こうでも言わないと、リリムはまた戻って殺しかねないからな……。
俺はリリムに子供らを任せ、本館にいたもうひとつの別館に向かう事にした。若干俺は気分が悪くなる。
そう。“アイランド”にいた時の事を思い出したからだ。試験管ベイビーと言われていた自分が『日本から誘拐されてきた』と知った時の衝撃。今でも忘れていない。
だが今は感傷に浸っている時ではない。俺は別館に入り、バイレーン帝国に誘拐された子供達を救いに来た事を伝えるため、責任者を探す事にした。
国単位で人さらいをするような奴らだ、黙って去ってもいい。でもどうしても確認したい事がある。
「おい! 貴様何者だ!?」
警備兵が放った矢が俺の頭をかすめる。流石は“本丸”だ、楽に進ませちゃくれない。
壁に刺さった矢を抜き投げ返す。
「ぎゃあああああああっ!!?」
矢は男の太腿にグッサリと刺さった。
「大人しくしなければ次は心臓を貫くぞ。いいな?」
俺は男を睨みつけた。
男のケアレス・ミスは致命的だった。俺が異世界人だという事を甘く見たのだ。
アイランドの
警備兵の男は俺の言葉を聞き、恐怖のあまり失禁してしまった。やれやれ……。
「単刀直入に聞く。この収容所で一番エライ奴はこの奥にいるんだな?」
俺がそう問うと、警備兵は慌てて建物の中に入っていった。その後ろをついて行くと大きな部屋があった。
「ここは……会議室か何かか?」
「そ、そうだ…所長様はここにいる…」
「そうか。じゃあ通してもらおうか」
俺がそう言うと、警備兵は「は、はい……」と怯えながら答えた。
そのまま俺は部屋に入る。そして……。
「……お前が所長か?」
「だ、誰だ貴様!? 何故ここにいる!?」
俺の問いに素っ裸の男はそう答えるが、驚いたのは俺も同じだ。
今の俺は18くらいに見えるが、館主の男とやらもどう見ても10代だ。しかも目も髪も黒い。まさか…
「俺の名はエイジ。どうやらお前がここの所長でいいみたいだな。いくつか質問が…」
そこまで言いかけて俺はさらに驚いた。縛られた裸の少女たちが泣いている。
太腿から血を滴らせ、明らかに処女だったのを犯されたと分かる子もいた。しかも中には、俺たちの世界でいう中学生程度の子もいるじゃないか。
途端に自分でも分かるくらい、血液が沸騰していくのを感じる。
「……お前がこの収容所を作った理由はこれか?」
「あ゛あ゛っ!? なんでテメーにそんな事を…」
男は俺の前に手を翳した。恐らく魔法か何か使うつもりだろう。
しかし───
「遅いって」
男は視界から俺が消え、声が後ろから聞こえたことを今どう思っているか。
それは俺には分からない。何故なら───
「あ……」
男は俺に急所経穴を突かれたからだ。胸に七つの傷を持つ男の漫画の暗殺拳みたいに、人体が炸裂するワケじゃない。しかし…
「背中の急所経穴“
俺はそう言うと、崩れ落ちる男を軽く蹴飛ばした。男はそのまま壁に激突すると白目を剥く。どうやら気を失ったらしいな……。
「さてと……」
俺が裸の少女たちに近づいた。勿論少女たちは怯えるが、床に落ちてた服を投げて渡す。
「服を着て全員外に出ろ。ミア隊長率いる国境警備隊が馬車で助けに来ているから」
俺がそう言うと、少女たちは「え?」と驚く。
「俺はルソン村の村長とハイロード伯爵の協力者だ。キミらを助けに来たんだ」
「で、でも……」
「早くしろ! でないとそこの変態男みたいなのがまたくるぞ!」
俺の言葉に少女の一人が慌てて服を拾い着始める。
「あの……ありがとうございます」
裸だった子の一人が涙ぐみながら俺に礼を言うが、俺はその子の頭をポンッと叩くと、そのまま部屋を出て行く。そして……。
再びこの変態ロリコン男とのおしゃべりタイム開始だ。