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第二章:いざ、勇者を探しに

第37話:いざ、ラミエルへ

 翌朝。訝し気に俺たちを睨むリリムを後目に、バイレーン王国の下を突っ切るルートを選んだ。 

やはり道なき道を進むより、比較的安全な方がいい。それに、バイレーンの貴族やら商人の馬車が残したわだちも残っているだろうしな。

 勇者が逃げ出したことでバイレーン王国を陥れた混乱も鎮火したし、まあ横切るくらいでは恨まれはしないだろう…と思いたい。

 俺たちはバイレーンを抜け、東に位置するラミエル王国を目指す。


「リリム。ここからラミエル王国まではどれくらいだ?」


 俺は御者席で地図とにらめっこしているリリムに聞く。


「……そうですね。このままペースで行けば4日ほどです」


「そうか……」


 4日か……まあ、それくらいはかかるよな。


「でもエイジ。時間かかるのであれば大森林を突っ切っては?」


 リリムは気軽に言うが、それが出来るなら最初からそうしてる。

 いくら彼女が聖騎士とやらでも、俺の第一級ソルジャーには足元には及ばないだろうから。


「勘弁して下さいリリム。とにかくもう、あの森はご勘弁願いたいですわ」


 バイレーンに入国する前に、ミアはげっそりした表情で言う。


「…あの森で何かあったのか?」


 俺は思わずミアに聞いた。


「あの森が、魔物の巣なのはご存知ですよね?」


「ああ。リリムと一緒にゴブリンだったかに襲われた」


 子供たちを助けたあとの、小学生のような体格の緑の小鬼ども。忘れもしない。


「それでですね。その、あの森は実は……」


 ミアが言いづらそうに口を開く。


「オークや人狼などもいる、非常に危険な森なのです」


 そうだったのか。ゴブリンだっけ?50匹ぐらいで襲いかかられても、別にどうってことないけどな。

 てかあんなのしかいないなら、森を突っ切った方が早くないか?

 あ、馬が襲われたら可哀想だしな…。

 それにミアの態度から察するに、どうやらあの森にはいい思い出がないらしい。

 馬にもある程度の防具を付けさせなきゃならないし、森は諦めるしかないか。


「よし。最初の予定通りバイレーンを突っ切るか」


 俺はリリムとミアに言う。


「……そうですね。それがいいと思います」


 問題なのはミアがアンデルシア公国の貴族の娘ということ。

 いや、ハイロード家の家督を継いだ俺もやばいが。


「いや、お前さっきから何を悩んでいるんだ?」


 俺がリリムに聞くと彼女は地図とにらめっこしながら、口を開いた。


「そもそもアンデルシアの貴族令嬢であるミアを連れた一行が、大手を振ってバイレーンの横切れるか?という疑問もあります」


「結局お前はどっちなんだよ。そろそろバイレーンも近い。早く決めないと…」


「危険度の低さはバイレーンです」


「じゃあバイレーンでいいだろう。突っかかってくるヤツがいたら、叩きのめしてやるだけだ」


 俺はリリムに『これ以上の討論は結構だ』と暗に告げる。


「分かりました。ではバイレーンに行きましょう」


 リリムがそう決断すると、馬車は速度を上げた。


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