俺がいざ動こうとすると、リリムが待ったをかけた。
「待ってくださいエイジ。この先に罠があるかもしれません」
確かにその可能性は高いだろう。だが……。
「じゃあどうするんだ? このままバイレーンの大将気取った勇者共を倒さないと、また連中に家畜や女子供を略奪されるぞ?」
そんな事になった日には、ハイロード領はいずれ滅んでしまう。それはなんとしても阻止しなければならないのだ。俺はそう力説したのだが……。
「とにかく、城をくまなく見つけたら行きつくだろ。俺が来たんだ。逃げ出すとは思えん」
「そうかもしれませんが、用心はしましょう」
リリムも食い下がる。まあ仕方ないか……。俺は頷くとそのまま歩き出した。だがその時だった。足元に矢が刺さる。
「言っておくが。今外したのはわざとだ」
なんだこいつ? 随分余裕だな。
「俺は
川面紘一と名乗った男は、そう言うと剣を構えた。
「ほう。聞いてもいないのに名乗ってくれるのはありがたいな」
「だろ? サービスいいだろ俺?」
「で? どうやって俺を倒すつもりだ?」
俺がそう聞くと奴は答えた。
「……こうするんだよ!」
奴が斬りかかってくる。だが遅いな。余裕で避けられるぞこれは。
「ふんっ!」
奴の剣は空を切ると地面に突き刺さった。あまりに深く刺さり過ぎたのか、そのまま動かなくなる。
「遅すぎて話にならんな」
俺は背後から
そのまま川面くんとやらは、地面に倒れる。
「ぐあっ!?」
俺は奴の髪を鷲づかみにして、引き起こした。
「で、どうする?」
俺が尋ねると奴は答えた。
「く……殺せ」
「いやいや、そうはいかん。色々聞きたい事もあるんでな」
俺はそう言うと奴を縛り上げ、そのまま引きずった。
「さて……リリム」
「はい?」
「こいつにはこれから色々聞きたいと思う。リリムだったらまず何を質問する?」
「そうですね……。まずはバイレーンの勇者が全員で何人か、です」
なるほど。確かに俺はまだこの世界に来て日が浅い。勇者じゃないと分からない情報もたくさんある。
この川面とかいう男から、いろいろ聞き出す必要があるな。
「えーと。お前川面くんだったか。勇者の一人で間違いないんだな?」
俺が尋ねると、川面は鼻を鳴らす。
「ふん。そうだ、バイレーンの勇者だ。何を今更…」
ふむ……なるほど。つまりこいつは勇者一味で間違いないな。なら……。
「じゃあ質問の続きだが、お前ら勇者は大体何人くらいだ?50人程度なのか?」
そう聞くと奴は笑った。まるで人を馬鹿にしたような顔で、俺を嘲笑する。
「……それを聞くのか? 俺が素直に教えると思うのか?」
なるほど。やはりそうくるか。
「嫌でも答えたくなるようにしてやる」
俺は胸の中央にある急所経穴“
「あが…あがあああああっ!?」
今こいつは胃を掴まれてシェイクされてるような、そんな激痛に襲われているだろう。
「わかったか? これ以上痛い思いしたくなければ質問に答えろ」