「さて……」
俺は立ち上がり、隣で寝ているはずのリリムを揺さぶる。
「起きろリリム」
「はい……エイジ……」
リリムもぼんやりと目を覚ました。人間の体を手に入れたら、やたら眠るなこいつ。
「夜、女神マーヤ…
「はい」
間違いない。リリムも見たという事は、昨日のあれは夢でもなんでもない。
「元の世界に帰るためにも、その女神サーラとやらを止める必要があるな」
リリムも
「そうですね。でも私たちが女神サーラを倒すには、圧倒的にデータが不足しています」
「は? データもへったくれもないだろ。村長から見せてもらった地図で、この大陸をしらみつぶしに探すしかない」
とりあえず顔でも洗って外に出るか。
外に出て新鮮な空気を吸う。アイランドの刺客を気にしなくていいなど、脱走してから初めての朝だ。
辺りを見回すと村長が声を掛けてきた。
「エイジ様、お目覚めですか? 朝食の準備が出来ていますので、どうぞ……」
「あ、ああ。ありがとう」
食材さえ用意すればリリムが用意したのに…とツッコミを言いかけて俺は堪える。
俺は村長に案内されるがままについていく事にした。
リリムは俺より先に寝室から出ていく。
「エイジ」
テーブルに着いた俺に、リリムが話しかけてきた。
「ん? どうした?」
「朝食のメニューを解析しました。パンとスープです。それとサラダも危険要素はありません」
「そうか……ってお前、そんなもんまで解析するのか!?」
今度は思わずツッコミを入れてしまった。
「毒が入っているか確認する必要がありますので」
「おいおい。ここには俺とお前と村長しかいないが。作った人が気分を悪くするような発言は控えろ」
「エイジ。あなたはこの異世界の人間が信用出来るとでも? リリムはあなたの身の安全を第一に考えています」
リリムの口調は厳しい。しかし、それは俺を思っての発言だ。
「分かったよ、リリム」
「はい」
とりあえず腹も減ってるし、腹が減っては戦は出来ぬともいう。まずは飯だ。
リリムには村の状況をデータとして俺に伝えるよう言ってあるから、今は余計な事を言わないだろう。
俺たちは村長についていき食堂に入った。ラズ村長が椅子を引くので俺はその椅子に座り、後ろにリリムが続く。
「そういえば村長。昨日国境警備は凄い手薄、みたいな事言ってたな? そこまで人手が足りないのか?」
村長は申し訳なさそうな表情で答える。
「はい……正直言えば、国境警備隊には村を2・3個も守れるくらいの力はありません……」
申し訳なさそうな表情で答える村長。
「そうなのか?」
「なら、なぜそこまで無力な警備に任せているのですか?」
おい、言葉を選べリリム。
「……人手が圧倒的に足りないのです。むしろ警備隊を率いているハイロード伯爵は本当に耐え忍んでくれています」
村長は言いづらそうだ。
「そうか。いや、警備隊の上がまともな人ならいいんだ」
「エイジ。あなたは一度も会った事もない人を信用するのですか?」
……リリムの質問も最もだ。だが、今のところ村長の言葉を疑う理由もない。人も少ない辺境に人員やインフラを回せないなんて、元の世界でも良くあった話だ。
その時である。
「ラズ村長! ミア様がいらっしゃいました!」