作戦はことわざに
兵士の大多数が町から出ている今はこの上ないチャンスだ。
そりゃあ、城に残る警備兵は普通の兵士より強いんだろうけど、一人だけなら怖くない。連携を取る暇もなく倒せばいいのだ。
「
リュシェが魔法で大きな扉を吹き飛ばす。
ここからは本当にスピード勝負だ。どれだけ早く、多くの兵士を倒せるか。
「
まずは玄関ホールにいた人間を魔法でテキトーなところ引き寄せて動けなくする。
そのまま目の前の階段を駆け上がって、二階の廊下に出る。
「なんだ! お前たち!」 「不審者めっ!」
守備兵たちは私たちを見るなり、驚きの声を上げてから魔法を出そうとする。驚いている暇があったら魔法を出せばよかったのに。だから、こんな目に合うんだ。
「
十人くらいがあと一瞬早く魔法を出して、完成された魔法を出せていれば何とかなったかもしれないのに……。カワイソウだ。
おかしい。目の前に敵はいないのに、一人だけ魔力探知に引っかかり続けている。
後ろか!
振り返ると、数メートル離れた先で魔法の詠唱をしている兵士が一人いた。
「
右手から相手の魔法のを止めるために、左手から兵士を引き寄せる魔力の球体を出す。
「うわっ!」
彼の手から出た氷の刃とほとんど同じスピードで彼自身が私の目の前に飛んでくる。
必死に出した魔法は私たちに届かず、彼は
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ここがさっき刺した兵士の心の中なのだろう。
実験で刺した商人の時と同じような場所に来た。ここですることは一つ、守護者を
今回の守護者は魔法を使ってきた。商人の時とは違い、武器は使わない。それなりに強かったけど、詠唱の隙をつついて終わりだった。
精神の根幹の写真が私に入れ替わったことを確認して、現実世界へ帰る。
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「私はユウ。何なりと申し付けください」
ひざまずく兵士を横目にリュシェに質問する。
「領主は殺す。いいよね?」
リュシェは無言でうなずいた。
「今から行くけど、来る? 見たくないなら、無理しなくてもいいから」
リュシェはまた無言でうなずいた。
「ユウ。領主のところまで案内して」
領主のところまでは、私とリュシェの腕に縄を巻いて、つかまったことを装った。
主を縄で縛って引っ張ることなどできない、と反発されたけど押し切った。
「ここが領主様のお部屋です」
「ありがと。縄をほどいて」
ユウが丁寧な手つきで縄をほどいてくれる。一時とはいえ、手首が結ばれているのはしんどかった。
手首をひねり、いつも通り動くことを確認し、ドアノブに手をかける。
「ユウ、誰も来ないよう見張ってて」
「わかりました」
「リュシェ、行くよ」
重い扉は音を立てて開き、私は夢へ足を踏み出す。