率極まりない。




 もちろん、ある筋肉を動かそうとすれば、どうしても他の筋肉も少なからず動く。けどそれはケガ防止や、ある筋肉をより刺激するための補助的な役割をもっているだけであって、まあ、つまりはオマケ要素だと考えていただければおk。




 ボディビルダーは全身でそのトレーニングを行う。だから個々の筋出力はとんでもないことになる。アスリートが100キロのバーベルを持ち上げるのと、ボディビルダーが100キロのバーベルを持ち上げるのでは、実は"質"がものすごく違うのだ。だってアスリートは無意識レベルで複数の筋肉を使ってるんだもん。




 っていう事情もあり、アスリートがボディビルダー並の筋トレしてる姿を見ると「すげえ!」ってなるのと同時に「やっぱボディビルダーすげぇんだな」ってなる。












:ボディビルダーがアスリートになったら?:




 ボディビルダーとアスリート。このふたつは本質が異なるので分けて考えなきゃいけない。だからこそ『ボディビルダーがアスリート的トレーニングをしたら?』という妄想が膨らむ。もしボディビルダーが、その身体のままアスリートの動きや連動を身につけたとしたら……ホームランなんて片手で打てるだろう。誇張なしに。




 キミは『横川尚隆』というボディビルダーをご存知だろうか? 彼はボディビルダーの日本一を決める大会で優勝したことがあるレジェンドで、いっときはテレビ出演などで有名になりました。まあ、前置きはこれくらいにして、とりあえず映像を見たほうがわかりやすいのかもしれません。






:YouTube、トクサンTV【A&R】:


ttps://youtu.be/PiLj40dTLHo






 小学生のときにソフトボールをやり中学時代に1年ほど野球をやったそう。その後は草野球もやってない。それなのにこれ・・である。野球経験者ならこのヤバさがおわかりいただけるだろう。




 スポーツに必要な心技体。そのうち体がオーバーフローしてるボディビルダー。そんなバケモノに"技"を与えた結果がコレだよ。たぶんおそらく、ボディビルダーに1週間程度『ホームランの打ち方』を教えれば打てると思う。バッティングの基本とかどうでもいいので、とりあえず打ち方だけ教えればいい。だって身体ができてるんだもん。




 ボディビルダーがボクサーと戦ってボコボコにされる? そんなの当たり前だ。だって、その身体は魅せるために鍛えただけであって戦うために鍛えたわけじゃないもの。逆に言えば、さんざんっぱら鍛えたその身体に技術をひとつまみすれば、ボディビルダーはなんだってできる。でも彼らはそんなことしないだろう。




 だって、彼らの目的は『魅せること』なんだから。








 QOLが叫ばれる昨今、筋トレは健康増進手段としても注目されてるね。たぶん、キミもなんらかの運動習慣をもってると思う。




 ボディビルダーがやるようなアレコレじゃなくて、たとえば1日に腕立て腹筋背筋スクワットを各種10回数やるだけでもめっちゃ違う。一週間、ひと月、半年、一年先の身体はめっちゃ違う。




 筋トレしてないって方、ぜひともやってください。たかが腕立て10回でも、それが1年続けばキミの身体はめっちゃくちゃ変わる。かっこよくなる。美しくなる。魅力的になる。




 そんなキミがみたい。見たい。魅せられたい。キミの人生に幸多からんことを。

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