「っ!」
俺は軽く構えをとった。しかしその時、奴が跳ぶ。それは垂直に5メートル以上飛び上がり……空中で一回転し俺の真上に来る。
「!?」
奴は落下しながら剣を振り下ろす。
キィィィン!!と甲高い音が鳴り響いた。そして……。
「うおっ!?」
鎧の隙間を縫って刺さった首の根元の針矢の痛みに、ようやく気が付いたようだ。
「そこは
俺は奴に諭すように言った。だが……。
「う、うるせえええ!!」
怒りに身を任せて突っ込んで来た。だがまあ無謀だ。俺は軽くかわす。
すると奴は俺のすぐ横を通り過ぎ、そのまま地面に激突した。さらに頭から突っ込む形で滑っていき頭を強く打ったようだ。過呼吸を起こしている状態だ、こうなるのは分かっている。
脳震盪を起こして動けなくなっているみたいだが、まだ意識はあるらしい。最早呼吸が困難になっているのに、まあ頑張るな。
「ぐ……くぞ……」
「さてどうする?このまま死ぬか?」
「……っ」
悔しそうに歯ぎしりしながら、俺を睨みつける。
「俺は……こんなところで死ぬわけにはいかねえんだ……」
「なんでだ?」
俺が尋ねると、奴はふんぞり返りながら言う。
「なんでかって?そんなん決まってんだろ! テメーをやらなきゃ俺が殺られるっ!?」
「…じゃあ今死ね。100%俺には勝てないんだから、逃げ帰って連中に殺られるのも一緒だろ」
勇者っぽい大男に名前も聞かず、俺は肝臓を抉ってトドメを刺した。
「あ、ああ……俺は……まだ……」
奴は何か言いかけたが、そのまま息絶えた。
これでバイレーンは終わりだ。あとはあの毒ガスを食らった奴らがどうなるかだが……。
一時間後。いくらなんでももうガスも霧散しただろう。
リリムの案内により村人と子供たちがやって来た。
「エイジ様!」
村人の一人は俺に駆け寄ると、俺の両手を取り涙ながらに礼を言った。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!!」
村人はそれしか言わなかったが、敵の軍勢の餌食となりかけていた者達だろう。余程怖い思いをしたに違いない……。まあ俺だって死にたくはないしな。
「どういたしまして。皆を救えてよかった」
俺がそう言うと、村人たちから歓声が上がった。これでもう村は大丈夫だな……。俺はうんうんと頷いた。
さて…。こうなった以上、敵がますますちょっかいをかけてくるのは、目に見えている。
それを防ぐためにはどうすればいいか。
「エイジ、バイレーンに乗り込むのですか?」
リリムが俺の前に来て覚悟を問う。俺は頷き返した。
「ああ、奴らの大将の首を落として終わらせる」
「しかし……向こうには勇者が何人もいます。いくらエイジとはいえ……」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
「……分かりましたわ。ではわたくしも同行します」
ミアの表情から拒否は許さない、といった意志が汲み取れる。まあ
「じゃあ、行くか!」
俺は馬車に飛び乗る。ミアとリリムも馬車に乗り込んだ。
そういえばリリムの銃の弾丸…在庫もつだろうか。