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8話 誤解


 エンジェリアが、フォルと一緒に魔法具に使えそうな素材を探していると、ゼーシェリオン達がきた。ローシェジェラも一緒にいる。


「ゼロ達きたの」


「エレ、大丈夫か? 怪我してねぇか? 」


 ゼーシェリオンが、心配そうにエンジェリアに駆け寄る。


「ふみゅ。大丈夫なの」


「心配したんだ。エレが愛姫だから、危険な目に遭うから、心配なんだ」


 ゼーシェリオンは、エンジェリアが狙われる理由が愛姫であるという事と関係があると、上にいる時に知ったのだろう。


「エレは大丈夫なの。愛姫が守られるだけで、何にもできないわけじゃないって、ゼロ達が知ってるでしょ? エレを狙いすぎなの。こんなにエレに執着すれば、エレの魔法発動なの」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンの頭を撫でてそう言った。


 エンジェリアを狙っていたのは、同じ人物。何度も狙われていれば、エンジェリアも対策を講じる事はできる。


 エンジェリアは、連絡魔法具を取り出した。


「これはエレ特性なの。だから、エレの魔法に反応してくれる機能もつけておいたの」


「連絡魔法具⁉︎ 」


 ピュオが何かを思い出したかのように、連絡魔法具を取り出した。


「やっぱり……」


「あっ⁉︎ 」


 ピュオの行動を見たゼーシェリオンが、連絡魔法具を取り出した。


「……俺もだ」


「みゅ? 」


 エンジェリアは、ゼーシェリオン達の行動理由と落胆が理解できず、きょとんと首を傾げた。


 フォルなら理解しているかもしれないと思い、エンジェリアは、フォルをじっと見つめた。


 フォルは、困った顔で笑うだけで何も言わない。


「エレ、普通の連絡魔法具は、この温度は対応できねぇんだ」


「そうなの? エレの魔法具なら、大丈夫なのに」


 エンジェリアは、そう言いながら、エンジェリアを狙う相手の動向を確かめる。


「ずっと止まってるの。エレが来るのを待ってるみたいなの。追ってこないのは不思議なの」


「……愛姫の存在が邪魔というより、愛姫の周囲を試している感じがするけど……エレに危害を加える以上、ほっとくなんて選択肢は存在しない」


「それより今はロジェの方なの」


 エンジェリアが狙われている件も、ゼーシェリオン達にとっては重要かもしれないが、今はローシェジェラの説得の方が重要だ。


 今が絶好のチャンスだろう。どうにかして、この世界でローシェジェラを止めたい。


「ロジェ、これでもエレを信じてくれないの? エレは愛姫なの。エレなら、裏切り者って言われた人達の事を調べて、ちゃんと真実を公表する事だってできるの。それをやった人達にちゃんと償わせて、被害者達が、また神獣としてどぉどぉと生きる事ができるようにだってできるの。それだけじゃ不満? 」


「僕の目的は復讐する事で、これ以上同じ境遇を生み出さない事。同じ境遇の神獣達が少しでも生きやすくする事。それが達成されるなら、それでも良い」


「ふみゅ。エレ達の御巫になる目的のためには通らないといけない道なの。疑うなら、互いの利害関係? で、休戦? なの」


「……そうだね。それで良いよ」


 ローシェジェラが納得すると、ピュオがエンジェリアを見た。エンジェリアがこくりと頷くと、ピュオが、ローシェジェラの手を握った。


「ぴゅ、ピュオ? 」


 戸惑うローシェジェラに、ピュオが笑顔を見せる。


「わたし、ずっとロジェと仲良くなりたいって思ってたんだ」


「……僕も……けど、僕……神獣、だから」


「種族なんて関係ないよ。わたしがいた世界は、人間以外いなかったから、神獣がどんな種族なのかも、まだ分かってないんだ。ロジェの事知りたいから、知りたいけど、神獣の本なんて少ないから」


 エンジェリアは、噂で聞いた事がある程度だ。ピュオのいた世界は、平和とは言い切れないが、誰もが勉学をできる。魔法がない分、様々な職がある。そんな世界だったと。


 エンジェリアは、以前似たような世界で転生した事があり、想像はできるが、突然転移させられた時の事は、ピュオとノーヴェイズにしか分からない事だろう。


 こうなれるようになるまでの経緯も。


「だから、わたしは神獣だからなんて思わないよ。そもそも、わたしが知ってる神獣は、強くてまっすぐな人だから」


「イールグ……フォルの友人。以前も何度か話した事がある……その、僕で良いなら……ピュオの……とも……」


「喜んで友達になるよ」


 ローシェジェラの過去は知らないが、少なくとも、神獣に友と呼べるものなどいなかっただろう。


 ローシェジェラが、嬉しそうにしている。


「……りゅりゅ、にゅにゅ、ぴゅにゅ、みゅにゅ、ぴみゃ、ぴにぃ……出てきて」


「出てきたでちゅ」


「どうしたんでちゅ? 」


「愛姫様……すき」


「出てきたぜぇ」


「愛姫様、どうちたの? 」


「愛姫様の要望であればいちゅでも参上つかまちゅりまちゅ」


 りゅりゅと同じ小龍が次々を姿を現す。りゅりゅを入れて六匹。


 今いるジェルドの王達と同じ数だ。


「エレの魔法が勝手に使われてるの。何か知ってる? 」


 小龍達は、全匹ふるふると、器用に首を横に振る。


「ぷみゅ……」


「今の世界の在り方が影響しているのかもしれまちぇん」


「りゅりゅ、何かいる」


 エンジェリアを今まで狙ってきた相手だ。エンジェリアの連絡魔法具が、ここへきた男を示している。


「やっとご対面なの。魔法機械さん。なんの目的でエレ達をつけまとう? 」


「付きまとう」


「ふみゅ。付き纏っていたの」


 エンジェリアは、男を魔法機械だと見抜いた。音は自然だったが、動きの不自然さがある。一つ一つの動作が、外部から命令を与えられているからか、若干ぎこちなさを感じる。


「王とその周囲を試すためでございます。かつて、世界を滅ぼした王。その王達と共にいるのがどんな人物か。勘違いしないでいただきたいのは、我々は、姫の敵でも味方でもないという事でございます」


「敵じゃない? 」


「姫に危害を加えた時点で敵だというのなら、それで結構。ですが、それで後悔するのはそちらでしょう。我々は、姫達が望む情報を持っている」


 このタイミングで姿を見せたという事は、神獣に関する情報だろう。


 それは欲しいが、わざわざ魔法機械を介している相手の事を簡単に信用する事はできない。


「嘘かもしれないの。魔法機械なら、嘘を見抜きずらいから」


「嘘ではございません。信用できないのであれば、我々の拠点へ赴いていただきたい。魔法機械を使う理由も、そこで説明するでございます」


「……ロジェ、ロジェが決めて良いよ。エレ達は、何かあっても大丈夫だから。知りたいなら、お話聞き行くの」


「……知りたい。僕は、神獣がなんでああなったのか、ちゃんと知りたい。けど、エレ達を、巻き込むのは……」


 ローシェジェラが、そう言って俯いた。


「良いの。復讐の事を何も言わなかったのも、ロジェは、エレ達を巻き込みたくなかったからって知ってるの。でも、エレ達を巻き込んで良いの。それに、危険な目に遭うって、昔からずっとだから」


 少なくとも、エンジェリアが御巫となる事を決めてからは、危険な目に遭わない事の方が少ないと思えるほど遭っている。


 今更この程度の危険を犯す事に、抵抗感などない。フォルが大事に思う相手であれば尚更。


「ふみゅ。あなた達の拠点に行かせてもらうの。行くのは、エレとフォルだけ。その方が良いでしょ? 」


「そうでございます。ご安心を。我々は、王達に危害を加えません」


「……二回ほど、エレに実害出てたんだけど」


「なんの事でございますか? 我々は、姫の足止めはしましたが……先ほどから危害と言われていたのは……少し誤解がありそうでございます。我々がしたのは、道に迷いやすくするや、スピードを遅くする程度です。今回は、下が安全であるのを調べてから、穴を開けましたが。それを姫が大事すぎて危害と言われていたのでは? 」

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