玄奘が金山寺の敷地内に入ると、一行はすぐに子どもたちに囲まれた。
「げんちゃん、もう帰ってきたの?!!」
「おみやげは?ねーねー、テンジクのおみやげは?」
「お菓子!お菓子!お菓子!」
玄奘の袖を引っ張る子どもたちのお菓子の大合唱に、沙悟浄はやっぱりお土産買ってくればよかったと心の中で子どもたちに謝った。
「悟浄ちゃん、やっぱりオレ今からひとっ走り手土産買いに行ってくるわ……お師匠さんの先輩方にも必要だよね?」
「そうだな……頼む」
ヒソヒソと沙悟浄と二人で話し合いをし、猪八戒が街へ行こうとした時だった。
ジャーン!!と、突然銅鑼の音が響いた。
すると寺の門は閉められ、かんぬきまでつけられてしまった。
「な、何?!」
猪八戒が驚いている間に、二度三度と銅羅が打ち鳴らされ、玄奘にまとわりついていた子どもたちはあっという間に寺の中へと戻っていった。
代わりに出てきたのは、棍、槍、弓などを持った僧兵たち。
ぐるりと玄奘一行を取り囲んでいる。
「この銅鑼の音……」
先ほどまで柔和だった玄奘の顔が険しくなっている。
その軍勢を割って庭に現れたのは、三人の僧侶たった。
一人は銅鑼を打ち鳴らす役のようで、銅鑼を持っている。
中央に立つのは、留守の法明和尚に代わり寺を任されているものらしい。身に纏っているものが他の僧侶に比べて物々しい。
もう一人は武装した僧侶だ。
「
玄奘はつぶやいた。
すうっと息を吸い、中央の僧侶が大きな口を開けた。
「我が名は金山寺を預かる照慶!玄奘の名を語る悪人め!貴様たちは何者だ!」
「ひゃ、大きな声!」
ビリビリと空気をふるわす照慶の声に、玉龍はたまらず耳を塞いだ。
「何者も何も、私は玄奘です!」
照慶の声に負けじと玄奘も大声を出す。
三人の僧侶は顔を見合わせ、首を振ったり傾げたりしながら相談をている。
「あいにく玄奘は天竺への旅に出ている!こんなところにいるはずがなーい!」
ジャーン!と、銅鑼を叩いて僧侶が怒鳴る。
「輪念兄さん!法明和尚から言われて戻ってきたんです!私の両親のことを!!」
玄奘が言うと、また僧侶たちは顔を突き合わせて相談をする。
「ならばこの問題に答えてもらおう!!」
ドン、と錫杖を床に打ち鳴らし武装した僧侶が声高く言った。
「問題……?」
「左様、今から我らが玄奘に関する問題を五つ出す。それに答えるだけだ!」
首を傾げる玄奘に、武装した僧侶は言葉を続ける。
「殊音兄さんまで、どうして信じてくれないのですか!」
「問答無用!お前が本当の玄奘ならば、全てわかるはずだ!第一問!」
照慶の言葉に、輪念がジャーンと銅羅を打ち鳴らした。
「玄奘が寺で暮らしている間、おねしょをした回数を答えよ!」
「──は?」
照慶が出してきた予想外の問題に、玄奘は口をぽかんとさせた。
「どうした!お前が玄奘ならば答えられるはず!お前がおねしょをした回数だ!」
錫杖の柄で石畳を打ち鳴らし、殊音が言う。
「そ、そんなの覚えているわけないでしょう!!」
赤面して玄奘が叫んだ。