床で伸びてる金髪の女。周囲を見渡すと残りは2人の男女だ。
「ふぅ……。面倒だな」
俺は深く息を吐き出すと拳を構え直した。
「さて……どっちから来る?2人まとめてでも俺は構わんけどな」
俺はそう言うと一歩前へ出る。それに反応して前に出てきたのは大柄の男だった。身長は2mを超えているだろうか?その体格は明らかに高校生のそれではない。
魔法か何かで大きくしているのか?
「おらあっ!!」
勢いよく繰り出された拳をかわしカウンターの一撃を食らわせる。だが大男はビクともしなかった。
(なんだこいつ!?)
「無駄だよ。俺は防御魔法を使っているからな。そんな攻撃じゃダメージなんて受けないぞ」
(防御魔法か……厄介だな。魔法使いタイプの勇者ってわけだ)
「それに……俺の魔力はまだまだ残っているからな。お前の攻撃など痛くも痒くもねぇ!」
「そうかい。なら試してみるか?」
俺はそう言うと拳を握る。そして勢いよく踏み込むと拳を振り抜いた。凄まじい速度のパンチが男の腹に突き刺さる。
「ぐっ!?」
だが大男は少し後退しただけでダメージを受けた様子はなかった。それどころか余裕の笑みを浮かべている。
「無駄だって言っただろう。俺に物理攻撃は効かん。この防御魔法がある限り俺は負けないのだ!」
「……なるほどな。ならこれならどうだ!?」
そう言いながら俺は、再び男に向かっていく。拳を叩き込もうとした瞬間だった。突然男の腕が伸びてきたかと思うとそのまま首を掴まれてしまった。そのまま締め上げられてしまう。
(しまった……!!)
しかし俺は冷静に対処する。腕を掴み力を込めると関節を逆に折り曲げて外した。そして解放された腕を使い喉元に手刀を叩き込んだ。
「ぐぇっ!?」
喉の急所経穴“丹中”だ。男の首に衝撃が走ただろう。彼は一瞬にして絶命しその場に倒れ込んだ。
「ふぅ……なんとか倒せたか」
俺は安堵のため息をつくと改めて周囲を見回した。残りは一人だけだ。そいつはさっきからずっと沈黙したままだ。
「おい。次はお前の番だぞ」
俺の呼びかけにやっと反応したようだ。
ゆっくりとこちらに近づいてくる。その表情は怒りに満ちていた。
「よくも仲間を……殺しやがったなてめぇ!」
そう叫ぶと彼女は手に持った杖をこちらに向ける。魔法攻撃が来ると思った俺は素早く回避行動を取る。予想通り放たれた火球をギリギリのところで回避することができた。危ないところだったな……
「ちっ……外したか。まあいいさ。次は確実に当ててやるからよぉ!」
口の悪い女だな。再度構え直す少女の姿を見て俺は構えを解いた。