どうやらそれは手紙のようだ。
「誰から来たんだろ」
そう呟きながら勇者は封筒を開ける。どうやら手紙のようだ。
「……さすがにここからじゃ読めないか」
仕方がないので俺は少々近づいていくことにした。勇者はまだこちらには気づいていないようだ。
「よし」
俺はそのまま勇者の後ろに回り込み、背後から首を絞め上げた。
「ぐあ……!?」
首の骨でも折ったのか、勇者は瞬時に絶命する。俺は勇者の手から手紙を奪い、手に取った。
「さて……」
俺はその手紙を広げて中を見る。だが……。
「なんだこりゃ?日本語じゃないか」
その文字は英語でもなければこの世界の言語でもない、まぎれもない日本語だった。
『狙われてるぞ』
……まさか。俺らの存在を、勇者に教えてる奴がいるのか?俺は周りに気を配りながら勇者の死体を放置し、リリムとミアの方へ戻っていく。
「あの男はどうなりましたか?」
リリムが聞いてきたので俺は首を横に振った。
「死んだよ」
「そうですか。それで、その手紙は?」
「ああ。こいつだ」
俺はリリムに手紙を渡す。
「これは……日本語ですね」
「しかも送り主が書いてない。さらに俺らに狙われてるのを明らかに
「怪しいですね」
リリムは眉間にシワを寄せる。
「ん…?」
俺は太陽に透かして手紙を見た。インクの無くなったボールペンなどで文字を紙に書くと起きる“空文字”が書いてあった。
「一体何が書かれているんです?」
ミアが聞いてきたので、俺は手紙を読み上げてやる。
『この文字を読んでいるということは、無事に勇者を倒せたようだね。おめでとう。君らが召喚されて1ヶ月経ったね。そろそろレベルも上がってきただろう?だからそろそろ君らにも活躍してもらおうと思ってるんだけど……』
「なるほどな」
俺は呟く。どうやらこいつは、勇者も俺達も焚きつけてるみたいだ。
「だがこんな手紙で本当に来るかな?」
俺は疑問に思った。
「まさか俺たちが勇者に恨まれるのを承知でやってるとしか思えないなこれは」
「……そうですね」
リリムが少し不安げな表情をする。
「だが来てくれれば話が早い」
俺はニヤリと笑う。
「俺達の手間が省けるからな」
するとリリムはハッとしたような顔をした。
「エイジ。もしかしてその手紙の送り主は……!」
「ああ。間違いなく俺らの事も知っている」
俺は頷く。
「まあいいさ」
俺は手紙を粉々に引き裂いた。
「来たら捕まえるだけだ。殺す前になんでこんな事をするのか聞き出してやる」
俺はニヤリと笑う。
「しかし……この手紙の主は一体誰なんでしょうね?」
リリムは疑問を口にする。
「さぁな」
俺は肩をすくめた。
「とりあえず、この世界にいるのは確かだろう。勇者の動向も知ってたみたいだし」
「確かにそうですね」
リリムは納得したように頷いた。