間違いなく勇者の一人だ。トシも17歳くらい。
俺はこのガキの靴から靴紐を奪い取り、手足に拘束して壁際に移動させた後その場を離れた。
(まずはこの部屋を調べてみるか……)
そう思い廊下に出ると階段があったので、降りる事にした。階段を下りる途中に数人の声がする。
1階に降りてみるとホールに出だ。そこには数人の男女がいてこちらを見て驚いたような表情をしている。
……どうやら全員日本人だ。その中の一人である女が声をかけてきた。
「あらぁ~お客さんですかぁ~? 珍しいですわねぇ」
その言葉を聞きながら俺は観察を続けていた。この集団の中でリーダー格らしい金髪の女性。彼女が発した声で全員がこちらに注目したようだった。皆一様に警戒心を抱いているようで身構えている者もいる。その中でも特に異質な雰囲気を放っていた者がいた。
「こんにちは。君たちも勇者なのかな?」
俺の問いに、全員が頷いた。やはりそうか。だとすればここにいる全員が危険人物ということになる。
こいつら相手に露骨な構えを取る必要もない気はするが、油断は禁物だ。
「そうだけど?」
ホールにたむろしていたガキ共のウチの一人が答えると、金髪の女がクスリと笑った。
「ふーん。噂には聞いてたけど、本当に勇者殺しなんだぁ」
…なるほど、俺が何者か、こいつらは察しているようだ。だが俺は何も答えず、ただ黙っていた。そんな俺を見て不思議に思ったのか、金髪女は口を開く。
「あれれー? 違ったかしら? でもアナタがここに来たってことは、そういうことでしょ?」
「……そうだな」
俺が肯定すると金髪の女は嬉しそうに笑う。そして次の瞬間には真剣な顔つきになっていた。
「アナタ達ね?うちのメンバーを殺した犯人は」
彼女の言葉を聞いた途端、周りにいた他の奴らがざわつき始めた。だがそんなことはどうでもいい。重要なのはそこではないのだから。
「ああそうだ。今更確認するまでもないだろう」
間髪入れず、俺は即答した。それに対して金髪の女は驚いたような顔を浮かべる。しかしすぐに元の表情に戻った。
「へえ……認めるんだ」
「別に隠すつもりも無いんでな」
淡々と言葉を返す俺に、彼女は少し考えるように黙っていたがすぐに口を開いた。
「それで?ウチたちをどうするつもりかしら?」
「別に。俺が姿を現した以上、答えは一つだろう」
「……殺すのね? いいわ。やってみなさい」
俺は軽く構えると拳を彼らに向けた。
「……お前たちはこの世界に迷惑をかけすぎた。もう死後の世界にいくべきだ」
「そう。それがあなたの答えなのね。なら遠慮なくやらせてもらうわ!」
彼女が合図すると一斉に襲いかかってきた。俺は構え直すと迎え撃つ準備をする。まず最初に間合いに入ってきたのはリーダー格の金髪女だった。彼女は素早く動き回りながら攻撃を仕掛けてくる。だが動きが単調で読みやすい。しかも俺にはスローモーションに見える。
攻撃を避けると同時に反撃に出る。突き出された腕を掴み背負い投げの要領で投げ飛ばした。床に叩きつけられた彼女は苦悶の声を上げる。
(やっぱり、想像通り弱いな)
心の中で呟くと、俺は次の標的を探すことにした。