『
孫悟空の頭より少し大きかった
『よく似合っていますよ。まさしく王のようです』
「あ、ありがとうございます……」
飼い犬につける首輪みたいで嫌だと孫悟空は思ったが、ここで観音菩薩に反抗するのは得策でないということは、孫悟空でもわかっている。
『あなたの罪はこの五百年の封印で終わったわけではないのですよ、悟空。忘れたのですか?
「えっ?護法神?それは……」
正直、孫悟空は閉じ込められた時は頭に血が登って釈迦如来の話なんてほとんど聞いていなかった。
五百年くらい経ったら旅の僧侶が来るので護衛につけ、と言う言葉しか聞いていなかった。
「護法神……」
大聖者より神の方がいいに決まっている。
それまで萎れていた孫悟空の尻尾がピンと上を向いた。
『あなたは乱暴者ですが、武力も術力も優れています。あなたのその力を見込んで、玄奘を守っていただきたいと、釈迦如来も私も願っているのですよ』
思いもよらない期待を受けていることを知り、孫悟空は驚いた。
「どうしてそこまでしてそいつを守るんだ?」
『まずはその乱暴な言葉と短気な性格を直しなさい。玄奘を師と仰ぎ、その精神性を見習いあなた自身の暴力的なところを抑えられるようになさい』
孫悟空の疑問には答えず、少しだけ微笑んだ観音菩薩は再び錫杖を鳴らした。
「お、おい、観音菩薩!」
その途端、孫悟空は地面に落下した。
「いててて……」
「大丈夫ですか?」
心配そうに声をかけてくる玄奘は、もう観音菩薩ではなかった。
「俺は石猿だから平気だ……です」
孫悟空は観音菩薩に言われた通り言葉遣いを気にして言い直した。
天界のほとんどの神仙たちからは迷惑そうな顔をして、関わらないように距離を置かれていた。
それがたまらなく腹立たしくてさらに孫悟空は苛立ち、黙らせるためにがむしゃらに強さを
(こいつ……いや、この人は……)
「あなた、これをどうして?私が持っていたはずなのに」
玄奘は孫悟空の額に嵌められた緊箍児に驚いた顔をした。
「観音菩薩がつけて行きやがっ……つけたんです」
「すぐ外しましょう。私はこんなものであなたを縛るつもりはありません!」
印を組み、解除呪文を唱えようとする玄奘の手を孫悟空は止めた。
「いや、このままでいい……です。俺がダメなことをしたら……しそうになったら非力なあなたじゃ俺を止められないですから」
「でも……」
困惑する玄奘に、孫悟空は言葉を続ける。
「観音菩薩……様に言われました。これよりあなたを師として学ぶように、と」
「孫悟空はそれで良いのですか?私を……その、師とするのは」
「あなたは今まで会った奴らとは違う。ちゃんと俺の気持ちを考えてくれる人だと思った。だからあんたから……あなたからいろいろ学んでいきたい」
玄奘は自分を見上げる孫悟空の目が決意に満ちているのを悟り、頷いた。
「悟空……わかりました、あなたを弟子にしましょう」
「ありがとうございます!」
「でも、私は弟子を取るのが初めてなので至らぬ点もあるとは思いますが……よろしくお願いしますね」
「てことは俺様、一番弟子なんですか!」
何でも一番が大好きな孫悟空は飛び上がって喜んだ。