顕聖二郎真君は、「そんなバカな」と何度も呟いた。
孫悟空の言葉で気づいた自分の本心顕聖二郎真君は、その秘められた凶暴性を認めたくなくてあれこれと言い訳を探す。
「こ、ここには石猿ちゃんの武器が置いてあったからね。他の妖怪たちがそれを盗んだら大変なことになるだろ。仕方なくだよ」
だが気づかないようにしていたその気持ちから顕聖二郎真君はもう目を逸せない。
彼は孫悟空とまた戦いたくて花果山にいたのだ、と。
「
そうなのだ。
如意金箍棒はその昔孫悟空が龍王から奪ったもので、世界創生の時に地面を
実は武器ではない上に物凄く重い。
現在の持ち主である孫悟空は軽々と扱えるが、それ以外の者が扱うのは困難なのだ。
「う、うう……」
だから顕聖二郎真君は武器を守る必要なんか無くて、ただ無意識に孫悟空と再戦を求めていただけ。
戦いになっても、五百年前のように打ち合いをして、変化勝負をして追い詰めて打ち負かせばいい。いや、打ち負かしたい。
でも孫悟空の封印を顕聖二郎真君が解くわけには行かないから、その時を復活したら必ず来るであろう彼の故郷の花果山でただずっと待つしかなかった。
だから封印を容易く解いたという玄奘に嫉妬のようなものを抱き、五百年前の戦争を引き合いにして玄奘を責めるようなことを言った。
「……ありえない、そんな、このオレが……」
「仕方なくてでもさ、五百年もありがとな」
「……そんな……」
顕聖二郎真君が自身の野蛮さに打ちひしがれていると、そんなことには全く気づかない孫悟空が礼を言ってくる。
それにしても、孫悟空が他人に頭を下げて礼を言うだなんて。
五百年前の暴れ猿の様子からは想像もつかなかったことだ。
「……石猿ちゃんは、玄奘ちゃんを裏切らないって言い切れる?」
「言い切れる!俺様は変わるんだ!」
「そう……」
「それに、もしもの時は観音菩薩がつけたこれがあるから大丈夫だ」
そう言って孫悟空は五百年前には着けていなかった、真新しい額の
「うん?それは……」
「
「いや私は使いませんよ!そんな、無理やり言うことを聞かせるなんてこと……」
「──そっか」
二人の様子に、顕聖二郎真君は少しがっかりしたように頷いた。
孫悟空がまた暴れてくれたら、打ち負かす大義名分が得られるのに。
でも見る限り、孫悟空にはその意志はなさそうで。
顕聖二郎真君は悔しさから血が滲むほどの強さで拳をギュッと握った。
「わかった。じゃあ今の所は封印し直さなくてもいいみたいだって、太上老君にも言っておくよ」
本当は今すぐ孫悟空を打ち負かして封じてしまいたい気持ちを抑えて顕聖二郎真君がそう言うと、玄奘と孫悟空はホッとしたように顔を見合わせた。
「じゃあ石猿ちゃん、せっかくだし久々に手合わせしてみる?」
(これくらいなら許されるよね)
顕聖二郎真君は