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第19話:及ばない力を見せつける


「悪いが俺はサーラの妹マーヤに召喚されたんだ。あとお前。一応名前は聞いておこう」


「ふん! テメーに名乗る名などない!」


 奴は俺の首を刎ねようと刀に手をかけようとした。が、その前に……。


「エイジ」


 リリムが帰ってきた。片手に愛銃、もう片手にはバイレーンの兵士の首を持って……。


「お疲れ様です。隊長格1人を処理しました」


「……ご苦労さん」


 リリムが手にした騎兵の首を見て、瞬時の男の顔が真っ青になる。

 どうやら勇者の力で圧倒的に殺したことはあっても、仲間がこうなるのは思っても見なかったようだ。

 あの長谷部とかいう三下の死体も、実際に自分で見たワケじゃないだろうしな。


「ま、まさか……」


 騎兵の首を地面に投げ捨て、リリムは二丁拳銃を男に突き付ける。


「まさかも何も、あなたの部下は全滅です。もう残っているのはあなただけです」


 男は怒りと恐怖で震えているようだった。そりゃあそうだろう。自分の部下をいとも簡単に殺されたんだものな。

 俺はそろそろ本題に入る事にした。


「さてと……。じゃあ話を聞かせてもらおうか?」


「話だと!?」


「まずは君の名前、そして元の世界じゃ何者だったか。洗いざらいな」


 俺は男にそう尋ねた。男はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「誰がしゃべるかバーロー!!」


 いきなり斬りかかってくるとは。

 しかしこんな男の一撃など、俺にはコマ送りに見える。


「な……!?」


 俺は男の剣をかわして、奴の顔面に裏拳うらけんを叩き込んだ。


「がっ!!」


 男は馬から転げ落ちる。俺はそのまま男に近づき胸倉を掴んだ。


「君の名前と、元の世界で何者だったかを言え」


「……しつけーんだよコ゛ラァ!」


 ムカッとした俺は、男の顔面に膝蹴りを食らわせる。


「ぐはっ!!」


「もう一度聞くぞ? 君の名前は?」


 鼻から壊れた蛇口のように鼻血がとまらないを見て、さすがに戦意喪失したらしい。


「……だ、伊達だて政道まさみち……」


「ほう。君は伊達くん、というのか。学校は?」


 俺は伊達政道から詳しい話を聞く事にした。


「ほ、法知大付属高校……」


 なるほど、例のエリート学校か。ということは……。


「君の同級生に長谷部健太とかいう男はいないか?」


 俺の話に伊達政道は目を見開いたが、すぐに静かに頷いた。


「ああ…。俺は長谷部の仇を討ってこいって、城北工業の兵藤って奴に命令されたんだ…」


 やはりそうか。エリート高は完全なタテ組織か。とにもかくにも情報収集が大事だな。

 バイレーン帝国は今、エリート高の2人と城北工業の1人が“三巨頭”という形で仕切っているそうだ。この情報は今後どこかで役に立つかもしれない。


「それじゃあ次の質問。君は勇者としてどうやってこの世界に来た?」


 伊達は俺の問いに対して、首をひねってこう答えた。


「し、知らない。朝のホームルームで窓の外が光って、なんかよくわからん内にこっちに来た……」


 どうやら意図的に呼ばれたワケじゃなさそうだな。こりゃエリート高校は全員敵って考えた方が良さそうだな……。


「そうか……。じゃあ君にはメッセンジャーになってもらう」


 俺は伊達政道の目をまっすぐ見る。こういうのでも結構威圧にはなるのだ。


「三巨頭とやらに伝えておけ。今後もまたこのルソン村に手を出したら俺の方から乗り込む、とな」


伊達政道は力なく、首を縦に振った。


「じゃあな」


 俺は伊達政道の胸倉を掴んでいた手を離した。そして彼はそのまま馬に乗って去っていったのだった……。


去り際に


「テメーのツラは憶えたからな! ゼッテーぶっ殺してやるっ!!」


の捨て台詞も忘れなかったが。

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