「あ。いた」
路地裏から通りを見ると、そこにいたのはさっきの勇者の仲間の男だった。男は一人で歩いている。
「1人か」
男の後をつけながら、俺は呟く。
「しかし……」
俺は男を追う途中で気になる光景を目にする。
「この街の人達……なんか怯えているみたいですね」
隣でミアは言った。
「ああ。まるで俺達がいることを恐れているみたいだな。殺しを見られた訳じゃないのに」
「そうですね……」
ミアも俯いた。
「俺達は勇者を殺してるだけなのに……」
そう言いながらも俺は納得がいかなかった。確かに俺達は殺人をしている。しかしそれは自衛の為であり正当防衛のようなものだ。だからと言って人を殺して良いという訳じゃない。それでも殺さなければこちらも元の世界に戻れないし、そもそも生かしておいていい人間とは思えない。
「エイジ……」
俺の呟きにミアは反応する。
「ん?」
「わたくし達……このままこの街に居て良いのでしょうか?」
ミアは不安そうな声で言った。
「どういう意味だ?」
「もしわたくし達と勇者の関係が街に知れ渡ったら……この街の人達はわたしく達を追い出そうとするかも知れません」
「まあ可能性としては十分あり得るかもな」
ミアの言葉に俺は答える。
「だけど俺達だって好きで人を殺してる訳じゃない。それに向こうは悪事を悪事と思ってないクソガキばかりだ」
そう言って俺は、自分自身を落ち着かせるように大きく深呼吸をした。
「だから大丈夫だって」
「……」
ミアは俺の言葉に黙って俯いている。
「とにかく今は勇者を仕留めることに集中しようぜ」
俺はそう言ってミアの肩をポンッと叩いた。
「……はい」
ミアは小さな声で返事をする。そして俺達は再び歩き出す。
俺が前を歩きその後ろをミアがついてくる。俺はふと足を止め振り返るとミアが立ち止まっていたので声をかけた。
「どうかしたか?」
「……いえ」
ミアは首を横に振ると再び歩き始める。俺はそんなミアの様子を見て何か考えているような気がしたが聞かないことにした。
そんなことを考えながら歩いてると前方に目的の男を見つけた。俺は近くの物陰に隠れつつ様子を見ることにした。
どうやら一人のようだ。好都合だな。
俺はそう思いながらゆっくりと男に近づいていくことにする。
そして背後に忍び寄り男の背中を指拳、空手でいう貫手で貫いた。男は悲鳴もあげずに地面に倒れ込んだ。そしてそのまま絶命する。
「やったな」
呟くように、自分自身の言い聞かせるように、俺は思わず独り言を言った。
「えーと、これで残りは何人だったか?」
俺は指先についた血を払い落としながら言う。
「あと7人ですね」
リリムが答える。
「あと7人か……」
リリムの言葉を繰り返し呟いた後、俺は少し考える素振りを見せた。
「エイジ?」
「ん?」
「どうしました?」
「……さっきミアが言った通りだ。なるべく早く片付けないとな。タダでさえ俺達はこの街の人間から奇異の目で見られている」