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第52話:対策会議

 俺はミアの方を見ながら言った。すると彼女は小さくコクリと首を縦に振ってみせる。


「単純にモタモタしてると逃げられる可能性もあります」


 意見してきたのはリリムだった。


「リリムの弾も早くできるといいんだがな…」


 明日あたり、ギリヤグさんの店に行ってせっついてみるか。


「はい……でもあまり無理はしないでくださいね」


 ミアは不安そうな表情で言った。俺は苦笑しつつ答える。


「ああ分かってるよ」


 俺はそう言うと歩き始めた。


「とりあえず宿に戻って作戦会議といこう」


「分かりました」


 ミアはそう返事すると俺の後に続いた。


「勇者共がどこに寝泊まりしてるか分かるといいんだがな…」


◇◆◇◆◇◆◇


「……この街の大きな屋敷か旅館だと思います。このラミエルは旅の行商人も多く出入りしますから」


 ミアのこの情報通りであれば、恐らくそこに寝泊まりしているのだろう。


「まあ、あの三巨頭の死に方を知っていれば、一人二人で泊まっている訳はないか」


 問題はリリムの弾丸だ。ドワーフのギリヤグさんがすぐには出来ないとは言っていたが、連中がこのラミエルに居るうちに一気に片付けたい。それにはリリムの銃の腕はどうしても必要なのだ。俺は部屋に入り椅子に座りながら考えていた。


「おいリリム、ミア……ってお前何持ってんだよリリム」


振り向いた先でリリムが手に持っていたのは、一本のナイフだった。


「……なんでこんなものを」


「武器の確認です」


「武器なら俺のけんもあるしお前の弾もまだ残ってるだろ。それにあれもある」


 壁に立てかけてある剣を、俺は指差した。だがリリムは首を横に振る。


「いえ。これは念のためです」


 俺が聞くと彼女は頷いて言った。


「例えば勇者に見つかって組み合いになった時とか。そういう時はナイフの方が効率がいいです」


「……確かにそうだが」


 と俺もナイフを手に取った。


「万が一剣が使えなくなってもこれなら戦えます」


 リリムはそう言ってニコリと微笑んだ。俺はリリムの持ってるナイフをまじまじと見る。よく見ると刃がかなり磨き込まれていた。


「随分と綺麗な刃だな。手入れが行き届いてるみたいだけど」


「えぇ。あの研究所を襲撃した際、敵が落としたのを拾ったものです。リリムはいつも持ち歩いています」


 ……今初めて聞いたぞ。呆れている俺を他所よそに、リリムは満足げに、ナイフの刃を布で拭き始めた。

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