俺は連中の一人から落ちた剣を拾う。
「な……!?」
「ひ、ひぃ……!」
ゴロリ、と音を立て床に転がる仲間の首を見てビビったのか3人目は逃げようとしたが、俺はすぐに追い付きその背中を斬りつけた。
「ぐあっ!!」
「く、くそ!」
最後の一人が俺に剣を投げつけ、入口に猛ダッシュする。
「お疲れ様です」
入口に立っていたのはリリムだった。リリムは銃を握った手を男に向ける。
「なんだよおい…!?」
すると次の瞬間、男の体は宙に舞っていた。リリムの銃口が火を噴いたのだ。
「うぐ……」
頭を撃ち抜かれた男は、そのまま脳みそを床にぶちまけた。
「終わったな」
「はい。お疲れ様です」
俺は剣を捨て、リリムとミアのところに戻った。
「ご苦労様ですエイジ。……しかし……」
リリムは廃屋の中で死んでいる勇者共を見て、やや言葉を失ったようだ。
「容赦ないですね…」
「こんな奴らに容赦なんてすることないだろう」
俺はミアを見て言う。
「見逃せばまたこのラミエルでまた好き勝手するだろうし」
「……確かにそうですね……」
ここでは自分の横暴を通せると分かったようだしな…。だからこそこの異世界で、女神マーヤは俺に託したのだろう。
「さて、と。じゃあ次の勇者を叩きに行くか」
「はい」
しかし勇者どもも学習能力がないもんだな。さっさと逃げ回ってもいいものを、わざわざ自分から挑んでくるなんて。
やっぱりこの異世界で好き勝手出来た“成功体験”がそうさせてしまっているのか。
「さて、次の勇者はと……」
俺は中腰になり窓越しに外を眺める。すると遠くを眺める俺にミアは若干引いているようにも見える。
「ああ、いたな」
「ど、どこにですか?」
俺が立ち上がり外に出ると、ミアは慌ててついてきた。
「あそこだ」
俺はミアに指差した。
「え? どこですか?」
どうやらまだ見えていないようだ。仕方ないな。俺はミアの腰に手を回し、グイッと引き寄せた。
「……っ!? ちょ……ちょっとエイジ!?」
「ほら、あれだよ」
俺が指差した方を、ミアは見ると「ああ」と納得した。
「……そういえば酒場で見ましたね」
そう、あれが次なる標的だ。俺は頷きながら言う。髪は染めてるが日本人特有の顔をしている。
一度見たら忘れられない顔だ。
「あいつの後をつけていくぞ」
「はい」
俺達は店を出て勇者の後を尾けることにした。しかし……。
「まさか一人で出て行くとは……」
俺達の予想では、2・3人程度で固まって行動するかと思っていたんだが。どうやらこいつには仲間はいないようだ。
まあ良い事ではあるな。その方が殺しやすいし、探す手間が省ける。
やがて勇者は路地に入り込み、人気のない所に入っていく。
俺は気づかれないように後を追った。
先ほどの件もあるし、ここは慎重にいくか。
勇者は誰もいない通りに着くと立ち止まり、懐から何かを取り出した。
(なんだ…?)
俺は息を殺してそれを見た。