家に帰って夕ご飯を食べ終わってもずっと考えていた。
わざわざ藤田さんが教えてくれたということは何らかの役に立つことなんだと思う。
待てよ……見えているものは公開情報。
魔法なんてなくても目視で見ておっぱいのサイズは予測出来るはず。
でも魔法だと他人の身体を鑑定した正確なサイズを要求しているとか……?
なら見た目から想像したサイズを算出する魔法を作ればいける?
さっそく世界書を出して魔法作成画面を開いて写真からおっぱいのサイズを計算する魔法を作る。
うん、既に魔法作ってる人がいた。
ただ説明文には[服の上からだと正確な値になりません]とある。
そうか、写真だと裸の状態が分からないから……。
ならそれも考慮して計算するようにすれば……。
あ、駄目だ、消費MPが100000とかになった。
見えない部分を想像で補うからコストが跳ね上がるのか。
でも写真を対象としているから絶対に[対抗呪文]はされない。
この消費MPを下げる方法を考えれば……。
「ふう、疲れたよ」
「そう言いながら俺の部屋に入ってくるのはなんなんだ?」
「妹の肩を揉ませてあげる権利をやろう」
「それ権利いるの?」
「誰彼構わず揉めるのとでも?」
たしかに言われてみれば揉めないか。
しかしその権利をもらっても俺に得はないんだけどな。
まあ既に制服から薄手のシャツに着替えていて準備は万全のようだし期待されたら応えたくなる。
「こっちに来て」
「はーい」
歩くたびに髪が跳ねるように動いている。
ツインテール? いやツーサイドアップだっけ?
小さいころからこの髪型でよく似合ってるけどもうそろそろ子供っぽい気もするな。
陽菜の肩に手を当てて揉むとたしかに硬い部分がある。
女性の体は柔らかいから、こりがわかりやすくて良い。
翔にマッサージした時は全身が硬すぎてどこがこってるか分からなかった。
「それは運動後の筋肉の硬直のせいだよ、お兄ちゃん」
「隙あらば心の中を読むのやめろ」
「以心伝心ってやつだね」
「カテゴリーFかな?」
「お兄ちゃんの愛馬は大人しそう」
「下ネタはやめなさい」
実際はかなり凶暴だぞ、見せられないけど。
こんな感じの無駄話をしつつコリをほぐしていく。
20分ほどであらかた気になる部分は揉み終えた。
「いやー、やっぱりお兄ちゃんのマッサージが一番だよ」
「待て、他に誰に揉んでもらった? 彼氏か?」
「うわー、セクハラだよ、お兄ちゃん」
「セクハラになるようなことをされたのか!?」
「お兄ちゃん、ステイ」
「あ、はい」
「揉んでくれたのは女の子です、いいですね?」
「はい……」
「お父さんもお兄ちゃんも私の恋愛事情を気にしすぎ」
「父さんとは違うよ……」
父さんは陽菜を猫可愛がりしてるので彼氏ができたかどうかをものすごく気にしている。
俺は別にそこまで……。
「例えば、私が彼氏に襲われて初めてを奪われたと言ったらどうする?」
「その男は二度と日の下で歩けないようにする」
「ほら、お父さんと一緒」
はっ、つい勢いで言ってしまった。
そういうのは陽菜に気づかれないように黙ってやらないと。
「黙ってやればいいって話じゃないよ?」
「また口に出してた!?」
「口に出してたし、顔にも書いてあるよ」
そんなに分かりやすいのか……。
「お兄ちゃんは私が好きすぎるね」
「家族だから当たり前だろ!?」
「そこで否定しないあたり、さすがお父さんの息子だね」
「そう言われると一気に否定したくなるな」
父さんと同類と言われるといろいろ思うことはある。
まあ一人で家族養ってるのはすごいけど母さんに甘えすぎだろう。
何かあるとすぐ母さんの胸に顔を埋めるし。
「なるほど、お兄ちゃんも胸に顔を埋めたいと?」
「そんな変態じゃないよ!?」
この年になって母親に抱きつくとか恥ずかしい。
すると陽菜がおもむろにこちらを向いて手を広げた。
「たまってるってやつなのかな? しょうがないにゃあ・・、いいよ」
「何が悲しくて妹の胸に顔を埋めにゃならんのだ」
何がしょうがないのか小一時間問い詰めたい。
それにしても薄手の服だから陽菜の膨らみがしっかり見えるな。
制服姿の和泉さんと比べても明らかに大きい。
……2つ下に負けてるのか、そりゃ気にするわ。
そういえば見えているものは公開情報と考えるなら魔法の設定次第で写真じゃなくてもいけたりしないのかな?
「妹よ、ちょっと検証に付き合ってくれ」
「いいよ」
打てば響く返事が嬉しい。
ええと髪型を調べる魔法を作ってみて……、
うんやっぱりそういう魔法は存在するな。
「【その髪型何?】」
「ツーサイドアップだよ」
「しまった、魔法名が直球すぎて区別つかないか」
ちゃんと鑑定結果もツーサイドアップと出ているけど[対抗呪文]をすり抜けたのか発動させなかったのかが分からない。
「なになに、どんな検証なの?」
ニコニコと嬉しそうに聞いてくれるとこっちも嬉しくなる。
この愛らしさはずっとそのままでいてほしいな。
「他人の体の見えている部分に対して鑑定は出来るのか?」
「なるほどね」
「普通に他人の身体に対してやると[対抗呪文]されるから」
「だから髪型なんだ?」
「そうそう、前もツインテールと間違えたし、そういうのは失礼だからね」
「ふーん」
機嫌よく聞いていた陽菜が少し眉をひそめ斜め上を見ている。
まずい、何か感づいたか。
「お兄ちゃんが髪型気にするなんて思わなかったよ」
「お、俺もそういう年頃だから」
「なるほどね、完全に理解した」
あ、顔がニヤけた。
ただ「完全に理解した」というのはさすがに嘘だろう。
髪型の話だけでさすがに分かる訳が……。
「でもお兄ちゃんはおっぱいの大きさに貴賤がないと考えるタイプなのにどうして?」
「完全に理解してる!?」
「だってお兄ちゃんのことだよ?」
したり顔で話しているが、なんでそこまで兄の好みに詳しいんだよ。
「なるほど、翔さん辺りに頼まれたんだね」
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
「私もお兄ちゃんなんて大っ嫌い!!」
「やめて、死にたくなる!?」
本気の顔で嫌いって言うから怖い。
陽菜に嫌われたら生きていける気がしないぞ。
「でも女の子が気にする部分を無理やり暴こうとするのは感心しないよ」
「いやぁ、嘘は良くないだろ」
「それは違う、努力を嘘と呼んではいけない」
「い、いや、だってサイズを誤魔化したりパッド入れたりするのは……」
「努力に文句言っていいのはその人を好きな人だけ」
「おかしくないか!?」
「おかしくない」
マジモードの陽菜だ。
明らかに言っていることがおかしいのに反論を許す気がないのが伝わってくる。
「関係ない人は想像するだけに留めておきなさい、いいね?」
「はい……」
本気の陽菜に逆らうことは出来ない。
これは考え直した方がいいな……。
「ちなみに妹も努力してこのサイズだよ?」
「頑張りすぎ!?」
「翔さんに教わってお腹周りを重点的に鍛えてる」
「翔の筋トレ好きが役に立ってる……だと」
「お兄ちゃんも少しは鍛えようよ」
「俺は結構」
「むー、ぷよぷよは良くない」
俺の脇腹をつかんで柔らかさを確かめている。
少し冷たくすべすべした手が触れると少しくすぐったい。
「やめなさい」
「けっこう揉み心地いい」
「そんなに肉ついてた!?」
「これは豚さんコースだね」
「このままではドナドナされてしまう」
「それは子牛」
「インストラクター?」
「それは講師」
「細い角材を碁盤目状に並べて」
「それは格子」
「子曰く。先ず行う。その言や、しかるのちにこれに従う」
「それは孔子だけどお兄ちゃんにはぴったりの言葉だね」
「藪蛇!?」
「ほら、千里の道も一歩からだよ」
こうして、この後は筋トレに付き合わされた。