目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第49話:一人づつ、確実に

 俺は連中の一人から落ちた剣を拾う。


「な……!?」


「ひ、ひぃ……!」


 ゴロリ、と音を立て床に転がる仲間の首を見てビビったのか3人目は逃げようとしたが、俺はすぐに追い付きその背中を斬りつけた。


「ぐあっ!!」


「く、くそ!」


 最後の一人が俺に剣を投げつけ、入口に猛ダッシュする。


「お疲れ様です」


 入口に立っていたのはリリムだった。リリムは銃を握った手を男に向ける。


「なんだよおい…!?」


 すると次の瞬間、男の体は宙に舞っていた。リリムの銃口が火を噴いたのだ。


「うぐ……」


 頭を撃ち抜かれた男は、そのまま脳みそを床にぶちまけた。


「終わったな」


「はい。お疲れ様です」


 俺は剣を捨て、リリムとミアのところに戻った。


「ご苦労様ですエイジ。……しかし……」


 リリムは廃屋の中で死んでいる勇者共を見て、やや言葉を失ったようだ。


「容赦ないですね…」


「こんな奴らに容赦なんてすることないだろう」


俺はミアを見て言う。


「見逃せばまたこのラミエルでまた好き勝手するだろうし」


「……確かにそうですね……」


 ここでは自分の横暴を通せると分かったようだしな…。だからこそこの異世界で、女神マーヤは俺に託したのだろう。


「さて、と。じゃあ次の勇者を叩きに行くか」


「はい」


しかし勇者どもも学習能力がないもんだな。さっさと逃げ回ってもいいものを、わざわざ自分から挑んでくるなんて。

 やっぱりこの異世界で好き勝手出来た“成功体験”がそうさせてしまっているのか。


「さて、次の勇者はと……」


 俺は中腰になり窓越しに外を眺める。すると遠くを眺める俺にミアは若干引いているようにも見える。


「ああ、いたな」


「ど、どこにですか?」


 俺が立ち上がり外に出ると、ミアは慌ててついてきた。


「あそこだ」


 俺はミアに指差した。


「え? どこですか?」


 どうやらまだ見えていないようだ。仕方ないな。俺はミアの腰に手を回し、グイッと引き寄せた。


「……っ!? ちょ……ちょっとエイジ!?」


「ほら、あれだよ」


 俺が指差した方を、ミアは見ると「ああ」と納得した。


「……そういえば酒場で見ましたね」


 そう、あれが次なる標的だ。俺は頷きながら言う。髪は染めてるが日本人特有の顔をしている。

 一度見たら忘れられない顔だ。


「あいつの後をつけていくぞ」


「はい」


 俺達は店を出て勇者の後を尾けることにした。しかし……。


「まさか一人で出て行くとは……」


 俺達の予想では、2・3人程度で固まって行動するかと思っていたんだが。どうやらこいつには仲間はいないようだ。

 まあ良い事ではあるな。その方が殺しやすいし、探す手間が省ける。

 やがて勇者は路地に入り込み、人気のない所に入っていく。

 俺は気づかれないように後を追った。

 先ほどの件もあるし、ここは慎重にいくか。

 勇者は誰もいない通りに着くと立ち止まり、懐から何かを取り出した。


(なんだ…?)


 俺は息を殺してそれを見た。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?