玄奘が目覚めると、そこはもう五荘観だった。
驚いたことに玄奘たちが崑崙にいた間、人の世界ではすでにひと月経っていた。
だから玄奘には崑崙で
「釈迦如来様を我が身におろしたとは……あれは夢ではなかったのですね」
興奮気味に玄奘がつぶやく。
その後の
「お前たちのおかげで崑崙は救われたのだ。
「いえ……当然のことをしただけですから」
鎮元大仙は、旅支度を終え旅立ちの挨拶に訪れた玄奘たちに声をかけた。
「孫悟空、お前とは
「義兄弟〜?もちろん俺様が兄だよな?それなら契りを交わしてもいいぜ」
「これ、悟空!」
孫悟空のそのあまりに
「かまわぬ」
「えっ、いいのか?」
「ああ」
鎮元大仙の予想外の返答に、孫悟空のほうが
そんな孫悟空を置いて、鎮元大仙はいそいそと
「お前は玄奘殿の弟子。仏教では酒が禁じられているだろうから、酒に似た風味の果実水を用意した」
「お、おう」
「では、吾輩、崑崙が仙人鎮元と玄奘三蔵が一番弟子孫悟空の兄弟の
「ち、契りを」
上機嫌の鎮元大仙は
孫悟空もまた、鎮元大仙の言葉を反復し盃をが掲げる。
「
「待てよ!た、魂となったとしても、だって?!」
その重い言葉に孫悟空は驚いた。
普通であれば、命尽きるまでというところである。
「そうだ。命尽きてからも吾輩は
鎮元大仙は孫悟空に力強くうなずいた。
彼に二言は無いようで、孫悟空は困惑した。
だがそれほどの決意を持って、鎮元大仙は義兄弟の契りを結んでくれようとしているのだ。
鎮元大仙の気持ちに自分も応えたいと、孫悟空は思った。
「しゃーねーな!俺様も兄弟の契りを結んだお前と、この場所を守り続けるのを誓ってやるよ!」
「感謝する。では──これからの
そう言って鎮元大仙が盃をあおった。
「
孫悟空もまた、そう言って盃に注がれた果実水を一気飲みした。
こうして、孫悟空と鎮元大仙は義兄弟となった。
「まあ、吾輩が出ずに済むのが一番なのだがな。ちょっとした切り札と思ってくれていいぞ、
大きく何かが変わったわけでもないが、元始天尊と太上老君に並ぶ仙人との縁は心強いものだ。
「えーっと、それじゃあ……いってくるぜ、
「はは、ちと照れくさいな。気をつけてな、
孫悟空たちのぎこちない挨拶を微笑ましく思いながら、玄奘たちは五荘観を後にしたのだった。