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第40話:ドワーフのおっさん

「はい」


 リリムは頷く。

 俺たちは馬車をラミエルの宿の前に止めると、馬の世話は宿御者に任せて宿の中に入った。

 中は結構広くて清潔感がある。とりあえず泊まる部屋の交渉をしにカウンターに行ったら……。


「ご予約はされてますでしょうか?」


 受付の若い女が俺たちを見て言う。どうやらここの従業員らしい。


「いや? してないが……」


 俺が言うと女性は少し困った表情をした。


「ご予約をされないとなると、追加料金が発生しますが……」


 ほう……。


「おいくらです?」


 ミアが言うと受付の女性は紙に金額を書いて提示する。なるほど、3人で一泊21万ルーンか……。

 これが高いのか安いのかは、この世界の住民ではない俺には分からないが……。


「分りました。では3人分の宿賃を先に払っておきますわね」


 ミアは空間倉庫から金貨の入った巾着袋を出して、カウンターに置いた。

 21万ルーン払っても、まだ100万ルーン以上余裕がある。

 やはり貴族のご令嬢なだけあって、金は持っているんだな。


「…なあリリム。あの金貨、どう見ても金だよな?」


「はい。原子番号79番。原子量196.966569の金です。しかも極めて純度が高いです」


 こっそりスキャン結果を報告するリリムだった。


「ありがとうございます」


 受付の女性が金貨を巾着袋にしまい込む。


「ではご案内しますね」


 女性はカウンターから出てきて、俺たちを先導する。

 俺たちは女性に案内された部屋に入った。


「ではごゆっくり」


 そう言って女性はドアを閉める。

 俺はベッドに腰掛けてため息をついた。


「疲れたか?」


 とリリムに聞いたが……。


「……いいえ?別に……」


 とリリムは答える。


「まあ、そうか……」


 ミア、リリムと別れると俺もまたベッドに寝転んだ。

 リリムとミアが泊まる部屋も同じ作りらしいので、あの2人は今頃ゆっくりしてるのだろう。

 明日は武器作り、そしてこのラミエルに逃げた勇者を見つけ出して殺すか…。

 俺の意識はゆっくりとフェードアウトした。


◇◆◇◆◇◆◇


「んっ……?」


 俺は目を開けて伸びをする。外は既に明るい。どうやらもう昼近いらしいな。


「おはようございます、エイジ。入ってよろしいですか?」


「ああ、おはよう……。構わない」


 この世界に来てから、本当にぐっすりと寝られる日が続いている。

 アイランドからの刺客を気にしなくていいのだから、それも当然か。


「失礼致します」


 ドアが開くと、既に外出着に着替えたミアが部屋に入ってきた。


「お出かけか?」


 俺が聞くとミアは頷く。


「ええ。エイジの仰っていた武器の注文をしようと思います。エイジはどうします?」


「そうだな……」


 少し考えた後、答えた。


「俺も行く」


「分かりました」


 俺はベッドから出て服を着替える。リリムは起きて外で待機していた。

 3人で宿を出て、通りをしばらく歩くと一軒の鍛冶屋を見つけた。


「いらっしゃい」


 ドアを開けて中に入ると、カウンターに中年の男が座っていた。


「今日はどのようなご用件で?」


 男が俺たちを見て聞いた。やはり髭を蓄えた背の低いずんぐりむっくりなおっさんだ。耳が尖っているのも特徴の一つか。

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