これは僕が勝手にやっていること、つまり任務ではないので制服を着てはいけない。それゆえに、尋問や拷問などの権力行使もできない。
「情報収集からか……」
♦
地道な作業は昔から好きだったけれど、今まで一番つらい作業だった。
第一、深夜に馬車から逃げた魔族を見ている人はいなかった。起きている人もほとんどいないし、起きていても酔っていたりして話にならなかった。
何の情報もなく、最後の一人にしようと思って聞いた酔っぱらいがすごい情報を持っていた。
「15歳くらいの女性で、黒い
飛んで逃げていたらお手上げだけど、街中での飛行は犯罪行為だ。誰も捕まった報告がないのは歩いている証拠だ。
「あ~? 嬢ちゃんを探してんのか? あれか? あれなら向こうの路地裏を走っていったぞ」
「いつごろかわかりますか?」
「三十分くらいまえ、だとおもうぞ? それよりも、あんちゃん俺と一緒に飲み行こう」
酔っ払い特有の変な絡み方をされたけど、うまくかわして路地裏へ走る。
路地裏には彼女のものと思われる魔力が残っていた。ここで魔法を使ったのか。いったい何の魔法を?
彼女の使える魔法は「
彼女の所持品で魔力を帯びていたのは、ナイフ、
となると、
♦
探知されたな。グレイアにはめられたのか? いや、追っては幻魔騎士団じゃない。あの制服は魔力探知にかからないはずだ。移動速度的に空を飛んでいるのだろう。
こちらも飛ぶか、それとも
ここは振り切るために魔力を切ろう。
数秒後、頭上をすごいスピードで何かが飛んで行った。よかった。振り切れたみたいだ。ほっとして胸をなでおろす。
「逃げきれてよかったね」
安心しきった直後、背中に強烈な衝撃が走った。吹き飛ばされ、木にぶつかる。
「
私に攻撃した男はそのまま続けた。
「きみが騎士団の馬車から出てきたとき、ビビット来たよ。制服を着ていないし、拘束具をつけていたからね。君を捕まえたら報奨金はいくらもらえるんだろう」
私の間合いの中だというのに、男は天を仰ぎながら不気味なほどの笑みを浮かべた。
不気味な奴だけど、今がチャンスだ。こちらを見ていない。
「
引き寄せられるポイントに
「効かないよ。そんな魔法」
私の魔法をものともせずに、男は魔法を放ってくる。
「騎士団から逃げるなんてどんな奴かと思ってきたけれど、興ざめだな。そもそも、
私の居場所がバレた理由はそれか。無意識に展開しているからつい忘れていた。
「とりあえず、バカは死ねよ」
私に向けられた右手からは斬撃魔法が飛んできた。私の魔法の引力も相まって放たれた次の瞬間には私の
外套のおかげで怪我はしなかったけど、
「真っ二つにするつもりだったのに、そのマントかたいね。ふ~ん。まあ次はないからね」
そう言い残すと男は飛んで行ってしまった。魔力切れ? あいつは
いったい何だったんだ。
はやく安全な場所を見つけて休もう。こんな深い森の中じゃ安心できない。
「待てっ! リティー・ノア!」
真後ろから名前を叫ばれる。今度はいったい何だというのだ。
「リティー・ノア。幻魔騎士団の名においてお前を拘束する!」
グレイアは私を見逃してくれたんじゃなかったのか? 私の頭の中がなぜ?でいっぱいになる。
「団長は逃がしたが、私は逃がさない。規則は規則だ」
訳が分からない。こいつは団長の指示が聞けないバカということか? どちらにしろ、こんなところで終わるつもりはない。
「
来た! 最大出力で術者を引き寄せる。火球が私にあたるよりも早く、彼を火球にぶつける。
間に合え!