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セカンドオピニオンで助かった犬「メイビー」

 2021年6月7日。

 保健所からレスキューした小型犬は、悲痛な声で何度も鳴いた。


 癌に蝕まれた飼い主が手放すことになった犬は、自身も腫瘍に苦しんでいた。

 保健所に入る前にかかりつけ医に診てもらったけれど、これは手術できないと言われたという。

 石垣島では、癌は検査も治療もできない病気。

 人間の場合は、治すためには島から出ないといけない。

 動物たちの場合は、切除して再発しなければ助かることもある。


 乳腺腫瘍ができたその犬は、高齢のためかかりつけ医に手術を拒まれた。

 シニアだから全身麻酔や手術そのものに耐えられないだろうと言われたらしい。

 飼い主はそこで諦めて、保健所に入る頃には肥大化した腫瘍がミカン大のサイズになっていた。


 肥大化した腫瘍は破裂して、体液や血が流れ出している。

 それが痛いのか、犬は悲しそうな声を出しながら傷口を舐める。

 保健所では苦しみを長引かせないために、安楽死を検討していた。


 治せずに苦しみ続けるならば、安楽死の方がいいのかもしれない。

 けれど、簡単に諦めることはしたくない。


「セカンドオピニオンを試させて下さい」


 だから、ボランティア譲渡申請書を出して、乳腺腫瘍の犬をレスキューした。

 保健所を出てそのまま向かったのは、ベテランボランティアが「外科手術の腕は島で一番良い」と言う病院。

 もちろんレスキュー前に予約は入れてある。


「シニア犬ですが、手術で乳腺腫瘍を取ってあげられますか?」

「高齢でも体力があれば手術に耐えられると思うよ」


 セカンドオピニオンの結果、腫瘍の切除手術をしてもらえることに。

 お願いしますと言って犬を預けて、手術に耐えられることを祈った。


 数時間後……


「手術は成功しましたよ。ワンちゃんは明日迎えに来てあげて下さい」


 ……看護師さんから、嬉しい報告が!


 しかも、翌日迎えに行ったら、犬は見違えるほど元気になっていた。


「めちゃくちゃ元気だよ。ケージから飛び出そうとするから早く連れて帰って」


 獣医さんが苦笑しながら言う。

 昨日手術したばかりとは思えないぐらい活発に動き回る犬を連れて、保健所へ報告に行ったら職員さんたちもビックリしていた。

 生還報告ついでに犬の名前を聞いたら「メビとかメイビーとか、そんな名前だった」とのこと。

 それで、「たぶん」とか「おそらく」とかいう意味で、メイビーと呼ぶことに。



 術後のメイビーの回復は早かった。

 シニア犬とは思えないくらい順調に手術の傷が癒えて、抜糸後には散歩も行けた。


 里親募集してみよう。

 そう思って、チラシを作って張ったり、SNSで呼びかけたりしてみた。

 すぐに知人から里親希望がきたものの、先住犬がヤキモチを焼いてしまい、トライアル失敗。



 トリミングして身だしなみを整えた後、可愛くなった画像で募集してみた。

 しかし残念ながら、一向にお声がかからず。


 1年くらい募集して里親希望が無ければ、うちの子にするか~


 ……と思っていた時期もあったり、なかったり。


「うちで引き取ろうか」


 なんとなく予想はしていた、御近所さんからの引き取り希望。

 モクレンや白竜も引き取ってくれた方が、里親になってくれた。

 名前は仮名そのまま「メイビー」に。

 我が家から歩いて行ける近所に引き取られた小さい白い犬は、白竜と同じ家で今も暮らしている。



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