そして一気に加速して距離を詰める。
「遅い!」
女は俺の
「がはっ!?」
「そこは大横という急所経穴だ。目まいや吐き気がしてきただろ?」
「……ああ。随分と酷い攻撃をしてくるんだな」
女は俺の言葉に小さく笑うと再び構えた。俺はゆっくりと構えを取る。
すると突然女が動いた。凄まじい速度で拳が飛んでくる。俺はそれを紙一重で避け反撃を試みる。
だがそれも避けられてしまった。
「どうした?避けるばかりじゃ勝てないぜ?」
女は余裕の表情でこちらを見ている。俺は拳を構え直すと再び距離を詰める。今度は先ほどよりも速く動いたつもりだったがそれでもまだ追いつかない。女の拳が飛んでくる。俺はそれを紙一重で避けることに成功した。
しかし次の瞬間にはもう次の一撃が迫ってきていた。これはさすがに避けれないな……。
俺は覚悟を決めると受けの姿勢を取った。だがその必要は無かった。なぜならそれより早く、女は踏み込んできたからだ。
「何っ!?」
驚きのあまり、俺は思わず声を上げてしまう。
「へっ……驚いたか?アタシの能力はスピードなんだよ!」
「なるほど……。通りで速いわけだ」
俺が感心したように呟くと、女は得意げに笑いあげる。
「おら!どんどん行くぜ!」
「だがっ!!」
再び突っ込んできた女の顔面に突きを入れた。
「残念だがスピードじゃ俺の敵じゃないな」
女は鼻血を吹いて倒れこんだ。
しばらく動かなかったがやがて意識を取り戻した。
「……ああ……痛てぇ……」
鼻血を手で拭いながら立ち上がる。鼻は曲がっているし、鼻血がさらに止まらない。どうやら鼻骨が折れたようだ。咄嗟に顔を引いて致命打を避けたようだな。
「……やるじゃねぇか。まさか反撃してくるなんてな。しかもアタシより速いとは……」
女は感心したような口調で言う。褒められても嬉しくない。
「ふん……。で?続けるか?」
「当たり前だ。まだ終わっちゃいねぇ!」
俺の問いかけに女はそう叫ぶと、拳を握りしめた。
「行くぞ!アタシの必殺技を見せてやるぜ!!」
「ふんっ!」
彼女の拳が飛んでくる。俺はそれを紙一重で避ける。
(やはり速いな。だがっ!)
「何っ!?」
俺の拳が女の鳩尾に炸裂した。そしてそのまま彼女の身体を吹き飛ばす。女は壁に叩きつけられるとズルズルと崩れ落ちた。かなり効いたようだな。
「ぐっ……」
女は苦悶の声を上げるとその場に倒れ込んだ。もう立てないだろう。俺は拳を下げると一息ついた。
「ふぅ……何とか勝てたか」
俺はそう呟くとその場を後にした。
(……面倒な女だったな。兵藤をやったあのデブもこの女には手こずったろうな)
俺は心の中でそう思うとまた窓から飛び降りた。その帰り際にさっきの金髪の女の顔を見る。
女は完全に絶命したようだった。