「悪いが俺はサーラの妹マーヤに召喚されたんだ。あとお前。一応名前は聞いておこう」
「ふん! テメーに名乗る名などない!」
奴は俺の首を刎ねようと刀に手をかけようとした。が、その前に……。
「エイジ」
リリムが帰ってきた。片手に愛銃、もう片手にはバイレーンの兵士の首を持って……。
「お疲れ様です。隊長格1人を処理しました」
「……ご苦労さん」
リリムが手にした騎兵の首を見て、瞬時の男の顔が真っ青になる。
どうやら勇者の力で圧倒的に殺したことはあっても、仲間がこうなるのは思っても見なかったようだ。
あの長谷部とかいう三下の死体も、実際に自分で見たワケじゃないだろうしな。
「ま、まさか……」
騎兵の首を地面に投げ捨て、リリムは二丁拳銃を男に突き付ける。
「まさかも何も、あなたの部下は全滅です。もう残っているのはあなただけです」
男は怒りと恐怖で震えているようだった。そりゃあそうだろう。自分の部下をいとも簡単に殺されたんだものな。
俺はそろそろ本題に入る事にした。
「さてと……。じゃあ話を聞かせてもらおうか?」
「話だと!?」
「まずは君の名前、そして元の世界じゃ何者だったか。洗いざらいな」
俺は男にそう尋ねた。男はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「誰がしゃべるかバーロー!!」
いきなり斬りかかってくるとは。
しかしこんな男の一撃など、俺にはコマ送りに見える。
「な……!?」
俺は男の剣をかわして、奴の顔面に
「がっ!!」
男は馬から転げ落ちる。俺はそのまま男に近づき胸倉を掴んだ。
「君の名前と、元の世界で何者だったかを言え」
「……しつけーんだよコ゛ラァ!」
ムカッとした俺は、男の顔面に膝蹴りを食らわせる。
「ぐはっ!!」
「もう一度聞くぞ? 君の名前は?」
鼻から壊れた蛇口のように鼻血がとまらないを見て、さすがに戦意喪失したらしい。
「……だ、
「ほう。君は伊達くん、というのか。学校は?」
俺は伊達政道から詳しい話を聞く事にした。
「ほ、法知大付属高校……」
なるほど、例のエリート学校か。ということは……。
「君の同級生に長谷部健太とかいう男はいないか?」
俺の話に伊達政道は目を見開いたが、すぐに静かに頷いた。
「ああ…。俺は長谷部の仇を討ってこいって、城北工業の兵藤って奴に命令されたんだ…」
やはりそうか。エリート高は完全なタテ組織か。とにもかくにも情報収集が大事だな。
バイレーン帝国は今、エリート高の2人と城北工業の1人が“三巨頭”という形で仕切っているそうだ。この情報は今後どこかで役に立つかもしれない。
「それじゃあ次の質問。君は勇者としてどうやってこの世界に来た?」
伊達は俺の問いに対して、首をひねってこう答えた。
「し、知らない。朝のホームルームで窓の外が光って、なんかよくわからん内にこっちに来た……」
どうやら意図的に呼ばれたワケじゃなさそうだな。こりゃエリート高校は全員敵って考えた方が良さそうだな……。
「そうか……。じゃあ君にはメッセンジャーになってもらう」
俺は伊達政道の目をまっすぐ見る。こういうのでも結構威圧にはなるのだ。
「三巨頭とやらに伝えておけ。今後もまたこのルソン村に手を出したら俺の方から乗り込む、とな」
伊達政道は力なく、首を縦に振った。
「じゃあな」
俺は伊達政道の胸倉を掴んでいた手を離した。そして彼はそのまま馬に乗って去っていったのだった……。
去り際に
「テメーの
の捨て台詞も忘れなかったが。