目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第61話 河伯、青鸞童子と再会する

 蛇盤山まであと少しと言うところで、突然、大きな衝撃音がした。


「全員止まれ!状況を確認せよ!」


 托塔李天王が号令をかけ、一団は停止する。


「なんだ?」


 孫悟空たちも止まりあたりを見回した。


 草原の中央にトグロを巻く白い龍と赤い炎のようなものが見える。


 それらがぶつかり合うたびに火花が散り、先程の衝撃音が轟く。


「あいつだ。あれが今回の討伐対象の玉龍。今は勘当されているが、西海龍王の第三子だ」


 哪吒太子が緊張した表情で腕組みをして言う。


「もう誰かと戦っているみたいだが……あれは……?」


義父ととさま!」


 孫悟空が首を傾げていると、いち早くその正体に気づいた青鸞童子はそう叫んで上空で空飛ぶ馬に乗る托塔李天王を見た。


 一団を率いる総大将は托塔李天王。


 総大将の許可なく勝手な行動はできない。


 ましてや青鸞童子は今回が初陣の新入りでもある。


 一番手を狙う将たちもいる。


「あそこで龍と戦っているのは私の義父ちちです!行ってもよろしいですか?!」


「良いだろう。先鋒を許可する。青鸞殿の戦い、みせていただこう」


「ありがとうございます!」


 托塔李天王の許可を得た青鸞童子は翼を動かし対峙たいじする双方へと突っ込んで行く。


「あ、青鸞!」


 哪吒太子と孫悟空も青鸞童子の後を追い、降下した。


 玉龍の鋭く太い爪を河伯が降妖宝杖で受け止めると、雷のような音と衝撃波が広がる。


 草は波打ち、薙ぎ倒されそのまま起き上がらな

い。


「ふぅん、おじさんなかなかやるじゃん。でもこれはどうかな!」


 玉龍が渦を巻きながらクルクルとその場で舞い始める。


 すると風がだんだんと吸い上げられていく。


「……これは……!」


 あっという間に、轟音を立てて渦巻く竜巻が出現した。


「この大きさの竜巻は、いくらケンレンタイショーだったおじさんでもきっと耐えられないよ!」


 ニヤリとして玉龍が言った時だった。


 青い閃光が玉龍を掠めた。


「わっ!何なに?!」


 それに驚いた玉龍が舞をやめたため、竜巻も消滅する。


 横倒しになった草の上を静かな秋風がすぎていく。


 その青い光が降りたのは河伯の前。


 ゆっくりと立ち上がった、その青い光の正体に河伯は驚き目を見開いた。


義父ととさま、ご無事ですか!」


 そこにいたのは忘れるはずもない、大切な大切な、河伯の養子むすこの青鸞童子だった。


「お前……青鸞……青鸞か!」


「はい!義父さま、ご無沙汰しております!」


 夢ではない。


 はつらつと笑う目の前の少年は、河伯が地上に落とされて以来久しぶりに会う秘蔵っ子だ。


「義父様、僕も共に戦います!」


 青鸞童子はすいのついた縄を振り回しながら言う。


 托塔李天王のところで鍛えられているのだろう、あんなに甘えただった青鸞童子は凛々しい雰囲気を纏っている。


捲簾けんれん殿!我が李天王一門も助太刀いたしますぞ!」


「そいつには俺様も用があるんだ。この戦い、混ぜてもらうぜ」


 愛息の成長に河伯が感心していると、青鸞童子に続いて托塔李天王と哪吒太子、それから河伯にとっては見覚えのない猿の妖怪──孫悟空も降りてきた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?