リリムが村長に聞く。
「ミア? 誰ですか?」
「はい、この地を収めるハイロード伯爵のご息女でして……。警備隊の隊長を務めています。エイジ様に会わせてほしい、と……」
気難しい表情をする村長だが、俺はやましい事をしたワケじゃない。ここは断る理由はないだろ。
「心配はいらない、村長さん。とりあえず会ってみる」
「ありがとうございます!」
俺とリリムは、そのミアという少女に会う事にしたのだった。
村の入り口まで行くと、そこにはウェーブのかかった美しいロングの金髪とアイドルのような整った顔立ちと碧眼、そして胸部鎧が気の毒になるほどの凄まじい爆乳の美少女がいた。
少女は俺を見るなり早速近寄ってくる。
「貴方がエイジですね。わたくしはミア・アニエール・ハイロードといいます。国王陛下より『
俺は一瞬見とれてしまったが、すぐに我に帰り返事を返した。
「あ、ああ。俺がエイジだ。隣にいる子はリリム」
「お2人の事は村長殿から伺っております。バイレーン帝国の兵士やゴブリン共から子供達を守っていただき、ありがとうございます」
ミアは深々と一礼をする。
そこはかとなく貴族特有の傲慢さは感じるものの、少なくとも他人に感謝の意を伝えられる少女なのであろう。
「いや、当然の事をしたまでだ。ああいうのはちょっと許せないんでね」
リリムが脇腹をつつき、補足説明をする。
「エイジとリリムはこちらの世界に転移した際、その責務を果たす為かこの異世界の言語は人間だけではなく、あらゆる種族と意思疎通が出来るようにしました。理由は不明です」
「そのようですね。村の人達とも会話していましたし、わたくしも貴方達との会話は問題ありません」
リリムの言葉を聞き、ミアも俺達の疑問を理解したようだ。
このミアという子も俺達の話を少しも疑問を持っていない。どうやらこの世界で俺らの世界の人間が召喚されるのは当たり前なのだろう。
「で、俺に何か用かな? 村長さんから聞いて来たんだろ?」
俺がミアに聞いてみた。
リリムが補足する。
「エイジ。彼女はあなたに興味があるようです」
興味って……まぁ俺としては悪い気はしないが……。
俺は出来るだけ冷静さを装う。
「分かったよリリム。でもお前は俺の相棒だからな」
「はい、ありがとうございます」
リリムは軽く一礼して、俺の隣にたった。
「なあ、ミアさん。村長やあなたの話っぷりから、この世界には定期的には異世界から人間が召喚されるみたいだな……?」
「ええ。全ては女神サーラ様のご意向の元に」
女神サーラ…。
「ミアさん。そのサーラって女神様とは、この世界の住民は会えるのか?」
「“声”を聞いた事はあるので、間違いなく存在しているはずですわ。最も、今まで誰も姿を見た事はないそうです。わたくしもです…」
俺は疑問をぶつけてみる事にした。
「声は聞こえど姿は見えず、か……」
一番困った状態だ。まあ本来神様なんてひょいひょい姿を現さないだろう、とは思うが。
「どういう意味ですの?」
「リリムたちはあなたの女神サーラに対する認識を知りたいのです」
「ああ……そういう事ですか。確かにこの世界に住む者なら誰でも会いたいと思うでしょうね」
リリムの質問にもミアは特に疑問を持たないようだ。やはり異世界の人間には当たり前の事なのだろう。
「けどミアさん。俺には正直女神様の依頼なんてどうでもいいんでね」
ミアは俺の答えに首をかしげる。
「お会いしたくない……ですか?」
「ああ……会う理由もない。ただ、この村と村長には恩がある。暫くはここに厄介になるつもりだ」
なるほど…やはりサーラは、この土地の者には姿を見せない、と。