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第45話:勇者とエンカウント・4

「ふ~ん……どうします? エイジ」


 ミアが聞いてくる。当然、聞かれたらヤバいので小声だ。


「そうだな。勇者がこれだけいるんだ。一気に打ち取りたいが…」


 店や他のに迷惑をかけたくないのが本音だ。

 そんなことをしたらこの世界で迷惑をかけまくってる勇者共と、何も変わらない。


「確かにそうですけど……」


 ミアは不満気に唇を尖らせた。どうやらミアはここで一気にカタを付けたかったらしい。


「今は連中の顔を良く憶えておくんだ。但しあまりチラチラ見るなよ」


「それでは席を変えません? ここではどうしても不自然になりますわ」


 ミアの提案は一理ある。


「そうだな…じゃあ席を変えるか」


 エイジは、少し離れたテーブルから2つほど離れたテーブルに席を移す事にした。


(よし、ここなら目立たないな)


「すいません、隣いいですか?」


 俺とミアが腰を下ろしたそのテーブルには3人の『勇者』達が座っていた。

 一人目は身長155㎝くらいのロングヘアーの美少女だ。


(血のニオイがする…持っている剣をロクに手入れしてないな、この女…)


 会話を聞いていると、どうやら剣道部に所属していたらしく、鋭い目つきが印象的だ。

 名前は…高宮というのか。

 2人目は身長170cmくらいの、いかにもスポーツマンといった体付きの男。


(こいつはダメだな……)


 3人目は身長180cmくらい。細マッチョで、髪を逆立てている男だ。

 名前は西城正樹。

 この2人を見て、エイジはそう判断した。


「あのー……」


 その美少女の勇者が話しかけてきたので俺は内心驚いたが、それを表情に出さずに答えた。


「はい?」


「あのさあ……。何? こっちをチロチロ見て。何か言いたい事でもあるの?」


 チ…横目で見てたのがバレたか。


「なんでもありませんよ。血のニオイが凄いから横を見たらそちらさんだった。単にそれだけです」


 俺の言葉に、高宮という少女はカチンをきたらしい。乱暴に席を立った。


「なんだ、その言い方は!? 食料が無かったからそこらの牛や豚を狩った、それの何が悪いんだ!」


 ……ああ。やっぱりそうか。俺は今確信した。コイツらは『勇者』なんかじゃないと。

 恐らくだが、召喚されたばかりの俺と同じで、生きる気力もなく惰性でこの異世界に留まっている連中だ。そうに違いない。ならば遠慮する事はないな。


「騒ぐなら店を出ようぜ。迷惑がかかる」


 ここで喧嘩始めて他の勇者に感づかれる訳にもいかないしな。


「……上等」


 高宮という少女は剣を持って、ゆっくりと俺とミアの後をついてきた。


「おいこずえ、どうしたんよ? そいつらが何かしたんか?」


「喧嘩なら俺らも加勢すんぜ」


 一緒にいた男2人が慌てておっかけてきた。なるほど。下の名前はこずえというのか。最もどうでもいいが。

 こずえという女が指差したのは、『勇者』ではなく俺だった。


「……こいつらにからまれた」


「ふーん……お前ら俺らとこずえになんの用じゃ?」


 西城正樹ともう一人の男も加勢に加わる。どうやら1対3のようだ。

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