静寂と秩序に包まれた広大な空間に、異例の緊張が走った。
中央に浮かぶ球体モニターには、監視ドローンが炎の塊を浴び、爆発四散する映像が何度もリピートされている。
そこに映るのは、謎の人物——黒い仮面をつけた人間が、手をかざし、炎を生み出す姿。
「信じられん……人間に我々のドローンが破壊されたのか?!」
異星人たちの思考ネットワークにざわめきが広がる。
彼らは長い年月をかけて地球を支配し、人類のあらゆる反抗手段を無力化してきた。
それを可能にしているのが
人間の知る科学の上位概念でもある
当然、監視ドローンも
そのはずが——何者かが、
司令官 〈ゼル=アグノス〉 は静かに立ち上がり、冷徹なまなざしで映像を見つめる。
「報告を」
技術顧問 〈マルキオス〉 が、淡々とデータを整理しながら報告を始めた。
「この攻撃のエネルギー波形を解析した結果——
管制室の空気が一気に張り詰める。
「馬鹿な!」
副官 〈カリスト=ヴェルム〉 が、思わず語気を荒げる。
「人間が
ゼル=アグノスが、細長い指を組みながら冷静に言葉を紡ぐ。
「いや、誤作動ではない。確かに映像に映る人間が、物理兵器ではなく、我々と同じ思念エネルギーを操っている」
再び、映像がスローモーションで流れる。
何度見ても、そこに映るのは黒い仮面をつけた人間によるドローンへの破壊行為。
その光景は、まさに
マルキオスがデータを操作し、新たな映像を表示する。
「実は……指揮官用の“ニューロ・バイザー”が一台紛失しているとの報告が上がっています」
カリスト=ヴェルムが驚愕する。
「何?!なぜ早く報告しなかったのだ!」
ゼル=アグノスはテーブルを叩き、目を細める。
「……そのバイザーが、この謎の人間の手に渡った可能性があると?」
マルキオスは静かに頷く。
「その可能性はありますが……そもそも
ゼル=アグノスはマルキオスに視線を向ける。
「何が
「
マルキオスは淡々と説明を続ける。
「まず思念兵器は単なる装置ではなく、使用者の脳波測定レベルに応じた機能制限がかかります。つまり人間が装備し奇跡的に発動が出来たとて、短時間でこれほどの破壊思考を出せるわけありません」
カリスト=ヴェルムが追随する。
「つまり、あの仮面の男が我々のバイザーを装備したところで、
「そうです」
しかし、ゼル=アグノスは映像を再生しながら、低く呟いた。
「では、あれは何なのだ?この仮面の者の正体は……」
マルキオスも、もはや確信を持って否定できなかった。
ゼル=アグノスはゆっくりと立ち上がる。
その背後で、異星人たちがざわめきながら新たなデータを処理していた。
彼は、映像に映る仮面の男を指差し、静かに命令を下す。
「この人間を追跡し、捕獲しろ。脳を開いて調査する必要がある」
カリスト=ヴェルムが頷き、—対人間戦略部隊— への指令を発信する。
「新たな脅威、発生確認。識別不能。即時警戒レベル引き上げ」
ゼル=アグノスは最後に、一言付け加えた。
「もしあの人間が、本当に思念兵器を扱えるならば……これは、“我々の支配”そのものを揺るがす可能性がある」
管制室には緊張が走った。
そして、仮面の反逆者を巡る、新たな戦いが静かに始まろうとしていた——