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2話 エクリシェ商店街


 エンジェリアは出来上がった設計図を見た。


「ふみゅぅ。やってみないと分かんないの」


「……エレ、これ起動しない。ここ、繋がってない。これだと起動する事はないよ」


「みゅにゃ⁉︎ 初歩的なミスなの。このまま渡すところだった。フォル、ありがと」


 エンジェリアは、フォルに見つけてもらった欠損を直した。


「ふみゅ。これでフィルに渡し行くの。素材は、これで大丈夫? 予算いっぱいになっちゃってない? 」


「うん。これなら大丈夫だよ。これで、どれだけの精度を出す事ができるのかが重要だけど、その辺はフィルがなんとかしてくれるでしょ」


「ぷにゅ……じぃー。エレは今回の作品をフォルとフィルの共同を希望するの」


 フォルは普段作らないだけで、一人で設計から制作までをこなせる魔法宮技師免許所持者だ。エンジェリアは、そんなフォルにも手伝ってもらいたく、じっと見つめる。


「……エレが望むなら。一日中僕も好きなようにして良い権で」


「ふみゅ。あげるの。フォルだったらいくらでもエレをすきにして良いの。フォルだけは特別だから。って事で、フィルと一緒に共同制作なの」


 エンジェリアは、軽い足取りで、フィルの部屋へ向かった。


      **********


「フィル、設計図描けたの。新しいをふんだんに使った設計図」


 エンジェリアは、そう言って、得意げに設計図を渡した。


「……これを……分かった。すぐに作り始める。何か手伝って欲しい事があれば頼むから、遊んでいて良いよ」


「ふみゅ。いっぱい遊んでくるの。でも、お手伝いあればいくらでもお手伝いするから、連絡してね。エレは、フォルとゼロと、発表の準備をしながら遊ぶから」


 エンジェリアは、そう言って、部屋から出ようとしたが、立ち止まった。


「ふみゅ。エレは、フィルに渡しておくものがあったの。忘れてた。フォルから素材のメモを受け取っていたのに。これ、今回は量産目的だから、この素材で作りたいの。お願いできる? 」


「フォルが大丈夫だと思って渡してるんなら、大丈夫だと思う。でも、素材が持ってないのもあるから買いに行かないと」


「お使いエレなの! 」


「……エレは危険だからおれが自分で行く」


「お使いエレなの! 」


 フィルはエンジェリアを心配して、買い物へ行かせたくないのだろう。だが、エンジェリアは、お使いの気満々だ。拒否権など、存在させたくないくらい。


「……フォルとゼロも一緒になら、頼んでも良いけど、エレ一人だと、ちょっと」


「……フォルとゼロも誘うの」


 エンジェリアは、残念なのを隠さずにそう言った。


「エレ一人だと危険とかの前に、迷子になってお使いどころじゃないから、一人では絶対行かないで」


「みゅぅ。分かったの。行かない。行かないから、お使いやらせて欲しいの」


「うん。頼んだ」


「みゅ。頼まれたの」


 エンジェリアは、一人では任されていないが、任されたという事だけで、喜びながら部屋を出た。


      **********


 エンジェリアが自室へ戻ると、ゼーシェリオンとフォルが待っていた。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンとフォルに、お使いの話をし、エクリシェの商店街へ向かった。


「ふみゅぅ。ここはお使いの中でも楽なの。仕入れも良いから、欲しいものも簡単に見つけられる。可愛い髪飾りとかもある。エレはここがだいすきなの」


「うん。エレ、あまり買いすぎちゃだめだよ。荷物になるから。必要なものだけを必要なだけ買って。例えばこの服とか。エレに似合いそうな可愛い服とか。素材とか」


 フォルが服を勧めてくるのに気にはなるが、エンジェリアの好みではないため、別のものを見る。


 エンジェリアは、リボンを見ながら、ゼーシェリオンとフォルに合う色を探す。


「……エレ、あの靴可愛い。エレに絶対似合う。エレが買うべき」


「エレ、それよりこっちの服を見ようよ。エレに似合うから。試着してみる? エレに似合うから」


 ゼーシェリオンとフォルが、エンジェリアに似合うものを探して、エンジェリアに買う決断をさせようとしている。それに気づいたエンジェリアは、一人ですたすたと、素材を買った。


 素材のメモを持ってはいないが、全て覚えている。買うのに悩む事はない。


「エレ、このネグリジェは? このネグリジェで寝ているエレを抱きしめたい」


「……フォル、それはネグリジェとは言わないの。下着というの。流石のエレでも知ってるから。騙されないよ。それとゼロ、無言でエレの下着を勝手に買おうとしないの。エレの……ふぇ? いつもの事だからいっか。でも、エレはそれ趣味じゃないから」


 エンジェリアの目を離した隙に、エンジェリアの下着を勝手に買おうとしているゼーシェリオンとフォルに、呆れながら、そう言った。


 だが、ゼーシェリオンとフォルが、エンジェリアのその言葉だけでは聞かず、二人で楽しく下着を選んでいる。


「……ゼロ、エレはブラなんてつけません。ブラは締め付けられてやだからつけないの」


「……お前それは普通に問題あると思うぞ」


「特注でエレが着る事できるように仕立ててもらう? このままにしてはいられないから」


「……ぷにゅ。それは良いとして、フォルは何を持ってるの? それをエレに着せるつもりなの? いくらフォルの趣味だろうと、エレはそんなお洋服着ないから」


 着ると、服の面積より、肌の面積の方が大きいだろう服を手に持っている。


 エンジェリアは、できるなら、露出を避けたい派。動きにくいという理由で、ミニスカートとか履いてはいるが。


 当然、そんな服は着たくない。エンジェリアは、頑固拒否の意思を見せる。


「……じゃあ、これ」


「フォルはエレをどうしたいの? エレはそれが良く分かんない」


「エレが、この服を着て、夜、僕の部屋に来て、一緒に寝たいのって言って欲しい。それで、エレは僕にぎゅぅされて、すやすやと一緒に寝るってしたい。それ以外は望まないから」


 フォルが、ほんのり頬を赤らめて、口元を隠してそう言った。エンジェリアは、その仕草を見て、頑固拒否という意思が揺らぐ。


「だ、だめなの! 風邪引いちゃうの! そう! 風邪引いちゃうの! そういう事にして逃げるの! 」


「……エレは、やだ? 」


 フォルが、涙を溜めた瞳で悲しそうな表情で、エンジェリアを見る。


「やじゃないの! ……ふみゃ⁉︎ 」


 フォルの仕草に負けて、エンジェリアは、つい即答してしまった。


「じゃあ、これ買って、エレに着せてあげるね。暑い時とか普通に便利そうだけど、肌寒いってなると困るから、上に羽織るものもついでに買っておこうかな。透ける素材なら、より一層……」


 フォルが、先ほどまでの悲しそうな表情は嘘だったかのように、笑顔で選んでいる。


「エレ、これは? これも買う」


「ゼロは可愛いの。フォルは全然可愛くないの。やってる事卑怯なの」


 ゼーシェリオンは、楽しそうに、エンジェリアにブーツを見せている。


「これもついでに。それに、これも」


「……ゼロは可愛いの。量が多いだけで、普通に可愛いだけで済んでいるから」


「って事は」


「買って良いの。どうせエレのお金じゃないから。ゼロとフォルが自腹で仕入れているの知ってるから」


 エクリシェの商店街は、エンジェリア以外が、好きなものを仕入れて置いている倉庫のようなものだ。それを、楽しく買い物っぽくするために、商店街と呼んでいる。


「エレも出してみようかな? みんなにエレ特性栄養ドリンクを配るのは面倒だから、自由にお持ち帰りできるように……とりあえず、お礼品はエレ特性栄養ドリンクにしよっと。いっぱい持ってるから……ゼロ、フォル、エレがお礼品入れておくから、誰が選んだか教えて」


「タイツとブーツはピュオねぇで、服は俺」


「僕」


 自腹で払っている事から、ここに置かれている品は、出品者が書かれており、その相手の箱にお礼品を何か入れておくのが決まりだ。


 中には、特定の人物のためだけに買われているものもあるが、気にいるか分からずここに置くという事もある。そういう時のために、手紙も添える決まりとなっている。


「ピュオねぇに、お気に入りってお手紙を入れて。ついでに、エレの可愛い魔法具を入れて置いて。ゼロには栄養ドリンクと、ゼロで遊びたいってお手紙を入れて置くの。フォルは、らぶと栄養ドリンクなの。素材は、フォルとフィルだったから、フィルにも、お使いがんばったお手紙を入れておくの。それと栄養ドリンクも」


 エンジェリアは、各自の箱に、手紙とお礼品を入れた。


「これでお使い終わったから帰るの」


「うん。もう少し見たいけど、買いすぎも良くないからね」


「そうだな。これで満足しておかねぇとだな」


「ふみゅ。お洋服いっぱいなの」


 エンジェリアは、無事お使いを果たせて、満足に、エクリシェ商店街の出口へ向かった。


「ふみゅふみゅ。これで、量産も夢じゃないの」

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