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第39話:ドワーフがいるようだ

「え!? 弾丸!?」


「まあ、ラミエルで作ってもらえなければバイレーンで頼むしかないけど」


「いえ、そうではなくて……」


 ミアが口籠る。


「リリムの銃は魔法銃ではないのですか?」


 俺は少し考えてから口を開いた。


「違うよ。俺たちの世界の銃は、最大16発までしか装填出来ないんだ。リリムの予備の弾丸がそろそろ底をつくんでな」


「……分かりました。ラミエルについたらわたくしが交渉しましょう」


「ああ、頼む」


 俺は再び馬車を走らせる。

 バイレーンを出発してから4日目の朝。ラミエルに到着した。


「おお……これは……」


 ミアによると4つの国の中で最も文明が発達し、最も人口が多いというだけあるな。

 建物はアンデルシアのような中世ヨーロッパ風だが、人々の服装はまるで神話時代の日本だ。


「エイジ。ラミエルの言語は?」


 リリムが俺に聞く。


「ああ、問題ない。普通に日本語に聞こえる」


 やはりだ。言語は全く問題ない。バイレーンでもそうだった。これも摩耶さんにもらった力のおかげか。


「さあ、とりあえず宿を探しましょう」


 ミアが歩き始める。


◇◆◇◆◇◆◇


 しばらく歩くと宿屋街に来た。

 ここから馬車で10分圏内に、5軒の宿屋があるらしい。

 なるほど。人間の他にファンタジー映画に出てくる耳の尖った肌の白いイケメンや美女、腕毛の凄いゴツイずんぐりむっくりなおっさんなどもいる。

 改めて“亜人の多い国”というのを実感した。


「なあ、ミア。エルフって言うんだよな? あの耳の長い人種…」


「エルフですか?ええ、彼らは本来は森に済む妖精族です」


 ふーん。なんかアンデルシアにもいたな。森を守護する一族とか。


「あのずんぐりむっくりはドワーフでいいんだっけ?」


「エイジ。ドワーフと聞くと大抵の人間は『髭もじゃで背の低いおっさん』を思い浮かべるでしょうが、それは間違いです」


「え? 違うのか?」


 まさかリリムから指摘が来るとは。


「ええ。ドワーフは女性も毛深いのですし髭を生やしています。また背の高さは人間やエルフとそう変わらない者もいますし、中には女性でも大柄の者もいます。そして彼らは総じて酒好きであり、鍛冶職人としての腕は一級品です」


 なるほどな……。俺はその手の事には詳しくない。さすがスーパーAIだなリリム。


「では、宿を探そうか。馬車ごと預かってくれる…」


 俺は2人に言う。

 ミアが馬車の荷台から自分の荷物を下ろしている最中、リリムと俺は馬車の中で今後のことについて話した。


「リリム、ドワーフに弾丸が理解出来るだろうか」


「それについてはミアがやってくれるはずです」


「そうか。じゃあ、とりあえずミアの交渉が終わるまで待つか」


「はい。ところでエイジ」


「ん?」


 リリムが俺を見る。


「貴方も自分の武器を作ってもらっては?」


「え? 俺はいいよ。武器なんて持たない方がやりやすいし……」


「いえ、何でもでもいいので武器を作ってもらって下さい。そのほうが身の安全を確保出来ます」


 リリムの表情は真剣だ。そもそも笑う事自体滅多にないが。


「…この世界でヌンチャクやトンファーや三節棍が通じるだろうか」


「いざとなったらリリムが設計図を描きます」


「分かった分かった。明日にしよう。とにかく今日は宿で休もう」


 俺はリリムに言った。


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