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第67話 配信コラボⅥー③ キャラクタービジュアル公開 (七色みどり×四季)

 この一夜で七色みどりは時の人になった。


 春子の必死な呼びかけが声優業界を動かした。

 夏樹翠の境遇に同情し、彼にどうしても報われてほしいという彼女の願いが波紋を広げ、ついには大物声優すらもSNSで協力を呼び掛ける騒ぎにまでなっている。


 冬康の呼びかけが多数のアニメ業界全体を動かしている。

 とあるアニメ会社では大物監督の心を動かし、ADや音声スタッフ達全員に七色みどりのチャンネル登録を命ずる騒ぎにまで発展した。


 千秋の呼びかけは歌唱界を動かした。

 紅白に出演したアニメユニットを起点に、KPOPグループ、フォークシンガー、そして演歌界の大御所すらも七色みどりの為に動いてくれた。


 そして七色みどりは配信界を動かしている。

 現在進行形で行われている祭りを他の配信者達が見逃すわけがない。

 大人気YouTuber、テレビ出演をバンバンしているタレント配信者、そしてVTuber界隈が七色みどりを支援してくれている。

 更新され続けているwikiを使って、夏樹翠の境遇を個人配信でリスナーに説明する。

 それを聞いて七色みどりを心から応援したいと感じたリスナーが続々とみどりのチャンネルに押し寄せてチャンネル登録をしてくれていた。


 全員が『一生のお願いです』と前置きしたことで必死さが伝わり、ファンに行動を起こさせていた。

 一生のお願いというのは本当の本当に大切な時に人生で一度だけ使うことが許される魔法の言葉。

 一生に一度の権利を春子達は翠斗の為に使ってくれたのだ。


 春夏秋冬全員の力が合わさり、配信開始からわずか4時間で七色みどりのチャンネル登録数はついに2万人を突破した。







 もちろん翠斗達もその間ぼーっとチャンネル登録数カウンターを眺めているわけではない。

 来てくれたリスナーを喜ばせようと春夏秋冬時代の裏話などを話してファンを喜ばせている。

 そして、この枠最大の盛り上がり所が今始まろうとしていた。


「実は今日会社から自分のキャラクタービジュアルの使用許可を得ることができたんだ」



  『おおおおおお!』

  『ついにみどりニキにもガワが……!』

  『オラわくわくしてきたゾ』



「イラストレーターは金森景虎さん。彼の絵を見て自分は一目で気に入った。キャラを描いてもらえるならこの人しかいないってくらい圧倒的に上手だった」



  『めっちゃ褒めるやん』

  『その絵師なら知ってる。結構有名だぞ』

  『楽しみ!』



「ちなみに自分と同期入社のVTuberでもある絵師さんなんだ。今後コラボする機会も多いと思う。楽しみにしてくれ」



  『りょ』

  『イラストレーターVtuberか』

  『描いてみた配信とかやってくれることを期待』



「翠君いいなぁ。企業勢Vtuberになればキャライラストも描いてもらえるんだ」


「四季も企業勢目指しちゃいますか?」


「僕らだけ子供の落書きみたいなガワで恥ずかしいな」


 春子達も羨ましそうな声を上げている。


「みんなには悪いけど一旦このへったくそなキャラ絵は閉じさせてもらうね」


 『言ったなー!』とか『私の絵は皆よりマシです!』とか『キミが描いた夏男のイラストが一番下手だからな』とか色々負け惜しみを言ってくるメンバーを尻目に、俺は自分のキャラの立ち絵公開の準備に入る。


「よしっ! みんな、七色みどりのキャラビジュアルみたいよなー!?」



  『みたーい!』

  『お前に絵が付くのずっと待っていたぞ!』

  『みどりニキはどんな姿をしていたんや はよ見せたまへ』

  『景虎先生の絵ならまず間違いないやろな』



 リスナー達もゲストの春夏秋冬達も期待感を高めて今か今かと待ってくれている。


「よしっ! みんなに紹介する! これが七色みどりだ!!」


 暗黒画面から七色みどりのキャライラストが浮かび上がってくる。

 整った顔立ち、清潔そうな髪、スーツ姿のフォーマルな恰好、そして翠斗の要望で書き加えていただいた髑髏のクソださアクセサリー。

 翠斗の動きに合わせて揺れ動く七色みどりの姿に感動を覚えた。



  『おおおおおおおおおおお!!』

  『やだ ちょっと格好良すぎなーい?』

  『みどりニキイケメンやん!』

  『イケメンだけど温和な感じが出ていて良いな』

  『解釈一致』

  『さすが景虎先生の塗りやな 画力がダンチだわ』



「ほぇ~……翠君……じゃなかった。みどりくん格好いい~」


 春子が呆けるように声を漏らす。

 それに千秋が続いた。


「スーツ姿っていうのがいいですね。実物の翠さんもスーツがとても似合っていましたし、とても良きに思います」


「ちょっと待って!? なんで千秋、翠くんのスーツ姿を知っているの!? 私ですらみたことないんだけど!?」


 千秋は大物歌手から食事に誘われることが多かった。

 ドレスアップしないと入れないような場所でのディナー。

 昔の千秋はとても小心者で、そんな場所に一人でいくのが怖いとか言って翠斗に付き添いをさせたことがあったのだ。

 千秋の前でスーツを着たのはその一回きりだったけど、強く印象に残ったようで未だに覚えていてくれたようだった。


「……千秋、写真とか持ってない?」


「ある」


「なんであるの!?」


 翠斗のツッコミと共に七色みどりも激しく揺れ動く。

 本当にキャラが生きているみたいだった。


「一生のお願い。その写真送って!」


「承知しました」


「一生のお願いをそんなことに軽々しく使うなぁぁぁぁ!」



  『春ちゃwww』

  『春ちゃんさあ』

  『スーツ写真欲しがるを春ちゃんが可愛すぎる』

  『みどりニキのことめっちゃ好きやん』

  『↑でも過去の女という悲しさ』



「べ、別に好きとかじゃなくて! 友達のスーツ姿の写真を欲しがるなんて普通のことだから!」



  『はいはい』

  『もう何を言っても手遅れな女』

  『もしかして:ポンコツ?』

  『羽嶋春子の印象変わったわww今日から推していこ』



「良かったな春子。みんな素のキミを認めてくれているよ」


「違うのぉぉ! 私はできる子なのぉぉ! しごでき女子な私のイメージがぁぁ!」



  『ポンコツの方がいいよ』

  『しごでき女子……どこ?』

  『みどりニキの過去話に出てきたメインヒロインどこいったの?』



 こうして七色みどりのキャラビジュアル公開式は春子によって主役の座を奪られたのであった。

 だけど春夏秋冬の仲睦まじい掛け合いがウケを呼び、七色みどりのチャンネル登録数はまた爆増した。


 現在の登録者数:24,991人


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