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第13話:変態所長

 こうでも言わないと、リリムはまた戻って殺しかねないからな……。

俺はリリムに子供らを任せ、本館にいたもうひとつの別館に向かう事にした。若干俺は気分が悪くなる。

 そう。“アイランド”にいた時の事を思い出したからだ。試験管ベイビーと言われていた自分が『日本から誘拐されてきた』と知った時の衝撃。今でも忘れていない。

 だが今は感傷に浸っている時ではない。俺は別館に入り、バイレーン帝国に誘拐された子供達を救いに来た事を伝えるため、責任者を探す事にした。

 国単位で人さらいをするような奴らだ、黙って去ってもいい。でもどうしても確認したい事がある。


「おい! 貴様何者だ!?」


 警備兵が放った矢が俺の頭をかすめる。流石は“本丸”だ、楽に進ませちゃくれない。

 壁に刺さった矢を抜き投げ返す。


「ぎゃあああああああっ!!?」


 矢は男の太腿にグッサリと刺さった。


「大人しくしなければ次は心臓を貫くぞ。いいな?」


 俺は男を睨みつけた。

 男のケアレス・ミスは致命的だった。俺が異世界人だという事を甘く見たのだ。

 アイランドの第一級ファーストソルジャーだった俺からすれば、この世界の常人だのゴブリンだのの動きなど、コマ送りも同然だ。

 警備兵の男は俺の言葉を聞き、恐怖のあまり失禁してしまった。やれやれ……。


「単刀直入に聞く。この収容所で一番エライ奴はこの奥にいるんだな?」


 俺がそう問うと、警備兵は慌てて建物の中に入っていった。その後ろをついて行くと大きな部屋があった。


「ここは……会議室か何かか?」


「そ、そうだ…所長様はここにいる…」


「そうか。じゃあ通してもらおうか」


 俺がそう言うと、警備兵は「は、はい……」と怯えながら答えた。

 そのまま俺は部屋に入る。そして……。


「……お前が所長か?」


「だ、誰だ貴様!? 何故ここにいる!?」


 俺の問いに素っ裸の男はそう答えるが、驚いたのは俺も同じだ。

 今の俺は18くらいに見えるが、館主の男とやらもどう見ても10代だ。しかも目も髪も黒い。まさか…


「俺の名はエイジ。どうやらお前がここの所長でいいみたいだな。いくつか質問が…」


 そこまで言いかけて俺はさらに驚いた。縛られた裸の少女たちが泣いている。

 太腿から血を滴らせ、明らかに処女だったのを犯されたと分かる子もいた。しかも中には、俺たちの世界でいう中学生程度の子もいるじゃないか。

 途端に自分でも分かるくらい、血液が沸騰していくのを感じる。


「……お前がこの収容所を作った理由はこれか?」


「あ゛あ゛っ!? なんでテメーにそんな事を…」


 男は俺の前に手を翳した。恐らく魔法か何か使うつもりだろう。

 しかし───


「遅いって」


男は視界から俺が消え、声が後ろから聞こえたことを今どう思っているか。

それは俺には分からない。何故なら───


「あ……」


 男は俺に急所経穴を突かれたからだ。胸に七つの傷を持つ男の漫画の暗殺拳みたいに、人体が炸裂するワケじゃない。しかし…


「背中の急所経穴“六行ろっこう”を突いた。しばらくは痺れて体の自由は利かんぞ?」


 俺はそう言うと、崩れ落ちる男を軽く蹴飛ばした。男はそのまま壁に激突すると白目を剥く。どうやら気を失ったらしいな……。


「さてと……」


 俺が裸の少女たちに近づいた。勿論少女たちは怯えるが、床に落ちてた服を投げて渡す。


「服を着て全員外に出ろ。ミア隊長率いる国境警備隊が馬車で助けに来ているから」


 俺がそう言うと、少女たちは「え?」と驚く。


「俺はルソン村の村長とハイロード伯爵の協力者だ。キミらを助けに来たんだ」


「で、でも……」


「早くしろ! でないとそこの変態男みたいなのがまたくるぞ!」


 俺の言葉に少女の一人が慌てて服を拾い着始める。


「あの……ありがとうございます」


 裸だった子の一人が涙ぐみながら俺に礼を言うが、俺はその子の頭をポンッと叩くと、そのまま部屋を出て行く。そして……。

 再びこの変態ロリコン男とのおしゃべりタイム開始だ。

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