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21.クラスメイトとの交流

「昨日の魔法特集見たか?」

「もちろん」

「あんなに美人ばっかりとは驚いたぜ」


 教室でもその話題でもちきりだった。

 有名な魔法の特集だったこともあるけど、若くて美人の女性ばかりだったというのも大きい。


「美人もそうだけどスタイルも良かったよな」

「そうそう、胸ボーンからの腰と足の細さがすごかった」

「男子ってそんなところしか見てないんだから」

「見るところがあるからな」

「あ゛!?」

「ひっ」


 江川が和泉さんに睨まれてビビっている。

 和泉さんは胸が小さいのを気にしてるのに調子に乗ったから仕方ない。


「気にしてないわよ、変態!!」

「能見、事実陳列罪だぞ」

「小さいことはいいことだ」

「何も言ってないよ!?」

「めっちゃ大きな声で口に出してたな」

「さすが能見! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」

「なるほど、能見君は大きいのが好きなんですねぇ」

「それは言ってなくない?」

「それに私はCあるわよ!!」

「「「いや、それはない」」」

「よし、お前ら、全員そこで正座」


 激怒した和泉さんが全員を正座させてお説教を始めた。

 なぜ俺まで巻き添えで怒られるんだ……。


・・・


 昼休み。

 江川含むクラスメイトの男達から屋上に呼び出された。


「おっぱいのサイズ鑑定魔法ってないのか?」

「なんで俺に聞くんだよ!?」

「あれだけ気にしてるのにCは絶対ないと思うんだ」

「どうでもいいよ!?」

「いい訳ないだろ」

「胸パッド許すまじ」

「Yes貧乳、No巨乳」


 一人だけ言ってることがおかしいのがいなかったか?


「専門家のお前なら知ってるんじゃないかと思ってな」


 江川が真剣な目で見てくる。

 専門家と言われるとちょっと嬉しいけど要求されているのはエロ魔法なのが難点だ。


「候補はいっぱい出てくるんだけど、どれも外れなんだ」

「ああ、まあね……」


 大体予想がつく。

 多分[対抗呪文]で打ち消されてるんだろうな。

 相手の体に関することだから[対抗呪文]の対象なんだと思う。


「なあ、どうにかならないのか?」

「うーん」

「お前ならきっと解決出来ると思うんだ」

「頼む」

「お願い」


 頼られるのは正直嬉しいのでなんとかしてあげたい。

 ただ今の魔法の方向性だとまず成功しないと思うんだよな。

 何か新しいアイディアがないと難しい。


「他人の体を調べるのは多分[対抗呪文]の対象だと思うんだ」

「なるほど」

「やっぱり直接見て確かめるしかないか」

「水泳の授業があればなぁ」

「和泉の場合は水着も拒否しそう」


 みんなエロに関することだと理解が早い。

 ああすればいい、こうすればいいと言う意見が出てくる。

 活気のあるこういう雰囲気は大好きだ。


「透視が出来りゃあなぁ」

「あれ無理だろ、どうやっても[対抗呪文]で弾かれるし」

「出来たとか言ってるやつは相手の同意があるんだよな」

「透視の同意もらえるなら脱がせられるんだが」

「脱がさないのがいいんじゃあないか」


 目を輝かしつつも声のトーンは抑えている鳥海の変態っぷりは群を抜いてるな。

 脱がさない良さと言うのはちょっと気になるけど、下手に質問すると面倒なことになりそうだから放置しておこう。


「ちょっと家で考えてみるよ」

「頼んだ」

「お前なら出来る」

「気に入った、成功したら和泉を透視していいぞ」

「なんでお前が決めるんだ」

「あれ~? 江川君は和泉さんの裸を見られると困るのかな~?」

「同士だったか」

「別に貧乳好きじゃねぇよ!?」

「なるほど、貧乳が好きだから普乳や巨乳だと困るのか」

「変態すぎる」

「違うって言ってるだろ!? あと鳥海にだけは変態と言われたくないわ!?」

「それほどでもない」

「ほめてねぇから」


 あんまり話したことなかったけど、結構楽しい奴らだったんだな。


「お前ほどじゃないな」

「ああ、もっと地味な真面目ちゃんだと思ってた」

「こんなに変態だったとは」

「地味で真面目はともかく変態じゃないよ!?」

「またまた」

「ご冗談を」

「誰がどう見ても」

「「「変態」」」

「風評被害やめろよ!?」


 みんなで教室に帰ると翔が気づいて近寄ってきた。

 生暖かい目で非常に気持ち悪い。


「そうか、ようやく真琴にも友だちが」

「前から友だちいるよ!?」

「お父さんは嬉しいぞ」

「誰がお父さんだよ!?」


「相変わらずツッコミが一辺倒だな」

「もう少し変化が欲しい」

「父と息子、いいですねぇ、出来れば友達も入れて三人でお願いしたいですねぇ」

「有りね、ちょっと捗る」

「変態であっても芸人ではないか」

「鍛えればいけるのでは?」

「もう少し面白くできそう」

「才能は感じる」


「なんでみんなにツッコミのダメ出しされてるんだよ!?」

「みんなお前に期待してるんだ」

「そういう期待じゃなくて魔法の期待とかしてくれよ!?」


 陽菜もそうだけどなぜ俺にツッコミをさせようとするのか。

 好きで突っ込んでるわけじゃないんだけど。


・・・


 その後は頼まれた鑑定魔法について考えていた。

 課題はやはり対象が他人の身体であるということだろう。

 何をするにしても[対抗呪文]が邪魔をする。

 くぐり抜けるには他人の体ではないと定義する必要がある。

 どうやればいいんだ……。


「……能見君」


 深海に届く光のように、その声は考え事をしている俺の頭にすっと入ってくる。

 声のする方を見ると藤田さんが立っていた。


「もう授業終わり」

「え!? あれ、誰もいない!?」


 言われて辺りを見回すと誰もいない。

 時計を見ると授業終わりから一時間すぎている。

 そりゃあみんないないはずだ。

 でもなんでみんな声をかけてくれなかったんだ?


「みんな声をかけてたけど集中してた」

「もしかしてまた無意識にひとりごと言ってた!?」

「言ってた」


 あ、やばい、返事してくれたのすごい嬉しい。

 こんなに会話が続いたの初めてじゃないだろうか。

 しかも二人きりの状況なんて嬉s……あれ?


「どうして藤田さんが残ってるの?」


 普段は一番に帰ってるはず。

 こんな時間まで残っているのがおかしい。


「先生に荷物運び頼まれたから」

「なるほど」


 あの先生、毎回藤田さんに頼むよな。

 前の補講の件といい藤田さんが好きなんじゃないか?

 年の差考えろよな。


「帰ってきたらまだ能見君いたから声かけた」


 なるほど。

 あのままだと真っ暗になるまでいたかもしれない。

 声かけてもらえて本当によかった。


「……何?」

「ありがとう」


 ちょっと顔を斜めにして目を伏せたのが可愛すぎる。

 今の映像を記録しておく魔法とかないだろうか。

 一生の宝物にするんだけど。


「……しなくていい」

「また口に出てた!?」

「最近よく口に出てる」


 あああ、藤田さんにまで言われるぐらいなのか。

 治したいと思ってるのにどうすればいいか分からない。

 そうだ、こういう時こそ魔法を。


「面白いと思う」

「え?」

「分かりやすくて良い」


 ど、どういう意味なんだ?

 分かりやすいって内面の話?

 面白いってのは良いことなの!?

 分からない、分からないよ!?


「もう帰る」

「あ……」


 訳が分からないうちに藤田さんが帰ろうとしている。

 せっかくの機会なのに逃してはいけない。


「い、一緒に帰りませんか?」

「……敬語?」

「い、一緒に帰ろう」

「わかった」


 やった!!

 いつも通りの不機嫌そうな顔だけど間違いなく了解してくれた。

 ただそのまま教室を出ていこうとしていたので急いで後を追う。


「さ、最近どう?」


 返事はないけど顔はこちらを見ている。

 横に並んで顔を向けあっているとまるで恋人同士みたいだ。


「ぼ、僕は最近」

「……僕?」

「え、あ、いや、僕のほうがいいかなって」

「……俺のほうがいい」


 え、え、嘘だろ、藤田さんから要望を言われるなんて。

 基本的にはあまり関心を持ってもらえてないと思ってた。

 だからこそこんな風に言われるとものすごく嬉しい。


「わかった、俺は最近魔法にはまっているんだけど」

「知ってる」

「面白い魔法が好きでね、ほら、こんな感じ」


 世界書を開いて右手を構えながらこの前探した魔法を選ぶ。


「【螺旋パチ丸】」


 右手の手のひらに光の渦が出てくる。

 某漫画の技の見た目だけの再現でありこれだけだと特に面白い点はない。


「これをものにぶつけると」


 壁に右手を押し付けた瞬間、光が爆散したように広がった。

 接触点を中心に螺旋を描きながら光が広がる姿は、某ロボットアニメの必殺技のようだ。


「きっと作成者が考えていた仕様と違うけどかっこいい」


 翔や陽菜には大好評だっただけど、反応が薄い。


「そ、それ以外にこういうのもあるんだ、【君の一番星】」


 眼の前にいる相手の視界内の一番を探してくれる魔法。

 ただし何の一番かはわからない。


「あれ?」


 結果はなぜか俺を示している。

 え、どういうこと?


「ご、ごめん、もう一回使うね、【君の一番星】」


 今度は自販機のジュースを示している。

 よし、これならいい。

 ジュースを買って藤田さんに渡す。


「好きなジュースなのかな?」

「……そう」

「この魔法の面白いところは[対抗呪文]の対象外ってことなんだ」


 普通、相手の心の中を読むことは[対抗呪文]の対象だ。

 相手が了承しない限り打ち消される。

 でもなぜか[君の一番星]は対象外だ。

 これについてはいろいろ考察されていていくつかの要因が重なって対象外になったと言われている。


 1つ目の要因は狙ったものを質問できない点。

 ありとあらゆるものの中から狙ったものを引くのは難しい。


 2つ目の要因は視界内のものに限っている点。

 示されたものが本当の意味で一番かどうかが分からない。


 3つ目の要因は何の一番か分からない点。

 さっきのジュースで言えば見た目が一番なのか味が一番なのかは分からない。

 差がなくて一番が決まらないものは選ばれないものの、候補はたくさん存在してしまう。


 これらが重なって実質占いのようになっているからと考察されている。


「続き」

「あ、ごめん、これはね」


 さっき考えていたことを伝える。

 藤田さんは俺の顔をしっかり見ながら聞いてくれるので非常に話しやすい。


「だから実質占いに近い特性があって」

「……もう家ついた」

「え?」


 話に夢中で全然気づかなかったけどいつの間にか知らない場所だ。

 眼の前には結構大きい一軒家がある。

 ここが藤田さんの家なのか。


「ご、ごめん、俺ばかりしゃべってたせいで……」

「いい」


 一応普段より機嫌が良さそうに見えるので怒ってないと信じたい。


「じゃあまた明日」

「能見君」


 お別れの挨拶をして帰ろうとしたら呼び止められた。

 こういうことは非常に珍しい。


「見えているものは公開情報」

「え?」


 そう言って家に入ってしまった。

 今の言葉はどういう意味だろう?

 見えているものは公開情報って当たり前だよな。

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