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第33話:婚約者が現れた!

「もう一度言う。賊でないのなら馬車から降りろ!!」


 偉そうな奴だな。


「…アレッサンドロ・バイアーノ」


 ボソリとミアが呟く。


「…知り合いなのか?」


「お父様がエイジに家督を継がす事を決意にしたのは、あの男のせいです」


 ……ああ。執事さんやメイド長さんが言ってたミアに結婚迫っている男って、こいつか。


「心配するな。ミアは俺が守る」


 馬車を降りながらミアを安心させるために一言言うが、顔を赤らめるミア。

 対照的にリリムが汚物でも見るような目で、俺を見ている。感情ないって嘘だろうこいつ……。

 とにかくこのバイアーノとかいうキザ男を何とかしないとな。

 しかし騎士のお嬢様に『賊じゃないなら馬車から降りろ』か? 映画や漫画じゃあるまいし、どういう理屈なんだか。


「エイジ、どうします?」


 ああ、これね。俺が決めろってか? 面倒臭いなぁ……。


「まあ、ここは言う通りにしよう。あの男を通じて、この国のエライ連中から何か聞きだせるかもしれん」


 正直バイレーンの横暴にどうして対処しないのかとか、聞きたい事は山ほどあるしな。

俺はミアとリリムに馬車を降りるよう促し、バイアーノの前まで歩いて行った。


「俺の名はエイジ。エイジ・ハイロードだ」


「とにかく貴様ら2人、俺達に同行しろ。大臣に謁見してもらう」


「……断る」


 このバイアーノとかいう男って、ひょっとして馬鹿か?

 俺がそう思うのは理由がある。まず一つに、俺たちはマーヤの頼みで勇者に喧嘩を売っているのだ。この国のへっぴり腰な大臣共に会う理由も暇もない。

 現に俺とリリムが数日で調べたバイレーンの内情も、全く把握してないのだろう。


「何?」


「聞こえなかったのか? 断ると言ったんだ」


 俺は踵を返して敢えてバイアーノを無視する。


「行こうミア、リリム。勇者に対する対策と、これからの行動も話し合いたい」


「そ、そんな……!?」


 バイアーノが焦りだす。しかし今度はミアの冷淡な声がそれを遮った。


「分かりました。それではエイジとリリムには及びませんが、わたくしも尽力いたします」


「お、おい待て! 勇者と何をしようとしている!? 聖騎士シュバリエである俺に国益に反することを秘密にするとは、タダでは済まさんぞ!?」


 ……白い鎧から想像はしていたが。こいつもミアと同じ聖騎士なのか。こんな阿呆でもなれるものなのか?


「ほう? これは珍妙だな。貴様のようなどこの馬の骨とも分からぬ輩の姓が、ハイロード伯爵と同じとはな」


「珍妙も何も、エイジはハイロード家の家督を正式に受け継いだのです。後見人はわたくしです」


 一瞬にしてバイアーノの表情が険しくなる。


「家督はその家の子息が継ぐものだ。ミア、君もジョークを言えるようになったとはね」


「子息が継ぐなど、法令で定められている訳ではないでしょう。そしてわたくしもエイジが家督を継ぐ事に不満はありません。お分かりかしらアレックス?」


 バイアーノは鼻で笑った。


「俺は国王陛下より密命を受け、ハイロード家に出入りしているおかしな連中とやらを視察しにここまでやってきたのだ」


 ……国王は嘘だろう。一国の王がそんなことにわざわざ首を突っ込み、密命なんか出すか。こいつがミアにベタ惚れしているのは分かる。居ても立っても居られなくなって、俺とリリムを見に来たんだろうよ。

 俺はそう判断したが、バイアーノは全く納得していないようだ。


「おい」


バイアーノが馬上から俺たちに剣を向ける。


「とにかく貴様ら2人、俺達に同行しろ。大臣に謁見してもらう」


「……断る」


 このバイアーノとかいう男って、ひょっとして馬鹿か?

俺がそう思うのは理由がある。まず一つに、俺たちはマーヤの頼みで勇者に喧嘩を売っているのだ。この国のへっぴり腰な大臣共に会う理由も暇もない。

 現に俺とリリムが数日で調べたバイレーンの内情も、全く把握してないのだろう。


「何?」


「聞こえなかったのか? 断ると言ったんだ」


 俺は踵を返して敢えてバイアーノを無視する。

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