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episode_3 断末魔の咆哮 その2

 夕方になり、フィオレンティーナが部屋で本を読んでいると、廊下が騒がしくなってバタバタと足音がした。


(どうかしたのかしら……?)


「姫様!」


 慌ただしくドアが開いてマージョリーが駆け込んでくるのとほぼ同時に、入り口に背の高い男の影が現れた。ジグムントだ。フィオレンティーナは弾かれたように立ち上がった。

 昨夜の恐怖が蘇って、身体が震える。もしや、また閨の相手を……? 嫌、怖い、もうあんな思いをするのは嫌……。だがフィオレンティーナは必死で勇気を振り絞って、部屋に入って来るジグムントを膝を屈めるお辞儀で出迎えた。


「国王陛下にはご機嫌麗しゅう……」

「挨拶はいい。少しは休めたか」

「はい」


 ジグムントの問いかけに、フィオレンティーナは短く答えた。そのまま気づまりな沈黙が流れた。ジグムントが再び口を開いた。


「明日の午後、中庭で罪人の処刑が行われる。同席しろ。王妃としての最初の務めだ。よいな」


 フィオレンティーナの唇が細かく震えた。


「罪人、とは……」


 ジグムントは眉一つ動かさず言った。


「先王ミカエルと、廃太子サミュエルだ」

「姫様!!」


 マージョリーの悲鳴が響き渡った。ジグムントが抱き止める間もなく、フィオレンティーナは気を失って床にくずおれていた。


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