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第28話:また勇者が現れた!

 俺がいざ動こうとすると、リリムが待ったをかけた。


「待ってくださいエイジ。この先に罠があるかもしれません」


 確かにその可能性は高いだろう。だが……。


「じゃあどうするんだ? このままバイレーンの大将気取った勇者共を倒さないと、また連中に家畜や女子供を略奪されるぞ?」


 そんな事になった日には、ハイロード領はいずれ滅んでしまう。それはなんとしても阻止しなければならないのだ。俺はそう力説したのだが……。


「とにかく、城をくまなく見つけたら行きつくだろ。俺が来たんだ。逃げ出すとは思えん」


「そうかもしれませんが、用心はしましょう」


 リリムも食い下がる。まあ仕方ないか……。俺は頷くとそのまま歩き出した。だがその時だった。足元に矢が刺さる。


「言っておくが。今外したのはわざとだ」


 なんだこいつ? 随分余裕だな。


「俺は川面かわづら紘一こういち。テメーを殺すよう言われてきた」


 川面紘一と名乗った男は、そう言うと剣を構えた。


「ほう。聞いてもいないのに名乗ってくれるのはありがたいな」


「だろ? サービスいいだろ俺?」


「で? どうやって俺を倒すつもりだ?」


 俺がそう聞くと奴は答えた。


「……こうするんだよ!」


 奴が斬りかかってくる。だが遅いな。余裕で避けられるぞこれは。


「ふんっ!」


 奴の剣は空を切ると地面に突き刺さった。あまりに深く刺さり過ぎたのか、そのまま動かなくなる。


「遅すぎて話にならんな」


 俺は背後から右脚爪蹴右回し蹴りをかます。なまじ振りむこうとしたせいで、顔面にモロに入った。

そのまま川面くんとやらは、地面に倒れる。


「ぐあっ!?」


 俺は奴の髪を鷲づかみにして、引き起こした。


「で、どうする?」


 俺が尋ねると奴は答えた。


「く……殺せ」


「いやいや、そうはいかん。色々聞きたい事もあるんでな」


 俺はそう言うと奴を縛り上げ、そのまま引きずった。


「さて……リリム」


「はい?」


「こいつにはこれから色々聞きたいと思う。リリムだったらまず何を質問する?」


「そうですね……。まずはバイレーンの勇者が全員で何人か、です」


 なるほど。確かに俺はまだこの世界に来て日が浅い。勇者じゃないと分からない情報もたくさんある。

 この川面とかいう男から、いろいろ聞き出す必要があるな。


「えーと。お前川面くんだったか。勇者の一人で間違いないんだな?」


 俺が尋ねると、川面は鼻を鳴らす。


「ふん。そうだ、バイレーンの勇者だ。何を今更…」


 ふむ……なるほど。つまりこいつは勇者一味で間違いないな。なら……。


「じゃあ質問の続きだが、お前ら勇者は大体何人くらいだ?50人程度なのか?」


 そう聞くと奴は笑った。まるで人を馬鹿にしたような顔で、俺を嘲笑する。


「……それを聞くのか? 俺が素直に教えると思うのか?」


 なるほど。やはりそうくるか。


「嫌でも答えたくなるようにしてやる」


 俺は胸の中央にある急所経穴“華蓋かふた”を突いた。


「あが…あがあああああっ!?」


 今こいつは胃を掴まれてシェイクされてるような、そんな激痛に襲われているだろう。


「わかったか? これ以上痛い思いしたくなければ質問に答えろ」

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