「え!? 弾丸!?」
「まあ、ラミエルで作ってもらえなければバイレーンで頼むしかないけど」
「いえ、そうではなくて……」
ミアが口籠る。
「リリムの銃は魔法銃ではないのですか?」
俺は少し考えてから口を開いた。
「違うよ。俺たちの世界の銃は、最大16発までしか装填出来ないんだ。リリムの予備の弾丸がそろそろ底をつくんでな」
「……分かりました。ラミエルについたらわたくしが交渉しましょう」
「ああ、頼む」
俺は再び馬車を走らせる。
バイレーンを出発してから4日目の朝。ラミエルに到着した。
「おお……これは……」
ミアによると4つの国の中で最も文明が発達し、最も人口が多いというだけあるな。
建物はアンデルシアのような中世ヨーロッパ風だが、人々の服装はまるで神話時代の日本だ。
「エイジ。ラミエルの言語は?」
リリムが俺に聞く。
「ああ、問題ない。普通に日本語に聞こえる」
やはりだ。言語は全く問題ない。バイレーンでもそうだった。これも摩耶さんにもらった力のおかげか。
「さあ、とりあえず宿を探しましょう」
ミアが歩き始める。
◇◆◇◆◇◆◇
しばらく歩くと宿屋街に来た。
ここから馬車で10分圏内に、5軒の宿屋があるらしい。
なるほど。人間の他にファンタジー映画に出てくる耳の尖った肌の白いイケメンや美女、腕毛の凄いゴツイずんぐりむっくりなおっさんなどもいる。
改めて“亜人の多い国”というのを実感した。
「なあ、ミア。エルフって言うんだよな? あの耳の長い人種…」
「エルフですか?ええ、彼らは本来は森に済む妖精族です」
ふーん。なんかアンデルシアにもいたな。森を守護する一族とか。
「あのずんぐりむっくりはドワーフでいいんだっけ?」
「エイジ。ドワーフと聞くと大抵の人間は『髭もじゃで背の低いおっさん』を思い浮かべるでしょうが、それは間違いです」
「え? 違うのか?」
まさかリリムから指摘が来るとは。
「ええ。ドワーフは女性も毛深いのですし髭を生やしています。また背の高さは人間やエルフとそう変わらない者もいますし、中には女性でも大柄の者もいます。そして彼らは総じて酒好きであり、鍛冶職人としての腕は一級品です」
なるほどな……。俺はその手の事には詳しくない。さすがスーパーAIだなリリム。
「では、宿を探そうか。馬車ごと預かってくれる…」
俺は2人に言う。
ミアが馬車の荷台から自分の荷物を下ろしている最中、リリムと俺は馬車の中で今後のことについて話した。
「リリム、ドワーフに弾丸が理解出来るだろうか」
「それについてはミアがやってくれるはずです」
「そうか。じゃあ、とりあえずミアの交渉が終わるまで待つか」
「はい。ところでエイジ」
「ん?」
リリムが俺を見る。
「貴方も自分の武器を作ってもらっては?」
「え? 俺はいいよ。武器なんて持たない方がやりやすいし……」
「いえ、何でもでもいいので武器を作ってもらって下さい。そのほうが身の安全を確保出来ます」
リリムの表情は真剣だ。そもそも笑う事自体滅多にないが。
「…この世界でヌンチャクやトンファーや三節棍が通じるだろうか」
「いざとなったらリリムが設計図を描きます」
「分かった分かった。明日にしよう。とにかく今日は宿で休もう」
俺はリリムに言った。